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八房冒険檀 螺旋〜上陸〜
久の字/文


 絶海の孤島に相応しいその島に、静かに中型クルーザーか滑り込んでくる。クルーザーの舳先に長身で黒服、そして細い目に丸メガネの男が後ろ手に組んで立っていた。後ろに束ねた髪が風に踊っている。恐ろしく不釣合いな光景である。

 「ウォン、上陸の準備を頼む。」

  クルーザーを操船していたこちらも黒服でくすんだ金髪ドイツ系の顔立ちをした眼帯男が舳先の丸メガネの黒服に声をかける。

 「分かりました。」

  丸めがねの男………ウォンはゆっくりと行動を起こした。鈍いのではなくどこか優雅な動作で。

 「ナッシュ、彼らの様子はどうですか?」

  この決して弱いとは言えない日差しの中、汗一つかかずに作業を続けるウォンは眼帯男に声をかける。

 「いま、ケイに見に行かせた。鹿角さまにもあと1時間で着くと言いにいってもらったぜ。」

 ナッシュは答えた。

 「結構。」

 メガネをかけ直しながらウォンはそう言って黙々と作業を続ける。

 

 

 コンコン。

 クルーザー内の寝室にノックが鳴る。

 「う"い………」

 中から死にそうな声が返ってくる。

 「3人とも大丈夫?」

  ドアを開け、優しい声でメイド服の女性が声をかける。

 「あぁ、ケイさん………」

 弱弱しい声でベットに横たわる赤毛のメイド服が顔を上げる。埋まっているベットのうち、2人はメイド服のまま(ただし、胸元などは緩めているが)、あとの一つは上着を脱いでYシャツ姿の執事である。

 「もうそろそろ着きますよ。」

  ケイと呼ばれた栗色の髪のメイドは、優しい口調でそう言った。

 「すいません………ご迷惑をお掛けして………。」

  黒髪でツリ目のメイドが辛そうに体を起こし答えた。

 「いいのよ、レンちゃん。困ったときはおたがいさま。」

 聞こえていないのか、唯一の黒服が無言でフラフラと洗面所に入っていく様を見送りながら、ケイは答える。

 「休んでなさい。鹿角さまには私から話しておくから。あ、後1時間くらいで着くからスタン君にも言っておいて。」

  やさしくレンを諭すと、お大事にと告げて、寝室のドアを閉めた。

  クルーザーのリビングで青年が一人、本を読み耽っていた。こういう場合読んでいる本が純文学なら絵になるが、ざんねんながら俗っぽい情報誌である。

 コンコン

 寝室とおなじノックの音が鳴る。

 「はい?」

 部屋の中の青年が雑誌から目を離し答える。

 「失礼いたします、鹿角さま。まもなく島に到着いたします。」

  ケイが静かに自分の主に用件を告げる。

 「分かった、ありがとう」

  鹿角と呼ばれた青年はにこやかに顔をケイに向ける。雑誌を閉じソファの上で軽く伸びをする自分の主を、ケイはどこか猫、とくに山猫を感じさせずにはいられないと常日頃思っていた。

 「あと、レンと瑠璃、スタンくんが……………。」

 「やっぱり、船酔いが酷いですか?」

 「えぇ、任務の方も辛いかと思います。」

 ケイが少し申し訳なさそうな顔をして、鹿角を覗き見る。

  鹿角は微笑を崩さぬまま、己に仕えてくれるメイドに答える。

 「しかたないね。3人はチェックインしたら今日は休んでいいよ。ケイとウォン、ナッシュは俺に着いて来て。委員長さんに挨拶にいくから。」

  委員長・・・・・・大会の主催者・・・・・・事情を事前に知っていたKは軽い緊張をしながら了承の返事をした。知らなければここまで緊張することは無い。委員長に付き添う少年を知らなければ・・・・・。

 「分かりました、伝えておきます。では失礼いたします。」

 「あ、まって。」

  退室しようとしたケイを鹿角は呼び止める。

 「装備はSSでいくから。」

 笑みを止めて、真面目な顔の鹿角が伝える。

 SS・・・・・・・・スペシャルシークレット・・・・・・目立たずに,殺傷能力を最大限に持つ各人得意の装備・・・・・・・・。

 「・・・・・・・はい。了解しました。」

  振り向かず、いつもの優しさを押し殺した声でケイは答えた。

 「じゃあ、伝達よろしく。」

 先ほどの一瞬の緊張を溶かすように、笑みを浮かべた鹿角はケイに告げる。ケイはクルリと振り向き、一礼をして、

 「わかりました、全員に伝えておきます。鹿角さまも上陸のご用意をお願いいたします。」

 優しさを戻したケイが退室しようとして、ふと止まる。

 「あ、今から寝るの、駄目ですからね。」

 ぴっと人差し指を立てて、のんきな主に釘を刺し、退室していった。リビングには鹿角一人になるともう一つ伸びをして鹿角は立ち上がる。

 「さて、何が出てきますか。お楽しみだな。」

  楽しそうな声で、鹿角は呟いた。

 

 

 

 

 山間の集落は季節の移り変わりが良く解る。八房の邸宅もそれは変わらない。この間まで花で彩られていた山々もすっかり木々の青葉を茂らせていた。

 「はぁ???」

 屋敷の大きさに見合った書斎の鹿角はTV電話の向こうの男に呆れた。

 「だから、いいかね。君のところのメイドが、いきなり腕を捻ったんだよ!!」

 向こうの髭面ハゲの50男はかなり憤慨していた。今回始めて鹿角の会社にガードを依頼した客である。

  鹿角の会社――――八房セキュリティーサービス・・・・・ボディーガード、SPとしての卓越した能力をもつメイドや執事を育成、個人団体を問わずに派遣している一風変わった警備会社―――――にくる依頼人は富豪でまさに真の紳士淑女が多いのだが、まれにこんな馬鹿成金が来るのだ。普通は審査で鹿角が落とすのだが、今回はたまたま見落としていたのだ。自分のミスなのだから、甘んじて受けよう。鹿角はそう思った。

  はァ・・・・と鹿角は大きなため息をつき、すぐ側に立つ執事を見た。

 「ウォン、報告書ではどうなっていた?」

 「はい、今回ゼンケン氏のところに派遣されたメイドは、シシリナ以下3名。その全員がセクハラを受けたと報告しております。」

  淡々と話すウォン。

 「そうだ、そのシシリナと云うのがう・・・・」

 「うるさい、下衆が」

 静かに凄みのある声で鹿角が遮る。キレかけていた。

 「お前がウチを依頼するなんて100万年早いんだよ。」

 あくまで静かな声で言う鹿角。みるみるウチに真っ赤になっていく髭面。

 「き、きさま・!!」

 この男、小物である。ウォンは長い業務経験と傭兵経験から確実にそう読み取っていた。もっともそんな経験がなくとも、この男が小物であることは分かりやすい。

 「貴様の仕事を出来ないようにしてやるからな!!」

 「どうぞお引取りください。」

 疲れ果てた声の鹿角の言葉とともに画面は消える。2人の深いため息が出た。

 「・・・・・・あのハゲの戦力は?」

 うんざりと鹿角が傍らの執事に尋ねる。

 「イタリア小規模マフィアと大阪のヤクザに繋がりがあります。」

 いつもの調子を取り戻し、ウォンは主にこたえる。

 「・・・・・ほっとこ。あ、あいつの会社には圧力かけておいて。」

 まだ疲れた顔で鹿角は指示をする。これで、あの馬鹿成金は路頭に迷うどころか、死ぬに死ねない地獄を味わうだろう。

 

  世界中の腕利きの傭兵、特殊部隊、暗殺者などをさらに訓練する鹿角の会社は。世界経済10本の指に入るマーカー財団を率いる祖父祖から財団を相続したとき、命を狙われまくった経験から建てたのだ。結局嫌気がさし、財団のほとんどを親類たちに渡し、この警備会社を運営して5年、安心とSP特有の殺伐とした雰囲気が無いなど、ここの社員たちは表には出ない世界中の大富豪、王族などの護衛、彼らの主催するパーティなどに重宝がられ、文字道理、世界最強の警備会社に成長していった。純粋な戦闘能力だけなら、一大国の軍隊に匹敵する能力を保有している。ゆえにマフィア、ヤクザ程度では蜘蛛とアリ以上の差が有るのである。

 

 「わかりました。」

 ウォンがおじきをして、唐突に音もなく書斎のドアの前まで歩いていった。鹿角も気がついていた。ドアの前に気配が先程からあったのだ。殺気は無いが気配を消そうとしているのがウォンには分かった。

 気配を完全に消したウォンはドアの前に立ち、一気にドアを開けたのだった。

 「うにゃ〜〜」

  小柄なメイドが、完全に不意をつかれていたためにバランスを失い、転がり込んでくる。

 「テイニー、なにをしているんですか?」

  ウォンがテイニーに問い質す。頭からつんのめったメイドはすぐに立ち上がる。パンパンとホコリをはらう。恥かしさから真っ赤な顔で二人を見る。

 「あ、えっと、お茶のご用意が出来ましたことを,お伝えしに来たのですが、あの・・・・」

 「ああ、ごめん。入りにくかったよね。」 

 テイニーが言いにくそうにしているのを、鹿角がにこやかに察し、優しく声をかけた。

 「では、この件はわたしが処理をしておきます。」

 ウォンが一礼すると、机の上の書類を整え始める。

 「ねえ、テイニ―?」

 パソコンの終了処理をしていた鹿角が小さくなっているメイドに画面から目を逸らさずに話し掛けた。

 「前の仕事先でさ、夜伽とかってやったの?」

 「へっ??」

 「!?」

  テイニーがすっ頓狂な声を出す。ウォンも声には出さないが驚いた。

 「あ、え、えと、えと。」

  思い切りうろたえるテイニー。このテイニ―というメイド。戦闘能力はさほどでもないが、メイドとしての経験は折り紙付きである。

 「あ、言いにくかったらいいんだけど・・」

 「あ、あのあた、あたしはやってないですが、他の子は、あの……呼ばれてたことが・・」

 しどろもどろなテイニーの答えに少し考える鹿角。

 「うん分かった、ありがとう。ごめん、へんな事聞いちゃって。」

 照れ隠しに笑いながらテイニーに誤る鹿角を見ながらウォンはある事を思い出していた。

 「鹿角さま、まさかあの企画に手をお貸しになるのですか?」

 あの企画・……とある孤島で開催される女性だけの格闘大会の投資者になる企画・・……その事を言っているのだ。

 「さすがはウォン、話が早い。来週までに資料とか揃えておいて」

 ニヤリと悪戯っ子のように笑いながらウォンをみる鹿角。

 「??」

 「あ、そうだ。お茶にしよう。」

 ウォンの追及をかわすように鹿角は?マークが飛んでいるテイニーにとともに部屋を出ていってしまった。

 「……まったく・・……」

  ウォンは呟いた。なにか考えあってのことだろうとは思うが、気まぐれの可能性も否定できない、もうひとつ呟いてウォンは手元にあるコードレスホンを取る。

 「もしもし、滝ですか?ええ、わたしです。実はですね、例の企画に、ええ、そのとうりです……」

  ウォンは資料を集めるために手を尽くし始めた。忠実である。

  

 「鹿角さま!」

 屋敷の廊下に声が響く。午後のティータイムを終えた鹿角とそれに付き添った金髪のメ

 イドに無かって、向こうから初老の執事が大股で歩いてきた。

 「どうゆうことです?あのような企画に参加するなど!」

 黙っていれば渋さが沸き立つロマンスグレーが台無しになるくらいの凄い剣幕で言い放

 つセバスにいつもの柔らかい笑みを向ける鹿角。

 「だいじょうぶ、ちゃんと考えがあるから。」

 「女の痴態をみることがですか!」「う〜ん」

 どう言ったものかなと、鹿角は頭をかきながら思案する。

 

 「では、お考えをお聞かせください。」

 自室に戻った鹿角の机の前に、執事長のセバス他数人の執事、メイド頭のマチ他数人のメイドが取り囲んでいた。

 「うーん、早い話がスカウトに行こうと思ってさ。」

 鹿角が少し困りながら答える。

 「スカウトならばいつもどおり傭兵や暗殺者のリストから選考したらよろしいではあり

 ませんか?」

 みるからにロッテンマイアーなメイド頭のマチが意見する。いつもは、退役した傭兵や

 ドロップアウトした暗殺者。特異な能力者を選考、スカウトし、さらにガードとしての訓

 練や、執事やメイドとしての教育して、派遣しているのである。

 「今回欲しい人材は、性的奉仕ができるメイド。ガード能力のあるね。たとえば、瑠璃、

 派遣先でセックスを要求されたら、どうする?」

 「あ、はえ?え?」

 唐突に指名された赤毛のメイドがあたふたしながら答える。短めの髪が揺れる。

 「あ、あと、えと、断ります。」

  軽く頷いて、隣に居る黒髪のメイドに問い掛ける

 「レンは?」

 「業務要項には明記されていません。」

 瑠璃とは対象的な燐とした答えを言う。白いリボンで結った黒髪もまったく揺れないの

 も対象的である。

 「もし、手出しOKな娘がいれば、他の娘へのセクハラも減るでしょう。そういう人身御供を作ろうかなと。」

 「しかし・……」

 「もう一つ、」

 反論しようとする若い金髪の執事の言葉を遮り、鹿角は重厚な机に肘をつき、指を組ん

 だ。

 「投資者、観客たちのリストアップをしたいんだ。」

 「リストアップ…………でございますか?」

 セバスが納得いかないように聞き返した。

 「こんな鬼畜な格闘大会を見に来る奴等だ。人間的にも問題ありだろう。そんな奴等から

 の派遣依頼なんて危険すぎるからね。いっぺんにリストアップしておくのさ。」

 「…………なるほど、そうでしたか。失礼をいたしました。」

 深々とおじぎをするセバス。どうやら納得してくれたようだ。

 「それに…………」

 鹿角は組んでいた指を外し、深く椅子に座りなおした。

 「どちらにせよ、無手で戦えるメイドが欲しかったからね。腕がたつなら、性的な役割のメイドじゃなくてもいい。」

 「たしかにメイドたちの中には格闘術が長けているのは少ないですね。」

 金髪の若い執事がいまのメイドのメンバーを考えて答えた。実際、この金髪の若い執事、

 スタンを始め、会社の執事たちは、三分の二は格闘のエキスパートである。しかし、これ

 がメイドになると、五分の二程度に減ってしまう。しかし剣技、銃器の扱い、忍術、特殊

 技術などは決して引けは取らず、ESP(超能力)にかんしては、使える人数、力の強さ

 などはメイドたちの方が上回っていた。

 「と、こんな感じだけど、何か質問は?」

  鹿角は立ち上がり、信頼できる社員たちを見回す。

 「島に行く編成はどうなります。待機中のメンバー全員で上陸ですか?」

 ナッシュが大真面目な顔で言う。一国の軍隊を平気で相手に出来る人数を送るとは物騒

 なドイツ系である。それにすかさずレンが大真面目に突っ込む。

 「戦争に行く気か、貴様は?」

 「テメーには聞いていない。」

 ナッシュは隣に立つ中国人のメイドを目だけで睨む。

 「・・・・・・・・・・・・・・・」

 負けじと睨み返すレン。元ドイツBNDと元中国女人隊、元軍人どうしだからだけでは

 ない犬猿の仲の緊張の糸が張っていく。

 「二人とも、そこまでよ。」

 栗色の髪のメイド、ケイが優しい口調で一瞬にして緊張の糸を緩めてしまう。このメイ

 ドの凄さというか、力量というか。

 「鹿角さま、続きを。」

 「うん」

  三人のやり取りに苦笑する鹿角はKに促される。

 「島に行くメンバーは、ウォン、ケイ、レン、ナッシュ、瑠璃、スタン、この六人で行こ

 うと思う。少数精鋭。戦争に行くわけじゃないけど、いろんな意味で危険だから。」

 「鹿角様、ナッシュやレンが入っているのはわかりますが、なぜ瑠璃やスタンがメンバーに入っているのでしょうか?」

  マチが若い主に詰め寄る。

 「若い社員に場数を踏ませたいからねぇ。経験値稼ぎだよ」

  若い金髪の格闘屋と、同じぐらい若い赤毛のくノ一を見ながら鹿角は言った。

 「・・……他に質問は?」

 部屋を見回す。数秒の沈黙。

 「無ければ、仕事に戻って。セバス、諜報課に連絡して大会に関する情報を集めて。マチさんは留守の間のチーム編成をお願い。」

 鹿角が指示を出していく。テキパキと答える有能な社員たち。八房セキュリティーサービスの活動開始である。

 

 夕食後、鹿角は今の時点であるだけの大会の資料を自室で眺めていた。開催する組織、参加人数、その他の表面上の情報を中心に、現時点での情報である。

 「ふん………………胸糞わりぃなぁ。」

 鹿角は一人愚痴る。表向き戦争孤児の救済、その実体は人身売買組織。戦争している両国に肩入れする武器商人。参加する人間の経緯や金の動きを見ているとそんな単語ばかりが並ぶのを、うんざりしながら見ていく。自分が偽善者ということを良く分かっているが、彼らほど悪人では無いつもりである。

 「ふぅ…………………」

  机の上に資料を投げて、背もたれに体重を預けると、目を閉じる。

  委員長…………不知火と呼ばれる少年…………女性のみ…………欲望のための大会…………異世界からの強制召喚……………格闘……………

 なにかしらの符合を出そうとするのは、人外の術を操る者の癖なのだろうが。

 こんなとき、あの人や彼ならどう言うだろうか。

 「アンタも物好きだねぇ、ほっときゃいいのに。」

 「まったく、面倒が好きな性分ですね。」

 なんてことを言うだろうなと、鹿角は苦笑した。

 ふと、どこかで聞いた言葉だなと、思い出す。

 あぁ、彼女と初めて出会った時に言われたんだ。

 

 コンコン

  聞きなれたノックの音がした。

 「鹿角さま、お茶をお持ちいたしました。」

 お盆に急須と二つの湯のみ、かりんとうを乗せてケイが入ってきた。

 「ああ、有難う」

 鹿角は資料から目を離さずに礼を言う。

 「鹿角さま、なぜ大会にこだわるのですか?やり方は幾らでもあるとおもいますが・・・・」

  玄米茶を入れながら、Kは気紛れな青年に問い掛けた。

 「昼間、言ったとおりだよ。一石三鳥だからね。それにね。」

  お茶の入ったカップを受け取りなから、ケイを見る。

 「大会の出場者の中に異世界の娘たちがいるって言ったら、信じる?」

 「!?まさか・・・・」

  ケイは驚きを隠せなかった。

  異なる世界を渡り歩く者の存在は知っていた。しかし、異世界から召喚する方法は限られている。まして帰還などは・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 「大会の主催者、委員長て呼ばれているらしいけど・・……これ見てみて。」

 と、ファイルを広げ、一枚の写真をKにみせた。

 「詳しいことは分からないけど、ここ。隅に一人写っているでしょ。」

  写真には数人の男たちが会合をしているらしきところが写っていた。そして、

 「隅って、この子?!」

 「不知火、そう名乗っているそうだ。こいつが召喚すべてを仕切っている。」

 お茶を一口すすり、一息いれる。

 「TTCって、知ってる?」

 「傭兵団の?」

 「そう。」

 チラッとケイを見る。

 「元団員の傭兵12人が数分でミンチ。信じられるかい?」

 「!!」

  ケイは驚きを隠せない。それはそうだろう、TTCといえば狂気の傭兵集団と言われている最凶の傭兵団。12人が一瞬というのは、並のことではない。会社でも十数人が出来るか出来ないかのことである。

 「不知火が殺ったそうだ。」

 ため息を付くケイ。

 「教えてもらえるんでしょうか。」

 自分が飲む分のお茶を持ったケイがソファーに座る。

 「教えてもらえなければ、それでいい。帰れる可能性が見えたんだし。」

  鹿角はKを優しく見つめる。しかし対象的にケイは寂しそうだった。

 「もし、」

  ポツンとケイが呟いた。

 「もし、その場でしか帰らなければいけなかったら、鹿角さま、どうします。」

  真剣な面持ちで答えを待つ。期待していた。止めてくれることを。不安だった。笑って、さよなら、を言われることを。しかし、

 「わからん、その時にならないと。」

  難しい顔で鹿角は即答する。考え様によっては一番残酷な答えで。

 「だけどね。」

  ケイの瞳を見つめて鹿角は続ける。

 「ケイが泣くのだけは見たくないからね。泣かない方を選ぶよ。」

  と、笑う。

  ケイも笑う。そうだ。この人はいつもそうだ。気紛れで、勝手で優しい。本心の泣き言は言わない、言わせてくれない。厳しいのか緩いのか、ほんとに気紛れな人。でも、だからかな、この人のことが・・……・・…。

  夜の2人のお茶会は、ゆっくりと過ぎていった。

  

 

 島に作られた港には大型クルーザーや、沖の豪華客船の物であろう上陸用の小型艇が多数接岸されていた。まあ、なかには手漕ぎボートで本土から来る強者もいるのか「東京港湾局」なんてペイントされた物もある。

  そんな港の桟橋の一つにナッシュはクルーザーを接岸させた。ウォンがテキパキとロープで船と陸をつなぎ止めた。

 「しかし、イイ天気だよなぁ。」

  エンジンを止めなからナッシュがウォンに話しかける。晴天、多少暑くはあるが潮風が心地良い。

 「闇の格闘大会には似合いませんね。」

 ウォンも同じように空を見上げる。

 「やっぱり、暗雲立ち込め雷鳴轟き、ていうのがお約束かな。」

 中から出てきた鹿角が二人の会話に入ってきた。ウォンとナッシュは軽く会釈をする。

 そして鹿角に続いてケイに付き添われて船酔いしている三人が出てくる。

 「ほら、陸の方が幾分楽よ」

 ケイに手を引かれ、瑠璃が船から降りる。

 「鹿角さま、申し訳ございません。この失態は、必ず挽回いたします」

 ほかの二人より幾らかは回復した感じのレンが宣言する。青い顔のままだが。

 「無理すんなよ。ゆっくり休んでろ。」

  ナッシュの言葉にキッとレンのツリ目が反応する。

 苦笑しながら鹿角がクルーザーから桟橋へ飛び移る。スタンもウォンの手を借り、ふら付きながら飛び移った。これでクルーザーに乗っていた七人全員がこれで上陸したのだ。

  鹿角が島の中央に目を向けると、まるで要塞のような建物、通称「本部」が聳え立っていた。

 「みんな、用意はいいね。」

 珍しく真剣な口調の鹿角に、彼の信頼する使用人兼使用人たちが頷く。

  

 舞台は孤島、

 向かうは奇妙な一団、

 螺旋はすでに始まっていた。

 

 

 


解説

 忘れられた小説書き、久の字ございます。

 螺旋の幕間小説をお送りいたします。

 え〜、この「八房冒険檀」について、すこし補足をば(妄想ともいう)

 

 もともと陵辱されないメイドが見たいという自分の欲求が発端で、ちょこちょこ設定

 を暖めていたものです。

 で、メイドさんだけじゃ、そこらの萌えが売りのメイドと同じだなと思って執事をた

 して、形になったという、

 ツッコミありまくりなモノでございます。

 まだ本編は形になっていないので妄想の粋を越えていないのですが、お付き合いくだ

 さい。

 

 ライム「で、今回私たちの出番は?」

 ダリア「無いそうです。その代わり、本編に出れるかも知れない。」

 ライム「え、マジ?!」

 ダリア「未定………………だそうです。」

 


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