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ラブソングの代わりは…
OpTium/文


 「!…そういえば。

 なぁ、松岡。その…別に今じゃなくていいんだけどさ。聴かせてくれないかな? 

 ぼくが引っ越す前に、ぼくに聴かせるつもりだったという、あのラブソングをさ…」

 

 ライブハウス『黒猫』でのライブを終え、楽屋でゆっくりとくつろいでいるところに

 突然居合わせたあいつとのまさかの再会。

 それからしばらくの間、軽い雑談を交わしてから、本題とばかりにあいつの口から出た言葉がそれだった。

 「…ラブソング? …あ、ああ…あれか…」

 数年ぶりの再会にいつも以上に跳ねていた声もつかの間、次第に自分の声が小さく、低くなっていくのが分かる。

 「どうしたの?」

 「その、書いた楽譜さ…捨てちまったというか…破いちまったんだよ…

 ちょっとヤケになってた時があってな…」

 え? と声を上がるのを必死に堪える。

 「ヤケに…?」

 「昔の話だよ。なぜかはもう忘れた」

 (ウソだ。あたしを認めてくれたあんたに会えなくなったのかと思うと辛くて、ある日…)

 

  『こんなのがあるから…こんなの創ったから…こんな気分になるんだぁー!』

 でビリビリに引き千切って、バラバラと床に撒き散らして掃除機で吸い込んでたっけ。泣きながら。

 そして気がついた時には…床はついさっき前までの状態に…戻ってたっけ。

 

 「…あたしが作ったラブソングはあれが最初で最後。

 元から性に合わねぇことしたつもりだったしな…そんで始めっから二度と創るつもりはなかったし」

 (あんたと…一緒だったら…あのままずっと、わたしは…創り続けた、かも知れないけど…)

 「それを…破いちまって…あんな内容だから…照れくさくて…書いて、見直しで少し見ただけで、

 中身、あんまり覚えてねぇし…」

 「…いや。別にいいんだ。君が悪いわけじゃないよ…仕方がないよね」

 (…仕方がない…仕方ないだって!? あんた…あたしが…あたしがどんなに…!)

 「…あんたもいなくなったし、あんたとをつなぐ大切な楽譜もなくしちまった…

 あーこれでせーせーした、これで潔く忘れて、大好きなロックに専念できると思っていたのに…!」

 (顔を上げられない。肩が震え、爪が掌に食い込み、視界が霞み、前が見えない!)

 「なのに…なんで…なんで戻って来るんだよ!!」

 そう言って顔を上げてから、知らない内に何かに優しく包まれていることに気付いた。

 「!?」

 (厚い、広い、あいつの胸板が…あたしのそばに…?)

 「いいんだ、そんなこと。それより…松岡がずっとそのことを気にかけてくれていたことの方が、ぼくは…」

 「…バカ…」

 (身体が…熱い…)

 

 

 

 「なぁ松岡。それでその『ラブソング』って一体どんなヤツだったんだ?」

 無言で、そんな惚けたことをぬかしやがるこいつの服のボタンを外す。

 あたしも…

 「ま、松岡!? お、おい! 何を!?」

 「…お互いの…こういう瞬間を歌った、歌さ。

 あんたになら、なんぼでも聴かせてやれる、そんな…あたしのとっておきの『ラブソング』さ。

 …でもよく分かんねぇんだ。試しに…あんたと実演、を…した、い…」

 (…ダメだ! こんなことで赤くなっちまってどうする!)

 「…いいよ」

 「ありがとう」

 「それにしても…まさか松岡がそんな瞬間の歌を作りたがるなんてなぁ…

 松岡も、女の子なんだね」

 「い、いけないかよ…! あ、当たり前なこと聞くな、バカ!」

 「…やっぱり、君はあの松岡なんだね。安心した」

 「あんたの方も相変わらずだねぇ…」

 「フフフッ」

 「アハハハハハハッ」

 

 『分かってると思うけど…

 あたし、初めてなんだ、だから…

 今日限りはそのまま…中に…欲しいな…』

 

 

 

 「大分、濡れてきたね。じゃあ、そろそろ…心の準備は…できてる?」

 「…フン。できてるさ。とっくの昔にね…!」

 「…じゃあ…いくよ…!」

 

 

 

 「ッ!!」

 「ご、ゴメン! ゆっくり入れたつもりだったけど…やっぱり…痛かった?」

 「へ…平気さ、こんなの…!」

 「…ありがとう」

 「あぁ? 何が?」

 

 

 

 「! だ、ダメだ! …もう…!」

 「…いいよ。出して。それに…今日は…」

 「ゴ、ゴメン! …ッ!」

 

 

 

 「…しばらくこのままでいさせてくれよ…いいよね?」

 「そんな! 早く抜いて、拭き取らないと…!」

 「できたら…」

 「…え?」

 「な…何でもねぇよ!」

 

 

 

 「もう…帰っちまうのか?」

 (腰をひねり起こして立… ? …て、ない…?

  ハハ…我ながら、よく頑張ったモンだ…)

 「うん。学校があるからね。こればかりは、どうにも…」

 (学校…? そんなの…一日ぐらい、休んじまえばいいのに…!

  でも…イヤそうな顔してっから…許してやらぁ!)

 「…そっか。じゃあ…また福岡に来いよ。あたしは、いつでもここにいるからさ…

 …それと、来る時にはちゃんと電話しろよな! こんなんだから、暇してる時って少ないんだから…」

 「大丈夫だよ。きっとまたここに来るから。もう、会えないわけじゃないんだからさ」

 「絶対だぞ。もし二度とここに来なかったら…承知しねぇからな! じゃあな!」

 

 脚が前後する度に、あいつの後姿が小さくなっていく。

 でも…不思議と寂しくも悲しくもなかった。

 だって…これからまた、あいつはこの福岡に…ライブハウス『黒猫』に来てくれるのだから。

 『別れた』わけじゃなくて…この別れは…『しばしの別れ』なんだから。

 

 終わり

 


解説

 DDDの二周年企画ということで…センチの松岡千恵で書いてみました。

 …あれ? ○○フレーズとネタが…全然、参考にしてないはずなんだけど…(汗)

 

 では。

 


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