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シーマ・ガラハウ愛
霧雨猫/文


  宇宙を漂っていた彼女を助けたことは、俺の意図しないものだった。

  零距離で撃ちぬき、彼女は機体と一緒に爆散するはずだった。

  しかし、宇宙服を着た彼女がそこに残っていた。

 

  わからない。

 

  俺は彼女を救い出していた。

  彼女はボロボロで今にも死にそうだった。

 

  全てが終わった後、彼女を信頼のおける人に預けると、俺は軍事裁判を受け、懲役刑を受けた。

 

 

 

 ■軍調査書

 

 0083.11.12

 22:41 試作3号機と試作4号機交戦、シーマ・ガラハウ中佐、戦死……遺体は発見できず

 23:11 コロニーの最終軌道調整を完了

 

 0083.11.13 連邦軍のソーラ・システムII、2度目の照射

 00:13 南米ジャブロー上空、コロニー通過(現地時間に換算すると11月12日20時13分)

 00:34 コロニー、北米大陸落着

 01:05 アクシズ艦隊、転進、アクシズへ

 01:19 アナベル・ガトー少佐、戦死

 

 0083.11.23 デラーズ紛争に関わる軍事裁判開廷

 エイパー・シナプス大佐、極刑、コウ・ウラキ中尉、懲役刑

 

 0084 03.10 コロニー落下の真相、ガンダム開発計画、公式記録より抹消

 コウ・ウラキ少尉、懲役刑処分、階級昇進記録、抹消

 04.08 コウ・ウラキ少尉、北米オークリー基地着任

 

 

 

  ニナはガトーのことが好きだったから、俺のことを誘ったんだ。俺に情をやっておけば、後々扱いやすくなると思って。そう言ったら彼女は笑った。

  俺はひどく滑稽に見えるという。

  坊やは女を見る目がないね、彼女はそう言った。

 

  身体中を巻いていた包帯が取れて、彼女は快方に向かっていた。

  だけどたまに彼女は死にたい、とぽつり洩らす。

  機体の爆発で、彼女は脊髄に傷を負った。

  両手両足の感覚が無い……そうだ。

  生命機能に異常は無い。だけど自立して動くことが困難になった。

  ……馬鹿。

  たまにぽつりと洩らす、悪意のない嫌味。

  彼女は俺を憎まなかった。

 

  マンションに俺達は住んでいる。

  彼女の部屋と俺の部屋と居間と台所とシャワー室。暮らしていく分には不便はなかった。

  朝起きて、食事を作って、彼女の世話をして、基地へ、午後には帰ってきて、彼女の世話をして……。それが毎日の生活。

  彼女はずっと部屋にいて、TVを見るか、音楽を聴いているか、寝ているか。ずっとそんな生活をしている。

  たまの休みは車椅子に乗せて散歩に連れて行く。

  彼女は人目につくのが嫌いなようだけど、部屋にこもってばかりじゃ気分もすぐれないだろうと思って、俺は無理やり連れ出していく。

  マンションをすぐ行ったところに自然公園がある。芝生が広がっていて、小鳥の鳴き声も聞こえる。そんな時、彼女は目をつぶって嬉しそうにしている。

  風がそよぐと、柔らかくて艶のある彼女の黒髪はさらさらと揺れる。こういう髪って好きなんだ、と言うと彼女は小さく笑った。

  公園に連れて行くときは、彼女は淡いピンクのブラウスを着て、藍のスカートを履いて、ベージュのストールを羽織って――そんな格好をする。

  化粧もしたいらしいけど、俺が不器用だから贅沢は言わない。

 

  ある日、いつものように公園で散歩をしていると彼女が尋ねてきた。

  深刻な質問だった。

  俺と暮らした一年間も、ずっと聞こうか聞くまいか悩んでいたらしい。

  けれど、彼女は決心して口にしたのだ。

  自分はニナ・パープルトンの代わりなのか、振られた彼女へのあてつけなのか……それとも違うのか。

  時が止まった。

  突如として深遠の淵に追いやっていたニナの顔が浮かんできた。

  そうなのか? 俺は彼女のことをそう思っていたのか?

  今まで彼女のことをどうとも意識したことはない。ニナの代わりだとか、あてつけだとか……

  俺は押し黙った。

  少しでもそんな気持ちがあったかもしれないから。ニナに対する。

 

 「シーマ……」

  陽が落ちて部屋は少し暗い。

  でも互いの表情ははっきりとわかる。

  俺は初めて彼女の唇に触れた。

  彼女は拒まなかった。

  彼女は物凄く精神力がある人だった。艦隊の指揮もしていたし、実際にモビルスーツに乗って戦闘もこなしていた。多くの部下をまとめあげ、威厳と人徳で人を動かした。

  今の彼女にその頃の面影はみえない。

  穏やかで、静かで、冷め切ったともし火のよう。

  どこかで生きるのに諦めがついているような、そんな表情にもとれる。

  ぎゅっと彼女の身体を抱きしめた。

  彼女の身体は繊細で力を入れなくても折れそう。

  彼女の心の鼓動が感じられる。鼓動は早い。

  彼女も緊張している――?

  表情は静かで、感情を表さない。

  俺はもう一度彼女の唇に吸い付いた。

  彼女は拒まない。何度でも受け入れてくれる。

 

  ――俺、最低だ。

 

  彼女が動けないことをいいことに、俺はなんてことをした……

  俺と彼女は恋人同士でもないのに。

  俺は自己嫌悪に駆られ、彼女と身体を離した。

 「……ごめん。俺、こんなことするつもりじゃなかったのに」

  彼女は何も言わない。

  気まずくなって、俺は彼女に背を向けた。

 「でも、シーマをニナの代わりだと思ってないし、あてつけだと思ってもないから」

  本心を言ったつもりだけど、ただの弁解ともとられるかもしれなかった。

 

  自分の部屋に戻って、布団に潜った。

  考えた。

  想った。

  俺は自分をずっと騙し続けてきた。シーマが好きだって。彼女がジオンにいたから、だから自分を騙し続けてきたって。

  どこかで理解していて、それに否定的な自分がいた。

  矛盾と思った時、理性のたがが一気に外れた。彼女を求めてた。まるで駄々をこねる赤子のように。

 「……子供じゃないか。俺は」

 

  次の日、いつもと同じ通り彼女の世話をして、基地へと向かった。

  凄く気まずかった。

  彼女は自立できない。だから、俺が暴走すれば彼女はなすがまま黙っているしかない。抵抗すれば身に危険が及んでしまうかもしれないから。

  俺は彼女が抵抗できないことをいいことに彼女の身体を求めた。

  最低だ……

 

  仕事が終わり、いつも通り帰宅する。彼女の世話をして、それから寝てる彼女の隣に腰をおろして――

 「ほんとにごめんよ」

  謝った。

  彼女の不満を気が済むまで聞いてるつもりだった。

 「気にしてないさね」

  彼女は気楽そうに言った。……内心は傷ついていると思う。

 「でも、あのさ……俺、シーマのこと好きだから」

  ……自分の気持ちだけは伝えておこうと思った。彼女が今認めてくれなくても、いつか気持ちがわかってもらえるかもしれないから。

  彼女はため息をついた。

 「坊やは女を見る目がないよ」

  そう言った。

  自分の不自由な身体。年齢の差。そんなことを彼女は引き合いに出した。そして自分のことを役立たずの木偶人形と形容した。

  そんなことない。シーマは木偶人形じゃない。

  俺が好きな人は、芯がしっかりとしてて、理知的で、意欲に溢れてて、木偶人形なんかじゃない。

 「俺、初めてなんだ。この人に子供を産んでもらいたいって思ったのは」

  口が勝手に動いた。何にも計算していない、素のままの感情が。

  後悔した……

  直情的過ぎた。

  彼女はぽつりと洩らした――

  馬鹿。

  でもその表情は憎しみじゃない。

 「そんな恥ずかしいこと、真顔で言う奴があるかね」

  説教されてるみたいに聞こえた。

  でも怒ってはいないみたいだ。

  彼女は身体を起こして俺を見た。

  そして唇を押し付けてきた。

  優しい温かみ。

 「シーマ……?」

  俺は驚いた。てっきり嫌悪されるのだとばっかり思ってた。

 「ずっとこうなれば良いって思ってたさ。でもあたしは捨てられると思ってた」

  彼女は言った。

  今までずっと感情の行き違いをしていたのか……?

  二人とも同じことを考えていた……

  俺は彼女を強く抱きしめた。

  こんな時、俺はちっぽけだと思う。抱きしめたり、そんなことしかしてやれない。

  でも彼女を求めることで、彼女を安心させられたら……

  彼女の不安を取り除くことができたら……

  彼女の身体は温かく心地よい。このままずっと抱き合っていても飽きそうに無い。

 「シーマ……」

  彼女の名前を呼んで、それからブラウスに手をかけた。

 「いいよ」

  彼女が受け入れてくれて、ブラウスのボタンをゆっくりと外していった。

  彼女の前がはだける。

  彼女の雪のように白い乳房。呼吸するたびに上下する。

  俺は吸い付く。

  ――ぁあ!

  小さく彼女は唸った。

  吸い付いていると、腹をすかせた赤子みたいだ、と彼女が言う。

  俺は恥ずかしくなって口を離すと、彼女は不満声をあげた。

  俺はまた吸い付いて、舌を使ってその突起を愛撫する。

  彼女の呼吸は荒くなった。

  それから彼女のスラックスを下ろし、ズロースを外して秘部に口を当てる。

  入り口を上から下へ、下から上へ。

  彼女の中を舌で掻き分ける。

  そして彼女の秘部の突起を愛撫する。

  彼女は俺が動くたびに嬌声をあげる。

  彼女が喜んでくれると俺も嬉しくなる。

  俺はズボンを下ろして怒張したもの取り出した。そして彼女の秘部へとあてがった。

  入り口は滑りのよいぬるぬるとした粘液が溢れていた。

 「いくよ……」

  彼女は黙って頷く。

  俺は勢いをつけて一気に彼女の中へと入った。

  ――ぁっ!

  彼女は小さく叫んで、そして大きく深呼吸をした。

  彼女の中。

  とても熱くて、とても優しい。

  柔らかく俺のモノを受け止めてくれて、俺が奥まで辿り着くと今度は大事にするように全体で包み込んでくれる。

  そのまま俺は体を伸ばし、彼女の唇に吸い付いた。

  初めて彼女と会ったとき、彼女はもっとでかくて、危険で、近寄りがたいイメージがあった。

  でも今は違う。敵を威圧する仮面を脱いで、本当の姿になった。

  ――ぁあ、いいよぅ。

  遅く、規則的に腰を動かす。

  彼女は俺の一挙手一投足を受け止めてくれる。

  彼女とこういう関係になれるのが夢だった。どんなに思い描いたことだろう。

  彼女と結婚して、子供を作って、年老いて死んでいく。そんな生活を一瞬にでも考えたことがあった。

  ――ぁぁ……ぁあああ……!

  モノを根元まで沈めると、丁度ぴったり子宮口にぶつかる。

  引き抜いて、それからまた根元まで埋める。

  それを何度も繰り返す。

  亀頭が子宮口にぶつかると、なんだか彼女と繋がっているような気分になる。

  彼女も不思議な感じを受けるようで、奥まで進むと感じ方が変わる。

  ――んぁっ……ぁあっ!

  俺が突くたびに彼女は壊れそうな切ない声をあげる。

  いつも威厳があるような腹に力の入った声じゃなくて、優しい声。女らしい声。

  好きだ好きだ好きだって、叫びたいほどに彼女は可愛らしい。

  ――いぃっ!……はぁぁん……

  俺が力強く打ちつけるたびに彼女は嬌声を上げ、ベットが軋む。

  乳房に口をつけ、揉みほぐし、胸の突起を軽く噛んだ。

  彼女は次第に昇り詰めた表情を見せる。

  暗い、闇夜の瞳がチラチラ輝く。

  どんなに彼女を待ち望んで、どんなに恋焦がれたことだろう。無意識野に追いやっていた記憶が、今、一秒ごとにフラッシュバックする。

  ――ぅぅああ……ぁぁああああ!

  挿入しながら彼女の足を抱え、ぐっと体重をかけて突き入れた。

  まだ俺は子供なのかもしれない。熱情と焦りが愛することに同居する。

  自分を押さえられない。押さえたくない。

  彼女がどんどん遠くに行ってしまうような気がする。保証が欲しい。大事なものをぶつけあわせられる信頼が。

  ――ゃああ……ぃぁあああ……

  モノを根元まで入れて、腰を使って掻き回す。

  彼女の中はそんな乱暴な行為でも優しく受け止めてくれて、温かくじわりと締め付けてくれる。

  愛されてる。そう感じられる……

  ――ぃいっ!……ぃいっ!……ぁああいっ!

 「もうイきそうだ……」

  下腹部にこみ上げるものを感じる。

  ……彼女の子供が欲しい。このまま出したい……

 「中に出してもいいからっ……出して……子供を産ませてっ……!!」

  そうなんだ。彼女も俺と同じことを考えてる。

  今までが行き違いなだけなんだ。

  シーマ。俺を愛して欲しい、愛させて欲しい。俺の子供を産んで欲しい。

 「シーマ……!」

  ――ぁぁぁあああああああああ!!!

  彼女の抑えた絶叫と共に、俺は彼女の中で果てた。

  俺の為に、彼女の為に。

  俺のモノは彼女の中で何度も痙攣する。そして激情の為すがままに射精し続ける。

  彼女は荒い呼吸を小さく肩でする。

  俺は彼女を抱きしめた。

  艶やかな黒髪がさらりと揺れた。

 

  そよ風が彼女の髪をなぶった。

  自然公園は少しだけ賑やかな休日を迎えている。

  サッカーをする少年。フリスビーを楽しむ少女達。ベンチでランチを広げているカップル。親子連れのランチの風景もある。

  彼女は優しく微笑む。

  彼女の手には小さな、俺達の子が眠っている。気持ちよさそうに。

 


解説

 その後、二人の子供は軍に入り、准将にまで昇進。「連邦軍にこの人あり」と言わしめるほどの戦略家であったが、惜しむらくは彼の出世欲の無さで、その才が世に出ることはほとんどなかった。

 

 

 

 という夢を見ました。三日前。

 


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