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人を好きになるのに理由なんか要らない。
どこかで読んだ――いや、どこにでもあるありふれた言葉が、俺の頭の中を巡る。まったくそのとおりだと思った。
容姿・性格・仕草等色々あるが、とどのつまり、その人がその人であるからこそ、その人のすべてを好きになる。
…………訂正しよう。
人を好きになるのに、『その人だから』という理由以外は要らない。その人がその人だからこそ好きになるのであって、どれか一つでも欠けたら、その人を好きでいられるかどうかもわからない。
以前考えたことのあるそんなことを、今更ながらに思い出していた。
ふと、声をかけられ、翔は顔を上げた。物思いに耽っていたためそれまでの会話の内容はまったく入っておらず、つい生返事になる。ちゃんと聞いてる? と彼女は言ってきたが、それに対する応えさえも生返事のままだった。
しょうがないなぁ、と彼女は微笑み、またその柔らかい唇から他愛もない会話を紡ぎだす。それを、今度はきちんと聞きながら、彼は飲みかけのジュースに刺さったストローに口をつけた。吸い込むと、甘い液体が口内を満たし喉を通り、その通り道がじっくりと冷やされる。
ストローを咥えたまま、彼女の方を見つめる。
日差しを受けてきらきらと輝く柔らかい髪は彼女の頭の動きに合わせてサラサラと揺れ、会話の合間にストローを咥える唇は淡い桜色で、ほぼ絶え間なく動かすその細くしなやかな指は例え様もないほど繊細で、彼女を包む肌はこの世のものとは思えないほど美しい。
そんな彼女に見とれていると、再び彼女の会話を聞き逃す。つい癖なのか反射的に生返事を返すと、彼女は今度は短い溜め息をついて、また変わらぬ調子で話し始めた。
もしこの場面を見て、他の人は彼らのことをどう思うだろう。恋人同士に見えなくもない。だが、翔はそうは思いたくはなかった。
「なんか、今日はおかしいね。可憐のお話、退屈?」
「いや、そんなことないよ。ちょっと考え事していただけ」
「良かった〜。可憐と一緒にいるのが退屈になってきたんじゃないかと思っちゃった」
「そんなこと……ないよ」
ストローで残り半分ほどまで減ったジュースを掻き混ぜながら、翔は何とか彼女に目を合わせないようにしていた。もし合わせ続けていたら、きっと彼女のことを、心の底から愛してしまいそうになりそうだから。
それだけは、絶対にあってはいけないこと。
なぜならば………、
「ねえお兄ちゃん。今日はこれからどこに行くの?」
翔と彼女――可憐は、兄妹なのだから。
「ほら、あのお店だよ、お兄ちゃん」
そう言いながら、可憐は翔の手を引っ張りつつある建物を目指す。なんでも、すごく美味しい菓子を作るお店が出来たとのことだった。学校の友達と一緒に食べに行ったときその話が本当だとわかり、こうして翔を誘ったのだった。
可憐がこうやって放課後に誘いにくる事は、以前にもいくらかあった。いつもの妹との付き合い。翔はそう思っていた。例えその光景が第3者から見てどうであれ、翔はそう思い込もうとしていた。
「ふ〜…………」
うつ伏せのまま、翔はベッドに倒れこむ。選択されたばかりの柔らかい布団は、気持ちの良い感触と共に翔の体を受け止める。
そのまま、どれぐらい伏せていただろう。だんだん息苦しくなってきた。いつまでもそのままでいるわけにはいかず、仰向けになるよう転がる。そうしてまず目に入ったものは、いつもの見慣れた天井と蛍光灯だった。
「何で………好きになっちゃったんだろうな………」
誰にともなくぽつりと呟いたその言葉は、重力に引かれるように翔自身の心に重く圧し掛かってくる。
胸の鼓動がまだ収まらない。手には、彼女の温もりがまだ残っている。彼女の声が、まだ頭の中で繰り返されている。彼女の笑顔が、今も瞼の裏に焼きついている。彼女の存在が自分の全てに刻み込まれていることを実感する度、拭いきれない、どうしようもない思いが胸の中に込み上げてくる。
「可憐……………」
自然と彼女の名前を口にする。
「何で……お前は俺の妹なんだ? 何で……お前は……」
「やあ、兄くん……」
「ぬおっ!?」
いきなり聞こえてきた声に、翔は勢いよく起き上がる。慌てて部屋の中を見回してみると、いつもの見慣れた風景の中に一人の少女が紛れ込んでいた。
「千影? いつの間に!? っていうかどうやって!?」
部屋の隅に寄りかかるように、千影はそこにいた。いつもと変わらないミステリアスな微笑を浮かべて。ついでに千影がいたのはベッドを挟んでドアと反対側、しかも部屋に入れば一目でわかる位置だ。
「聞いてた……のか?」
「ふふふ………別にいいじゃなかいか…そんなこと……」
色々と納得のいかない不可思議なことも、なぜか千影相手ならばその一言で納得できてしまう。もっとも、もやもやとした感じは消えないが。
「で、何の用だい? 千影」
翔の問いに、千影はただ唇の端を僅かに動かしただけだった。しばしの奇妙な間を置いて、ようやく千影が口を開く。
「別に……。ただ…兄くんの様子を見に来ただけだよ………」
それを言い終わる頃には、千影はすでにドアのすぐ側へと歩いていた。
「じゃあ………また来世…………」
ドアが閉まる音と共に、ようやく翔は現実に追いついた。頭に掛かった薄い靄を振り払うかのごとく左右に揺らす。
「本当に、ただ来てみただけなのか……?」
再び一人になった部屋で、深く深く溜め息をつく。
本当に………なんでこんなことになってしまったのか。
小さい頃から、ずっと一緒だった。いつも後ろからお兄ちゃんお兄ちゃんいいながら付いてきて、小学校の頃はトイレまで一緒についてきてかなり困ったこともあったっけ。「お兄ちゃんといっしょに行く〜」って泣き出した時なんか、何事かと皆集まってきて……咲耶がやってくるまでは苦労したっけ。
年の差のおかげで、可憐と一緒の校舎に居れたのは小学校の時だけ。それも6年間の半分にすら届かない僅かな時間。それからは学校の送り迎えと休日、そしてたまに家に遊びに来る時の可憐しか知らない。その間なのか、いつの間にか可憐は魅力的な女の子になっていた。
あれは、いつの頃だったっけ、可憐を好きになったのは。確か、可憐が小学校を卒業するかしないか、ぐらいだっただろうか?
いつものように可憐を迎えに行って、小さい頃と同じように手を繋いで帰って……可憐の小さな手の温もり、柔らかさにドキドキした。風に吹かれて香ってくる可憐の薫りに、思わず可憐の小さな身体を思い切り抱きしめたくなった。その時だろうか、可憐を妹としてではなく、一人の少女として愛しく感じ始めたのは。
「………………結局、馬鹿なんだろうな、俺は」
年端もいかない、しかも実の妹に恋をして……。一時の気の迷い、とかなら別にいいけど、それとは裏腹に本心は本気で可憐を愛している。本当なら、可憐に自分の気持ちを打ち明けたい。兄弟としてではなく、恋人として語り合いたいと思っている。
だが、そんなのは所詮無理な話だ。可憐は実の妹だ。気持ちを打ち明けてなんになる? 恋人になってそれがどうなんだ? 一緒にいることはできても、俺が望む関係にはどうやってもなれはしない。気持ちだけではどうにもできない、巨大で分厚い壁が俺と可憐の間にはあるのだ。それに、可憐の気持ちもわからない。可憐の気持ちが、俺と同じものだとは限らない。俺に懐いてくるのだって、唯一人の兄だから、というだけなのかもしれない。可憐の心に、俺は「そういう対象」としてすら映ってないかもしれない。
どっちにしろ、無理な話なのだ。
しかし、そうとは解かっていても後から後から際限なく湧き出てくる想いが止められない。逆に源泉を塞き止めようとすればするほど、それを破壊せんばかりに勢いを強めて噴き出してくる。初めて知った、自分にこんな激しい感情があるなんて。
外は既に日が傾き、茜色が空の蒼を侵食し始めている。その『色』は翔の部屋にも触手を伸ばしている。
「………早めに、ケリつけた方がいいな」
燃えるような夕焼けを眺めながら、翔は独白のように呟く。これ以上この現状を維持していると、いつかタガが外れて取り返しのつかない事になるかもしれない。
倒れるようにベッドに倒れこむと、心地良い睡魔が襲ってきた。特に抗う理由も見つからず、瞼を閉じて身を委ねる。ほんの十数秒後には、翔は深い眠りに落ちていた。
「えっと、確かこの辺、かな?」
「あ、お兄ちゃん。きっとあそこだよ」
可憐は目的の場所を指差し、ぐいぐいと翔の手を引っ張る。新聞の切り抜きに記されてある住所と睨めっこしていた翔は、可憐に導かれるままにそちらへ歩き出す。
そこにあるのは、小さくもなかなかちゃんとした佇まいの、煉瓦造りの映画館があった。可憐がここで上映している映画を見たいといってきたのは、昨日のことだ。しかし少し郊外にあるため場所も解からず一人では不安と翔を誘ってきたのだが……。
「そういえば、友達や咲耶たちはどうした? いつもなら皆と一緒に行ってるだろ?」
「そうなんだけど…みんな今日は忙しくて。それに、頼れる人ってお兄ちゃんしかいないから」
その一言は、翔の心臓を跳ね上がらせるのに十分な威力を持っていた。
(いけねぇ、何をドキドキしてるんだ、俺は。昔から可憐の面倒見てきて、その流れで俺を頼ってるだけなんだ。可憐に他意はない。他意はないんだ!)
なんとか必死に自分に言い聞かせ、胸のドギマギを無理矢理抑えつける。
先を行く可憐は、急に反応が鈍くなった兄を不思議に想い、振り返る。
「どうしたの、お兄ちゃん?」
「ん? あ、いや、なんでもないんだ。気にしないでくれ」
「うん」
小さい頃と同じで、本当に表情に裏表がない。心配そうな瞳で見つめられると、つい威勢を張ってしまうのが昔からの悲しい習性だ。可憐はそれに安心したのか、いつもの笑顔に戻って翔の腕に両腕を絡める。
思わず嬉しい悲鳴が翔の口から漏れそうになる。
(お、お、落ち着け! 昔からの流れだ、昔からの流れ!)
先ほどよりも強力な刺激に激しく動揺しつつ、それをなんとか顔には出さないように努めるが、ブラウスごしに伝わってくる感触がそれを押し流そうとしている。
結局、可憐にも聞こえるんじゃないかと思うほどの胸の鼓動を抑えつけながら、席に着くまでの10分ばかりの間、翔は必死に理性を働かせて湧き上がってくるその衝動に耐え続けた。
「駄目だ、身が持たん」
紙コップになみなみとジュースが注がれるのを待ちながら、つい口から漏れた言葉はそれだった。
日に日に可憐は女の子として魅力的になってくる。しかも子供の頃から変わらぬ純心無垢な性格のためか、懐いてくる時の行動も子供の時のそれと同じだ。以前のように妹と思っていればある程度は耐えられたかもしれないが、今は可憐のことを一人の女性として意識してしまっている。そんな状態であんな行動をとられては、いつ気持ちが爆発してもおかしくない。
ジュースが注がれ終わったのを知らせる音が聞こえ、翔は自販機から紙コップを取り出す。続いて可憐の分のジュースのボタンを押す。紙コップが落とされ、先ほどと同じように氷が、続いてジュースがコップの中に注がれる。
翔は一口だけジュースを口に含むと、再び考え事に耽る。
(気持ち云々は置いといても、やっぱりそこらへんは言って聞かせなくちゃ、な。でも、なんて言えばいい? 変なことでも口走って可憐を傷付けでもしたら、それこそ兄として失格だ)
短い葛藤は、再び鳴り出した『取り出しOK』の音に中断される。空いた方の手でそれを取り出すと、上映時間も迫っているので駆け足で可憐の元へ急ぐ。
(しょうがない、映画でも見てる間に考えるか)
それが甘い考えだと知ったのは、十数分後のことだった。
「面白かったね、お兄ちゃん」
「あ、ああ」
ややぎこちない返事だったが、それを気にする余裕は翔にはなかった。
映画の上映が始まって数分後、可憐の小さな手が翔の手に重なったのだ。確か昔可憐と映画にいったとき、可憐は暗闇が怖いといって泣き出しそうになったが、翔が手を握ってなんとか可憐を落ち着かせた。その時の名残なのか、映画が終わるまで可憐はその手を離さなかった。
もちろん、そんな状態で冷静に思考を働かせられるわけはなく、更にいえば映画に集中するなど無理な話である。幸い、少し前に友人からこの映画のことを聞いていたのでなんとか話にはついてはいけるが。
可憐は映画館に入った時のように、両腕を絡めてその身体を寄り添わせている。そんな状態でゆっくりと公園の中を歩いているその光景は、どう見ても恋人同士のそれだった。
「お兄ちゃん、どこか悪いの?」
すっかり上の空の翔の様子を見ていた可憐は、心配そうな顔で覗き込む。その表情はまた翔の理性を押し流しかけるほど強力で、心配してくれる可憐から目を逸らすことなどできようもなく、どっと冷汗を垂らしながらも何とか口を開こうとする。
「だ、大丈夫だって。少し疲れただけだから」
嘘はついていない。しかし、
「ご、ごめんなさい、お兄ちゃん。可憐が無理なこと言うから……」
「いや、可憐のせいじゃないって。昨日徹夜で課題やってて、そのせいで疲れてるんだ」
こうして可憐を悲しませないようについ嘘をついている自分の弱さに少し情けなくなってくる。
「じゃあ、向こうのベンチで休もう、お兄ちゃん」
そう言って、可憐はすぐ側にあるペンチへと翔を引っ張っていった。特に断る理由もないし、兄として可憐の好意を無にするわけにはいかず、おとなしくそれに従うことにする。
陽は、すでに暮れかけていた。夕陽の光に空が、草花が燃やされ、その光景は一枚の絵画のように幻想的だ。いつもは何気なく通り過ぎているただの公園が、これほどまでに美しく映ることがあるなど初めて知った。
「ねえ、お兄ちゃん」
「ん? どうした、可憐?」
傍らにいる可憐を見やる。可憐も、混じり気の一切ない純粋な瞳でこちらを見上げている。ただでさえ整った顔立ちに夕焼けの光が降り注ぎ、それはこの世のものとは思えない美しさだった。
二人の手はベンチに座った後でも離れることはなく、今も繋がったままだ。互いの肩口が触れるか触れないかの距離で見せるその表情は、これ以上ないほどに翔の胸の鼓動を限界ギリギリまで早める。
「……ありがとう」
「え? な、なんだよいきなり。可憐にはいつも付き合ってあげてるだろ?」
「うん。本当にありがとう、お兄ちゃん」
そう言って、可憐はそっと体を寄せる。温かく柔らかい感触が翔の体に触れる。
「なっ!? か、可憐!?」
突然の事態に翔とは反対に、可憐は瞳を閉じて翔に全てを委ねていた。風に乗り、可憐の微かな呼吸が耳に届いてくる。心地良いその空気は、自然と翔の心を落ち着かせていた。
ふと、心の奥底から湧き上がってくる欲望。
その欲望に抗うことなく、その少女の肩を抱きしめる。
「あっ……」
腕の中の可憐が小さく声をあげるのが聞こえる。
鼓動が鎮まった分、今度は重苦しい葛藤が翔の脳裏で繰り広げられる。今なら、まだ引き返せる。今ならまだ間に合う。しかし、この少女を抱きしめたいという想いがその理性をぐいぐいと押し退ける。
腕の中の少女を抱きしめて思いを打ち明けたい自分がいる。
そんな自分を必死で抑えつけようとしている自分がいる。
解からない。
(俺は……可憐を愛している。だけど…………)
「………お兄ちゃん」
「え?」
胸中で欲望と理性のせめぎ合いが続く中、不意に可憐が呟く。困惑していた翔の意識は、それに引き寄せられるように可憐に集まる。
「いつも……可憐の我が侭聴いてくれて、ありがとうございます、お兄ちゃん」
「可憐……」
「可憐、いつもお兄ちゃんに迷惑かけて……本当にごめんなさい、お兄ちゃん」
その瞬間、欲望の一部が理性を振り切った。可憐の体をぐいっと引き寄せ、華奢なその体を強く抱きしめていた。
「お、お兄ちゃん……!?」
「迷惑なんて言うなよ………」
腕の中から、愛しい温もりが伝わってくる。耳元で可憐の吐息の音がする。普段なら手が触れ合っただけで慌てふためいていたのに、ひどく冷静な自分に驚かされる。
「俺は一度も、可憐のことを迷惑だなんて思ったことはない。今日だって、可憐が誘ってくれて嬉しかった。俺を頼りにしてくれて嬉しかった。だから……もう2度とそんなこと言わないでくれ」
「お兄……ちゃん」
翔の中で、今ひとつの答えが導き出されようとしていた。その選択に悔いはないと、今の自分なら思える。今なら言える、はっきりと。
長い間繰り返し迷い続けていた問題を消し去るように、翔はその一言を口にした。
「………………好きだよ、可憐」
時が止まったような気がした。
抱きしめられたままの可憐は、何も言ってこない。何の反応もなく、聞こえるのは微かな息遣いのみ。翔も同じようなものだった。その答えを待ち、不安で心臓が高鳴るのを感じる。
夕陽に照らされたまま、二人はずっとそのままでいた。
「お兄ちゃん………」
その時間を動かしたのは、可憐の囁くような一言だった。
腕の中に微かな力が加わり、それに抗うことなく力を抜いて両腕を開く。可憐は翔の胸に両手をつきながらゆっくりと体を起こし、そのまま翔の顔を見つめる。その顔には、いつもの笑顔が浮かんでいた。
「……可憐、とっても嬉しいです」
短くそう言うと、可憐は瞳を閉じた。
変わり始めた空気が、その行動の意図を正確に伝える。その声に導かれるかのごとく、翔は可憐の肩に手を掛け、そっと顔を近づける。
ゆっくりと、優しく、翔は可憐の柔らかく瑞々しい唇にそっとキスをした。
「お兄ちゃん、電気………」
「ん? 消した方がいいか?」
「う、うん。その……恥ずかしいから……」
その仕草に更なる愛しさを募らせながら、翔は電灯のスイッチを切る。部屋には月明かりと星明りのみが入り込み、それに照らされて浮かび上がる可憐の身体は神秘的な美しさを醸し出していた。
一子纏わぬ姿のままベッドの上で横になっている可憐に、翔は再び唇を重ねる。長く、そして優しく愛しいキスに、可憐も瞳を閉じて応える。
柔らかい唇の感触を味わいながら可憐の上になり、そっと髪を撫でる。指に絡み付き流れるような髪の感触は心地良く、何度も何度も繰りかえし撫で続ける。
唇の味を堪能し、翔は首筋に舌を這わせキスを降らせる。その微かな刺激を、可憐はくすぐったそうに身をくねらせながら受け止める。そんなちょっとした仕草さえも愛しくて、唇にもう一度キスをした。
素肌と素肌が触れ合い、その接点から互いの体温が伝わる。その温もりが、今この時が現実であると物語っている。
「あっ……」
指先がまだ膨らみ始めたばかりの乳房に触れると、その感触に可憐が小さな声をあげる。
「可憐の胸、小さくて可愛いね」
「やだ、お兄ちゃん………恥ずかしいよ……」
可憐の頬がこれ以上ないほどに赤く染まる。触れた指から、可憐の激しい鼓動が伝わってくる気がした。
透き通る肌の頂にぽつんと存在している小さな乳首を舐め上げる。
「ひぅっ!」
可憐の身体が大きく揺れ、その反応が気になり顔を上げる。
「嫌か、可憐?」
「ううん……ちょっと、びっくりしただけ。続けていいよ、お兄ちゃん」
必死に気を使う可憐の仕草があまりにも愛らしく、翔はそれをもう一度見てみたいという欲求に駆られる。微かに勃起した乳首を軽く咥え、舌で転がす。その度に、可憐は細かい反応を見せる。
「ひゃぁん!」
舌で味わうだけでは物足りなくなり、硬度を増した乳首を吸い上げる。先ほどよりも強い刺激に、大きな喘ぎ声があがる。翔は2、3分ほど乳首を愛撫したあと、行為の矛先をもう片方へと移す。それと同時に、空いた方の乳首に指を、乳房に手の平を這わせそこへの刺激を継続させる。
その行為を繰り返すうちに慣れてきたのか、次第に可憐の動きは落ち着いてくる。こちらをの様子をちらりと見る程度の余裕も出てきた。
胸への愛撫に耽っていた翔は、しばらくすると細かくキスをしながら体を移動させていく。下腹部辺りまで唇を持っていくと、太腿を愛撫つつ両足をゆっくりと開いていく。
「あっ……!」
心地良さにぼんやりとしていた可憐は、はっとして咄嗟にその場所を両手で覆い隠した。
「可憐、俺に見られるのは嫌なのか?」
全ての行為を中断し、可憐の顔を見つめる。可憐は頬をこれ以上ないくらいに紅潮させ、潤んだ瞳で翔の視線を受け止めていた。
「う、ううん。そんなこと………」
「じゃあ、見せてくれる?」
「でも………恥ずかしいよ、お兄ちゃん……」
そうは言いつつも、可憐の手からはすっかり力が抜けていた。翔はそこに手を添え、順にゆっくりと可憐の手を剥がしていく。そしてそこに現れたものに、わかってはいたものの翔は視線を奪われた。そこは微かに開きかけた貝のようにも見えた。その周囲にはまだ生えかけの恥毛があり、その貝の中心からは愛液が微かに流れ出していて、それは微量だがその量を増していく。
初めて見た『女性』のそれはとても魅力的で、翔は無意識のうちにそこへ顔を近づけ、貝の中心にそっとキスをした。
「きゃんっ!」
可憐の体が一瞬跳ね上がる。
尚もキスを重ね、奥深くから湧き出てくるその液体を吸い取る。合間を縫って既にいくらかこぼれ落ちているそれを舌で掬い、そのまま陰唇をなぞるように滑らせていく。
キスと舌での愛撫の合間に、翔は顔を上げて再び可憐の顔を見つめる。
「可憐。俺、もっと可憐の奥を見てみたい」
その言葉に、可憐は恥ずかしそうに顔を逸らした。しかし、嫌がるような素振りは見せない。それを見た翔は、改めて可憐の秘所に顔を近づけた。
両手でヒダを押し開き、その奥を覗き見る。そこには溢れんばかりの愛液が溜まっており、ちょっとした事で零れんばかりの泉のようになっていた。
「すごいね、可憐のここ」
可憐に聞こえるように呟き、そこに唇を押し当てて溜まった蜜を吸い上げる。
「ふあぁぁぁぁ!」
背筋を仰け反らせるほどの刺激が可憐を襲う。
「可憐の、とっても美味しいよ。もっと味わいたいな」
枯れることなく溢れてくるそれを、吸い取り舐め取り一滴も漏らすことなく味わい尽くす。可憐は激しく身悶えながら、今までに感じたことのない感覚を必死に受け止める。
段々とエキサイトしてくるその行為は、次第に溢れる量よりも飲み込む量の方が上回り始める。そこで、翔の意識はその上にある陰核に向けられる。既に勃起して半ば包皮から顔を覗かせているそれを、完全に外気に露出させる。
「あっ…!」
陰唇に与えられた刺激よりもやや弱めながら、微かな刺激は可憐に小さな声をあげさせる。そこに息を吹きかけると、小さく身悶えをしてそれに応える。もっとも敏感な部分であるそれを口に含むと、乳首と同じように舌で転がし始めた。
「ひやっ……ああっ!」
今までと比べ物にならない快感が可憐の体を走り抜け、背を浮かすほど激しく身悶える。
「お…お兄ちゃん……す、すごいの……可憐の…あそこが……んっ! ああぁぁぁぁぁっ!」
クリト○スを上唇と舌で強く挟むと、可憐は絶頂を迎える。背筋を大きく反らして小さな痙攣をする可憐の身体を眺めながら、ゆっくりと顔を可憐の顔に近づける。
そのまま可憐が修まるのを待ち、もう一度唇を重ねた。
「お……お兄………ちゃん……」
「可憐……大丈夫か?」
「う、うん……大丈夫だよ、お兄ちゃん」
大分落ち着いてきたのか、乱れた息を整えながら可憐は弱々しく頷いた。
2、3回軽めのキスをしながら、翔は可憐の両足の間に体を割って入らせる。その行動が意味することを、友達から聞いただけだったが知っていた。可憐はゆっくりと瞼を閉じると、その全てを翔に委ねた。
「いくよ、可憐……」
髪を撫でながら囁きかけると、可憐は小さく頷く。
自らの分身に手を添えて狙いを定めながら、濡れそぼった入り口にそれを押し当てる。そのまま、指で陰唇を開いていき、その中心にある秘穴に男根を押し入れていく。
「ひうっ………」
「あっ……大丈夫か、可憐」
目尻に涙の珠を浮かべたまま、弱々しくこくこくと二度頷いた。ともすれば口から飛び出しそうな悲鳴を、歯を食いしばって必死に耐えている。
まだ汚れも知らぬ未成熟なそこは、張り詰めた男根を容赦なく締め付ける。思わず顔をしかめたくなる程の痛みが走るが、いちいち痛がっているわけにもいかない。第一、それでは下で必死に頑張っている可憐にあまりにも申し訳がない。
「可憐、動くよ」
優しく囁き、キスをする。可憐は小さく頷いた。
姿勢を直し、ゆっくりと挿入を再開する。推し進める度に、肉を引き裂く感触と締め付けによる痛みが分身に走る。
「うっ………あっ…ああっ…………おっ、お兄ちゃぁぁん…んっ!」
身を引き裂く激痛から少しでも逃れようと、本能的に体が動き、両手を翔の体に回してしがみ付く。その口からは、押し殺しきれなかった悲鳴と愛しい兄の名が無意識のうちにこぼれ出る。
僅か2、3分の時間。しかし、二人にとってはその数倍にも感じる時間だった。
やがて男根の先端が肉壁にぶつかる。それは、可憐の小さな膣が男根を受け止めれる限界を示していた。男根はようやく半分から少し過ぎたところまでが挿入されたが、とても根本までは入りそうにない。仕方がなく翔は動きを止めた。
発育途上の双丘を上下に大きく揺らしながら、ようやく途切れた痛みを徐々に発散させるように大きく呼吸を繰り返す。翔はその様子を眺めながら、可憐の髪に指を絡ませつつ優しく撫で続ける。
「………お兄ちゃん」
しばらくするとお互いの息も整い始め、静寂が部屋を支配し始める。可憐がぽそりと呟いたのは、そんな時だった。痛みは結構引いたらしく、その顔には幾許かの余裕が出来ていた。
「ん?」
「もう……動いてもいいよ。可憐なら平気だから………」
そう言って作った笑顔には、その言葉とは裏腹にまったく余裕のないものだった。自分が一番辛いはずなのに、必死で翔を気遣うその仕草があまりにもいじらしくて、翔は自分にしがみ付く可憐の体を抱きしめ、ゆっくりと腰を動かし始めた。
「んっ………ああぁ……」
膣壁が擦られ、未知の快感が可憐の体を走りぬける。その感覚を受け入れようと努力するが、それに慣れていない身体は反射的に逃げようとする。だがそれを抑えつけるように、可憐は翔に絡めていた腕に力を入れ、強く強く抱きしめる。
先端近くまで男根を引き抜き、また奥まで埋める。その行為を、徐々にスピードを早めながら繰り返す。
「あぁんっ………あっ……お兄ちゃん…お兄ちゃん……お兄ちゃんっ!」
徐々に激しくなっていく快感に、髪を振り乱しながら可憐は喘ぐ。その口からは、次第に喘ぎ声より兄の名を呼ぶ方が多くなる。どんどんと膨らんでいく快楽と共に兄への愛しい想いがどんどんと強くなっていく。
「可憐………っ!」
その想いが伝わっていくかのように、翔にも可憐に対する愛しさが際限なく募っていく。可憐の華奢な体を抱きしめる腕も、自然と力が篭る。
静寂の中で繰り広げられる行為も、お互いの高まりと共に頂が見え始める。
「あっ……お、お兄ちゃ……可憐…可憐……もう………」
「いいよ、可憐………一緒にいこう?」
翔の動きが更に激しくなる。それは、限界が近づいたことを明確に知らせるサインだった。それにつられるように、可憐の喘ぐ声も次第に大きくなっていく。
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁ! お、お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん、お兄ちゃぁぁぁぁぁん!!」
愛しき兄の名を叫びながら、可憐は意識が真っ白になるほどの絶頂を迎えた。
(ついに、やっちゃった………か)
心中で自分に嘆息しながら、翔は傍らで安らかな寝顔を浮かべている可憐の髪をそっと撫で続けている。
(決断の時っていうのは……結構あんな風に呆気無いものなのかも、な)
今度は自嘲。
しかしそんな危惧も、すやすやと寝息を立てる可憐の寝顔を見ていると、正直どうでもよくなっている自分に驚く。あれほど長く答えを出せずにいた葛藤が、まさかものの一日で氷解するとは。
今夜は数えきれないほどのキスをした。そして、今また傍らの眠り姫にそっと唇を重ねる。可憐は瞼を微かに揺らすと、ゆっくりと目を覚ます。
「………なあ、可憐」
可憐はハテナマークを浮かべながら、こちらを見つめている。その瞳・表情は、元の無垢で純粋な少女のままだった。
やや間を置いてから続ける。
「今度の休み……また二人でどこか行かないか?」
肉親同士は結婚できない、それはよくわかっている。
しかし、傍らにいて寄り添うことならできる。
いつまでも、見守り続けよう。
この小さなプリンセスを。
完
さて、前回の亞里亞SSと比べてなんでしょう、この執筆速度(w
ああ純愛は、時間がかかる上書きにくい……。
純愛ものなんて嫌いだぁ、もう書きたくない(TT
でも、また書かなきゃならないんだろうなぁw
桑谷夏子の「デイジーブーケ」を聞きながら。(栗里さんごめんなさい(^^;))
SE「ドカッ! グチャッ! バキッ!」
看板『駄作作家、後書きパクリの罪にてここに眠る』