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ある、六月の初め。 海豚は何時も以上に切なくなっていた。
「巽さん・・・」
海豚は切なさ過ぎて身体を慰めようとして・・・それをやめ、布団を抱き締めていた。
「巽・・・さん・・・」
切なさで中々寝付けず・・・ようやく寝付いたのは、日付が変わって午前02:24時頃になっていた。
この頃は、三年生は修学旅行で北海道南地方に行っており、学校はおろか、県内には居ないのであった。 そして、一年は長野での宿泊研修。 海豚はたった今、地獄の数学プリントマラソン『合格までやれ!』をクリアしたところだったのだ。 幸い、行事前日、巽にポイントを抑えてもらっていたのだが、それでも辛勝した。 数学は・・・とにかく、苦手なのが、海豚らしいところであろう。
海豚がようやく寝付いた頃、晃も一足遅れてクリアし、自分に宛がわれた部屋に戻ってきた。 布団への倒れ方が・・・あのキング・ジョーだった。
「海豚ちゃん・・・寝ちゃったんだ・・・・・・」
晃は海豚の寝顔を見て・・・・・・劣情が湧いた。
「可愛い・・・・・・」
晃は匍匐[ほふく]全身で這い進み海豚のもとに寄ると、その寝顔をマジマジと見つめていた。 そして・・・。
「んっ・・・・・・」
海豚の可憐な唇に口付けた。 そのまま、胸を揉もうとしたが、睡魔が襲う。
「くっ・・・ここまでか・・・」
晃は自分の布団に戻り、睡魔にその身を委ねたのだった・・・・・・・・・。
その二刻(約四時間)前。 巽たち三年生の泊まっている札幌の某ホテルの一室では、少し卑猥な会話が催されており、消灯時間を過ぎても、それは続いていた。
「でさぁ〜、そいつったら泣きながら喘ぎ声出してさ・・・すっげ〜淫乱だったぜ!」
同室していた一人が、自分の強姦自慢を語っていた・・・が、そこは獅竜鳳に育てられた身。 巽は冷ややかに割り込んだ。
「・・・でも、女の子にとっては喘いでしまっても、腰を振ってしまっても、嫌なもんだよ・・・。 『嫌よ嫌よも好きの内』なんて言うけど、襲われた身にとっては『それでも嫌なものは嫌!』なんだよな・・・」
「やけに、はっきり言うな・・・」
「ま、婚約者の居る身としては、彼女を幸せにするのが男の義務ってやつだからな・・・」
そして、あいつはずっと、怯えていたものさ・・・。
「・・・でも、女って、襲われたいって奴も居るんだとよ」
別の男子の意見にも、冷ややかだ。
「でも、全ての女の子がそうじゃない」
「そうかな〜?」
疑問を投げかけるも、巽は遠い目で呟いた。
「襲われたのを苦に自害したり、男に対して恐怖し『好きだ』なんて告白できずに苦しんでる子を・・・何人も知ってるからな・・・・・・バイトがら」
『どんなバイトだ?!』
「『女性の敵』を『狩る』バイトさ」
あっさりと答えた巽に、彼らは閉口してしまった。
「ま、狩るっていっても殺生はしないよ。 野郎のモノを斬るだけだから」
「・・・ちなみに、いくらだ?そのバイト」
「下郎一匹に付き、一万円。 強姦などの現行犯なら、最大十万まで。 それが月のおこずかいさ」
「その金って、やっぱり貯めてんのか?」
「そりゃあ、あいつと結婚するし、大学にも行くんだもん。 其れ相応には貯め込まないとな」
「・・・・・・・・・・」
・・・恐れ多くなり、彼らも睡魔に身を委ねた。 第一、もうすぐ見廻りの教員がここに来るはずだ。 巽は布団に潜り瞳を閉じるが、海豚と出会った頃の事を思い起こしていた。
(あいつ・・・最初はすごく怯えてたっけ・・・)
最初に海豚(当時10歳)と出会った、その翌日。 巽は海豚の部屋の戸をノックした。
「海豚ちゃん、少しいいかな?」
何せ女の子の部屋に入るのである。 ノックをしなければ、少なくとも、獅竜鳳の拳骨が超音速で飛んでくるのは、間違いようのない事だった。 戸の奥から、少しかすれた声で海豚が応えた。
「え、ええ・・・いいですよ」
「お邪魔しま〜す・・・」
襖[ふすま]を開けると、巽は驚嘆した。
勉強机と最低限の箪笥[たんす]、一枚の姿見だけで至って質素な部屋だった。 とにかく、飾り気というものがなかった。 田舎だからだろうか? 箪笥の上には、一輪挿しにピンク・カーネーションが挿してあった。 強いての飾り気は、これだけだ。
「あの・・・なにか?」
海豚は、少し警戒して巽を見た。 どことなく顔が朱いのは、昨夜自分が行った言葉を反芻したからだろう。 好意は有っても、男だから・・・。 それでも、巽は屈託のない笑顔で、こう申し出た。
「一緒に、夏休みの宿題、片付けようかな・・・て、思ったんだ」
と日誌を取り出した。 海豚は小さく頷いて、巽の申し出を受けたのだった。
「・・・う〜ん・・・」
宿題を初めて10分も経たない内に、海豚は頭を抱え込んだ。
「ん? どこが分からないの?」
巽はそっと海豚に近づいて、日誌を覗き込んだ。
「えっと、割り算がちょっと・・・・・・!」
ふと振り向いて、海豚は戦慄[ゾクリッ]とした。 何かしらの恐怖感で、身体が震えてしまう。
「あ、あの・・・」
「? 大丈夫?」
巽も海豚の変化が不審に思い、声を掛けて見た。
「ご・・・ごめんなさい・・・その・・・」
震えに、はにかみが混ざり変な気分になる。 巽はあっと気付いて、海豚から離れた。
「ごめん・・・昨日の今日だったね・・・」
「・・・・・・」
巽の心遣いに安堵し・・・しかし、別の震えが襲う。 この悪寒は・・・!
(だめ・・・間に合わない・・・!)
シャァァァァァァァァァァァ・・・・・・
海豚の股間から勢い良く、黄色く熱い『何か』が流れ出た。 ・・・そういえば先刻、かなりの量の西瓜[すいか]を食べたっけ・・・。
「――――――っ!!!?」
目の前に巽が・・・男の子がいることに気付いて、海豚は羞恥のあまり悲鳴を上げそうになった・・・が、巽は機転を利かし、置いていた麦茶の入ったグラスを海豚の方に倒した!
「きゃあ?!」
「わぁー?! ごめん!!」
(え?!)
海豚は最初、混乱していた。 なにがどうなったのか、見当が付かなかったのだ。
「えっと・・・ちょっと待ってて、雑巾借りてくるから!」
「え、あの・・・」
海豚は呼び止めようとして・・・しかし、それは叶わなかった。 巽が母の鯱子に詫びを言いつつ、雑巾を持ってきたのだ。
「あ、あの・・・わたし・・・」
床畳を拭き始めた巽は海豚を制し、
「ごめんね、恥ずかしいところ、見ちゃって・・・」
「あ・・・」
その気遣いに、嬉しく思った。 麦茶でアンモニア臭と色を誤魔化し、「自分が麦茶を零した」と自ら濡れ衣を羽織ったのだ。 海豚のスカートも文字通りの濡れ衣になっていたが、巽は一旦部屋を出て海豚が着替えるのを待った。 着替え終えると、再びノックして入室する。
「・・・でも・・・どうして?」
疑問を呈されて、巽は・・・やはり屈託のない笑顔で応えた。
「どうせ恥ずかしい思いするなら、女の子にさせるより、男がするべきだろ?」
そのセリフに・・・海豚は嬉し涙を流したものだった。
無論、獅竜鳳にこっぴどく叱られたが、巽自身もよもや「女の子を失禁させた」などとは言えず、叱られただけで済んだので一石三鳥くらいはしたのだった。 無論、このことは、二人だけの秘密で他言されていない。
しかし、巽は今でもそのことを反省していた。 失禁してしまうくらい、当時の海豚は、全ての男に対して怯えていたからだ・・・・・・って、待てよ?
(そういえば・・・あいつの父親・・・って?)
あの邂逅[めぐりあい]から、毎回のように海豚と鯱子の姿は見るが・・・父親の姿が無かった。 以前、そのことを訊いた時は、海豚は寂しそうに首を横に振った。 知らないようだったし、知っても話したくはないようだった。 まあ、巽とて、無理して訊く事はなかったが。 話す気になった時に、耳を傾ければいいだけだ。 簡潔な結論に達し、巽は寝息を立てた・・・・・・。
「う・・・ん・・・」
翌朝、海豚は何とはなしに目が覚めた。 持って来た時計を見ると、午前05:13時。 一刻半ほどしか寝ていなかったようだ。 二度寝をしようと思ったが、目はパッチリと覚めてしまっており、諦めることにした。 海豚は窓辺に腰掛け、外を眺めた。
濃い霧の中に、近くの湖沼が幻想的に存在を主張していた。
「綺麗・・・」
海豚はふっ・・・と微笑んだ。 彼が居たら、どう思うのだろう。 同じように思ってくれるかしら? だったら、いいな・・・。
同じ頃、誰かが起きた気配に気付いて、晃も目覚めた。 寝惚け眼でまわりを見渡し、海豚に目を止めた。
「・・・!」
晃は完全に目が覚め、海豚を注視した。 体育ジャージを来ているにも関わらず・・・なんて、幻想的で綺麗なのだろうか!?
「綺麗・・・・・・」
晃がポツリと言うと、海豚がそれに気付いて振り向いた。 その様も、幽玄美を醸し出していた。
「・・・おはよう。 起こしちゃった?」
「ううん。 今、起きたとこだから・・・」
晃はようやく、それだけを搾り出すと、少しだけ巽の気持ちが分かった気がした。
嗚呼・・・こんなに綺麗だから・・・・・・護りたいんだ・・・。
「・・・真崎さん?」
海豚が訝しく声を掛ける。 晃ははっと我に帰り、首を横に振った。
「いや、ちょっとね。 海豚ちゃんって、綺麗だな・・・て、思って」
「そう・・・」
海豚は少し不満げな表情[かお]になった。 巽の口から、それを聞きたかった・・・。
「一緒に眺めてて、いいかな?」
晃の申し出に、海豚は静かに頷いた。
「・・・海豚ちゃんってさ」
「なぁに?」
晃に話し掛けられ、海豚は少し警戒した。この間、巽との情事を見られたこともあった所為もある。
「巽・・・先輩とは、いつから?」
ああ・・・やっぱり、その話しか・・・。 海豚は落胆しつつ、ポロリと答えた。
「中ニの時に捧げてから・・・ずっと・・・」
「・・・結構、早い方だね・・・」
「まあ、初めてが10歳だ、なんてのよりは遅いんだけどね・・・」
「そんなに綺麗だと・・・他の男たちが黙って無いねぇ?」
「でも、巽さんだけです・・・愛しているのは・・・」
「・・・じゃあ、いずれは子供も?」
「そうだね・・・今はまだ無理だけど・・・・・・巽さんの子を産んで、幸せにしてあげたいな・・・」
話して行く内に、晃は海豚に惹かれていった。 こんなに綺麗で可愛くて、一途で純粋・・・。 こんな女性に、晃はなりたかったのかもしれない。
「・・・今・・・寂しい?」
晃の台詞に海豚はビクッとした。 図星を射貫かれたと同時に、まさか自分を・・・?と警戒を強くしたのだ。
「オレも寂しいな・・・」
「?」
どうやら、抱く気はなかったようだ。 少なくとも、今のところは。
「オレ・・・恋人が三人いるんだ。 一人、女の子で残りが男。 数は多いけれど・・・遊びじゃない、真剣なんだ」
「まさか・・・」
「・・・察しの通り、3Pも4Pもしてる」
「パリダとかに掛かったことは?」
「なに?それ」
「梅毒スピロヘータ・・・愛称がパリダとかいうらしいです。 詳しいことは知らないけれど」
何が言いたいのか少し逡巡して・・・梅毒?・・・それで理解した。 変な事を言うなと苦笑って。
「・・・ああ、性病のことね。 大丈夫、ちゃんと身体洗ってからするし、ゴムも着けてるし・・・って、そっちは大丈夫なの?」
「似たようなものですよ」
「そっか・・・」
巽も、自分の家内を性病に冒す真似はしなかった。 第一、読みは『犯す』と同じだし。
「もし・・・巽先輩がいたら・・・抱かれたいの?」
海豚はこくりと頷く。
(抱かれたい。 抱き締められたい。 巽さんの胸の中で、私を滅茶苦茶にしてほしいよぉ・・・!)
海豚は自覚していなかったが、巽への想いは、この間の公園の一件以来、えも云われぬ性欲に襲われていた。 まあ、一ヶ月近くも間があったこともあるのだが・・・。
「オレが・・・代わりといっちゃなんだけど、抱こうか?」
海豚はその台詞に我に返ったように晃を見遣り、首を横に振った。
「嫌っ! 巽さんとがいいのぉ!」
ワガママな口調は可愛らしく、晃の劣情を沸かすに十二分だった。
「・・・可愛いなぁ・・・ほんとに」
晃は微笑み・・・立ち上がった。 その気になったら海豚とすればいいが、今は他の女子も起きてしまうだろうから止そう、と思ったのだ。 晃は洗面所に行こうとして、一旦振り返った。
「海豚ちゃんも、顔洗いに行く?」
「もう少し、眺めてるよ・・・」
「そ・・・」
晃は、再び言葉を投げ掛けた。
「やっぱ、綺麗だよ・・・海豚ちゃんって」
「巽さんに言って欲しいです・・・その台詞」
寂しそうな顔を窓に向ける姿も美しかった。 晃は瞳を細めて、部屋を後にした。
平穏無事に行事を終え数日たった、金曜日の宵口。 海豚は再び、巽の家に泊まりこむことになった。 巽からのお誘いとあっては、海豚も花の子ルンルン気分で(ぉぃ?)安アパートの扉を叩いた。 3、1、3の順の回数で、すぐに巽の声がした。
「アルファ」
「・・・ケンタウルス」
どっかで聞いたような合言葉を言うと、扉が開いた。
「いらっしゃい、海豚」
「お邪魔しますね」
可愛らしい笑顔が巽の瞳に映った。
「ハイ、差し入れです」
「サンキュ・・・」
実は冷蔵庫の中と懐が『もぬけの殻』で食糧難になってしまったので、海豚に救援物資の援助を願ったのである。 海豚も海豚で『泊めてくれなきゃ、契約不履行宣言だしますよ?』と条件を突き付けたので、巽は快く受け入れた。
「さて・・・料理作るの久しぶりだから、腕が鈍ってると思いますけど・・・」
「? 紗月姉貴の家で手伝ってたんじゃないのか?」
「・・・巽さんのためと営業用じゃ、差が出ちゃうんですよ」
・・・海豚は高校に入学する際、獅竜鳳の提案を受け入れていた。 渥美からでは交通が不便だから、紗月の家に居候すればいいよ、と。 紗月の方は「また、妹が増えるわね」と苦笑い、海豚の母の鯱子も「よろしくお願いします」と承諾していたので、海豚の返事如何で何時でも解除できた。 尤も
「巽さんと一緒の街で一緒の高校に通えるんですもの。 ありがたく、存知ます」と承諾したので、交渉成立した。 その際に言われた条件も受け入れて・・・。
「一つはあたしの家で家業を手伝うこと」
紗月の家は喫茶店である。 学生喫茶『月の虹』。 そこに、次女・春風、三女・火鳥、末女・桃花と暮らしていた。 春風は大学生、火鳥は高校二年、桃花は中学二年であり、店の手伝いをしている。
家業は学生喫茶店のウェイトレス兼シェフになること。 手伝いレベルで充分だと言うが、海豚の腕は実家で充分に培われていたので相応に美味しく、海豚自身も可愛いのでお客・・・特に男子客の人気は凄まじかった。 『海豚ちゃんファン倶楽部』なるものまで、本人の知らぬ間に設立された程である。 倶楽部の規律に「海豚ちゃんを泣かせない」と『会員No.0000[フォーゼロ]』の巽が作ったのは、言うまでもなかろう。
「一つ、巽君との色恋沙汰を振りまかないこと。 特に教員連中は五月蝿いからね・・・」
教員という生物は、自分のことを棚に上げて、生徒に校則で拘束するものだ。 とある学校の校則では「スカートは膝下5センチ以上あげないこと」とか「下着の色は白のみにする」などという女生徒には傍迷惑な代物がはびこっているそうな。 しかも止せばいいのに、わざわざ定規を手に計ったりスカートをめくって確認するので、遂に獅竜鳳に声が掛かったのだった。 結果、スカートの確認担当の教師は、いつかの下郎教師と同じ『社会的抹殺』という末期を歩み、校則も大幅に改善、女生徒に『勇者』と褒め称えられてしまっていた。 とにかく、もし、そういった教員にバレたら、まあ、只では済まないだろうことを、覚悟させた。
「最後に、巽君との『種まき本番』は卒業してから。 あとは性病に掛からない程度に、酷すぎない程度に、ね」
逆にいえば、懐妊率の低い安全日に種まきとか、アナル限定で、外出し限定、愛撫限定・・・とにかく、愛情を持って避妊することが重要だという。 無論、卒業後、ないしは自主退学した場合は、翌月から『種まき本番』が可能になる。 このことについて、海豚は・・・。
「実は、飛び級で進級するつもりなんです」
と漏らしていた。 海豚自身は少し不安げだったが、獅竜鳳や紗月、春風などは海豚の素質を見抜いていたので、相応の努力をすれば叶えられると励ましたのだった。 事実、最近の海豚の成績は目を見張るものがあり、苦手な数学も巽のお陰で克服しつつなっていた。
・・・さて、海豚は持ってきた食材を使って、得意の海鮮料理を作り始めた。 献立は、あさりの酒蒸しにしじみの味噌汁(どちらも、潮抜き済み)、アジの塩焼き、若布[ワカメ]と昆布[コンブ]の御浸しである。
「ん〜〜っ、これで腕が鈍るなんてあるかってくらい、美味しいよ!」
伊達に実家が民宿で、海豚が板前を務めていたワケではない。
「・・・しかし・・・」
「?」
巽は軽くこめかみを押さえて、溜め息を吐き出した。
「なんで、また・・・・・・裸エプロンなんだ?」
少し頬を朱くして微笑んだ。 エプロンは、彼女らしい簡潔な魚の柄の、青みのあるものだった。
「久しぶりに巽さんと二人っきりだから・・・したくって・・・」
ちなみに安全日だと告げると、巽は静かに箸を進めた。
「悪いけど、飯が優先だ。 おおよそ消化しきったら、相手してやるぜ」
「はい!」
海豚も箸を進める。 巽も流石に海豚をチラチラと見ていたが、なんとか情欲に耐え切って夕食を食べ終えた。
「ふ〜、満腹満腹ぅ・・・御馳走様だね」
「ふふっ、良かった・・・」
海豚は満面に微笑んだ。 この二人、殆ど新婚夫婦である。 その空気を、海豚も巽も楽しんでいた。 巽は身体を横たえる。 一般に牛になると言うが、横たえた方が胃の消化によい。 仰向けやうつ伏せは逆に消化に悪いらしいが。 海豚は巽の側に寄ってその頭を持つと、自分のひざに乗せた。 巽の髪を優しく撫でる。 そして、裸エプロンなのが、甘美な空気を醸し出す。
「巽さん・・・私、ずっと・・・寂しかったんです・・・・・・」
海豚は自分の心の内を吐露し出した。 巽以外の人間には、決して話せないことだ。 顔には出てしまうが。
「・・・修学旅行以来だもんな、二人っきりになったのって」
巽もそれを感じていた。 通りかかる北海道美少女や美女を見るうちに、海豚が恋しくなった。 しまいには他人の目を盗んで、トイレで手淫してしまったほどだった。 自分でも情けなくなる。
「海豚・・・」
巽の腹を優しく撫でていた海豚の手をとって、手の甲に口付けた。
「巽さん・・・」
その華麗な手は巽の唇をなぞった。 巽は悪戯っぽく、微笑んだ。
「おかわり、もらえるかな?」
「・・・はい」
巽は頭を上げ海豚に向く。 海豚はエプロンをたくし上げ、脚を広げて花弁を見せた。 巽だけの
名も無い花だ。
「いただきま〜す」
巽は海豚の脚の間に潜り込み、花びらを嘗める。 外側から・・・。
ぴちゃ・・・
「ひゃぅん・・・・・・はぁぁぁ・・・・」
既に少し濡れており、海豚は甘い息を吐いた。
「まあ、こんなカッコしてりゃ、濡れるわな・・・」
巽は一人合点し、花弁の中へと舌を進めた。
ぴゅる・・・・・・ちゅ・・・・・みゅる・・・・・・
「ああっ・・・・・・ひぅぅんっ・・・いい・・・」
海豚の蜜は濃さを増し、量も増えて行く。
「すげぇ、堰[せき]が決壊したみたいだぜ」
「ふぅんっぁ・・・はぁ・・・・・・巽さん・・・美味しいですか・・・?」
甘い声で訊く海豚に、巽は満足げに応えた。
「美味しいよ、すごく・・・・・・呑みきれないかも・・・」
「嬉しい・・・・・・でも、もっと出ちゃいますよ・・・」
「・・・じゃあ、殷[いん]の紂王[ちゅうおう]の真似でもするか」
酒池肉林の故事の元となった古代中国の王の名を上げて、巽は海豚の秘豆を転がした。
みょるるっ・・・ぴちゅ・・・・・・にゅね・・・
「ひゃいんっ・・・・・・はぁ、あああっ・・・んふぃ・・・・・いい・・・のぉぉぉぉ・・・・・」
甘い、甘い声で巽の髪を愛おしく撫でる。 巽はそれが嬉しくて、秘豆に強く吸いついた!
ちゅぅぅぅぅっ・・・!
「ひゃ、ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁんっっっ!!!」
・・・ぷしゃあぁぁぁ・・・・・・
軽く達し、溢れた潮を勢い良く吹いた。 海豚は悦楽と快感に震え、巽の元に倒れ掛かった。 慌てて、巽は身を起こし、海豚を支えた。
「はあ・・・はぁ・・・・・・ふぁぁ・・・・」
「大丈夫か?」
「あり・・がとう・・・」
ふと見詰め合う。
巽の瞳は、海豚と幾つも肌を重ねても澱[よど]みが無く、むしろ磨きが掛かっているほど、清らかで美しかった。 グレート・バリアリーフ周辺の大洋[わだつみ]のようである。
海豚の瞳は、寂しさに潤み、愛しさに輝いていた。 巽に然りで淀[よど]みが無く、透明度の高い湖のようである。 10メートル下の湖底に沈んだ一円玉がはっきりと見えるほどだ。
自然と二人の距離が零になる・・・かと思われた。
「・・・また、邪魔が入ったな・・・」
「?」
巽は苦味と嫌みと忌みを混ぜて呟くと、海豚の額に口付けた。
「ちょっと、ごめんな・・・」
残念そうに海豚に言うと、彼女も無念そうに項垂れた。 すくっと立ち上がると、巽は一瞬で姿を消した。 次に現れたのは、ベランダの、それも外側だった。 翼を展開させ、浮遊している。
「おい、ここだ」
巽は既に刀を抜き、ベランダに潜んでいた『彼女』の首筋に刃を当てた。
「ば、バレた・・・?」
晃はバツ悪そうに笑うが、巽の瞳には敵わなかった。
「ったく・・・最近から、ずっとこれだ。 第一、ここは八階だぞ?!」
「生憎と、知り合いに天使がいてね」
「そいつを呼んで来い。 食べてやるから」
「あの・・・使徒じゃないんだけど」
「海豚の邪魔するヤツは、天使だろうと使徒だろうと悪魔だろうと関係ぇない!」
晃はだんだん恐れ多くなってしまい、戸惑っていた。
「とにかく、失せろ。 これ以上、海豚に寂しい思いをさせたくない」
巽の低く静かな怒号は、晃に決意をもたらしてしまった。
「・・・じゃあ、一つ条件、呑んでくれる?」
「じ、条件・・・だと?」
晃は強く頷いた。
「海豚ちゃんと一緒に、抱いて」
「断る」
即決すること、コンマ001秒。 「て」と「断る」が重なった。
「じゃ、ここで慰めてる」
「くっ・・・」
巽は苦虫を潰した。 出来ることなら、海豚と二人っきりのほうが良いに決まっている。 しかし、邪魔者はそれに混ぜろと良い、断っても側で自慰に耽ると言う。 ・・・こうなったら・・・・・・!
「とりあえず、勝手にしろ」
再び転移して、海豚の元に戻る。 既に刀は鞘に収められ、消えていた。
「悪い、非常事態が発生した」
「・・・もしかして、真崎さんですか?」
「御名答」
海豚を抱き上げ、お姫様抱っこすると・・・!
「転移術[マロール]・・・」
再び、いずこかへと去って行った。
「・・・あれ? 何処、行ったの?」
晃一人を残したまま・・・・・・。
出て来たところは・・・安アパートの上空200メートルだった。
「・・・寒いかい?」
なんせ、梅雨時で裸エプロンのままである。 夜はまだ肌寒い。
「だ・・・大丈夫・・・・・・ックチュンッ!」
・・・くしゃみまで可愛らしかった。
「さて・・・続きは、どこでしたい?」
海豚は少し逡巡して・・・答えた。
「あの・・・林の中は?」
「林・・・っつうてもな・・・・・・」
そういえば、この間は白川公園でやった・・・とすると。
「鶴舞公園でするか?」
「はい・・・」
巽に寄り添うように言うと、ゆっくりと降下して行った。 程なくして、公園の上空に到着。
「不可視術[マゾピック]」
一時的ながら透明人間と化してから、着地した。
「さて・・・と。 盗撮されないようにしなきゃな・・・」
名古屋は、盗撮や盗聴の多発地帯である。 自分は大丈夫であろうと考えている故もあり、それを生業とするものにとっては恰好の穴場でもある。 特に、深夜の公園とラブホテルは。 巽は一旦「魔盾崩呪[パリオス]」で術を解除し、体内のベーレムでジャミングをかける。 盗聴機とデジカメには電磁波を、カメラにはエックス線を。 これで無効化できるはずだ。 二人は公園のとある一角に着いた。
「巽さん・・・」
と、海豚は奇襲をかけた。 巽は少し驚きつつも、海豚の唇を受け入れた。 ほどなく、唇が離れる。
「なんか最近、青姦ばっかだよな・・・」
「でも、巽さんと二人だけなら、どこだっていいです・・・・・・」
海豚は尚も巽を求めた。 貪るように巽の唇と重ねる。 重ね、貪り、舌を絡め、唾液を飲み、歯と歯茎を撫でる。
「ふぁむ・・・・・・ふぁ・・・ん・・・っんふぅ・・・・・・!」
今までの寂しさを払拭させるように、ヴェーゼは厚く、熱く、解けなくなるまで、舌を絡めとる。
「い・・・るかぁ・・・・んっ・・・!」
巽もそれに答えつつ、海豚の腰を撫でる。 露出したままの臀部を掻き回すように触れる。
「ふぅぅんっ!・・・・むぅぅ・・・・ふぁぁぁ・・・・」
後ろ手に臀部から、秘所に触れる。 先刻のこともあるが、グジョグジョだ。
「おもらしでも、したのか? ほれ」
蜜に濡れた手を海豚の前に差し出すと、彼女は嬉しそうにしゃぶりついた。
「私・・・・・・こんなに、出してるんだぁ〜・・・」
親指に、人差し指に、指の間まで自分の蜜を舐め取る。
「・・・ねえ・・・・巽さん」
「ん? なんだい?」
海豚は少し不安そうに訊ねた。
「私・・・こんなにエッチなのに・・・それでも、私を愛してくれますか?」
不安に潤んだ瞳は巽を見つめ、蜜に濡れていた手を頬に当てた。
「海豚・・・」
巽は海豚を抱き締めた。 強く、もっと強く、砕けてしまうくらいに強く、されど優しく・・・。
「言ったろ・・・君と出会えなかったら、俺は・・・・・・だから・・・!」
「巽さん・・・」
巽はそっと、耳元で囁いた。
「愛してる。 君がどんなに淫らでも、それが俺の前なら・・・許せるから。 たとい、ほかの男に腰を振ってしまっても、俺は君を愛してる。 ほかの奴には、絶対に渡さない。 守りきってみせる。 だから・・・君も、俺のことを・・・・・・愛して欲しいよ・・・」
「私も・・・ずっと、愛してます。 あなたが他の女の娘に笑顔を向けても、我慢しますから。 だから、ずっと・・・愛してます。 好き・・・いっぱい、いっぱい、いっ〜〜〜ぱい、大好き・・・!」
「海豚・・・」
もう、幾度目かのキスを交わす。 飽きることなどない、貪りのキス。
「よお・・・熱熱[ラヴラヴ]じゃねぇか・・・」
「?!」
と、いかにも柄の悪い男が現れた。 巽は苦々しく舌打ちした。
「今日は厄日で厄夜だな・・・」
どうして、海豚の邪魔をする?! 巽は胸中で激怒したが、さらに激怒することが起きた。
「ほお・・・こいつぁ、上玉だな・・・」
「全くだぜ」
「回すには足りないかもな」
「なぁに、他からかっぱらえばいいだけだ」
周りから、ウジャウジャと群れ集う。 陰惨で剣呑な目付きの連中ばかりだ。
「嫌ぁ・・・」
海豚は恥ずかしげに、巽に抱き着いた。 裸エプロンは巽にだけに見せられるが、他の男たちには絶対に見せたくなかった。 そう、絶対に・・・!!!
「裸エプロンとは・・・また、そそられるねぇ〜・・・・・・のう、あんちゃん?」
ピクリッ!
巽のこめかみが引きつった。 だが・・・ケンカをする気は、毛頭なかった。 海豚の気持ちが優先だ!
「フッ・・・・・・生憎と、今宵は家内の相手だけで手一杯でな、おまえらの楽しみなんぞに付き合うヒマはないんだ」
「なんだと!?」
男たちは怒号するが、巽の瞳に慄[おのの]いた。 同時に現れた、龍の翼にも。
「俺は『怪獣』だ。 貴様らに敵うはずがなかろう。 なんなら、この場でのされたいか?!」
・・・できれば、のしたくはない。 海豚は・・・そういうのが嫌いだから。 巽の腕に護られている海豚は・・・・・・恥ずかしさで既に『限界』に達した。
「も、もう・・・だめ・・・・・・だめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん・・・!」
巽はヤバイと感じて、咄嗟に海豚を抱き上げた、同時に。
ぷしゃぁぁぁ・・・・・・
「もう・・・いやぁぁぁ・・・・・・・・・」
海豚の股間から溢れた黄色い熱水は、巽の服に吸われて行く。 服の裾に、ズボンに、巽まで失禁してしまったように染みができる。 海豚の羞恥の涙も、巽の胸元に消えて、染みになる。 巽は怒ることなく、ただ海豚の髪を優しく撫でていた。 しかし、男たちは卑猥に笑う。
「へへっ、漏らしてやがんの」
「見られて『おもらし』か! エッチだな、じょーちゃん」
海豚は・・・ついに泣き出した。 巽は、殺意と殺気を辺り一面に振りまいた。
「もう、これ以上近づくな」
「嫌だ、と言ったら?」
卑猥に笑う男たちに、巽は行動で示した。
「ベーレム・ビット・・・」
幾つもの紅い六芒星の海星[ひとで]が、空気中に浮遊する。 そして、巽の一声で、乱れ飛ぶ!
「毒晶嵐舞陣[ベーレム・ストリーム]・・・!!」
ベーレムが男たちに襲い掛かる! 股間に、臀部に、ベーレムの酸が降り注ぐ!!!
「ぎゃあぁぁぁぁ!!!!!?」
「いぢぃぃぃぃ!!」
「いでいでいでいでいでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
・・・男たちが泣き叫ぶ中、巽は既に別のところに転移した。 男たちの阿鼻叫喚を聞かせたくなかったのだが、彼らはきっかり一分間もそれを味わうことになった。 海豚を泣かせただけで、巽には充分過ぎるほど、許せなかったのだ。
次に現れたのは、名古屋港のある一角。 ここも、ある種の青姦スポットの一つである。 危険度もかなり高いのだが。 以前、ここでカップルが族連中(暴走族)に殺されたことがあったからだ。 巽は茂みに隠れて、ベーレムでジャミングと結界を張った。
「海豚・・・大丈夫、もう、いなくなったから・・・」
「・・・ぅぅ・・・ひくっ・・・ぐすぅっ・・・・・・」
海豚は未[いま]だに嗚咽[おえつ]を漏らしていた。 かなり、精神的に疲弊していたようだ。
「・・・もう、やめておくか?」
「いやぁあっ!」
海豚は首を振った。 繋がりたい、繋がっていたい、今すぐに!
「わかったよ・・・」
巽は嫌な顔を一つもせず、海豚に口付けた。 海豚は嬉しそうに舌を絡め、吸いつく。
「海豚・・・俺のも、いいかな?」
「はい!」
すっかり機嫌がよくなり、満面の笑顔で答える。 涙の跡が、心なしに痛ましかった。 海豚は巽のズボンのチャックを下ろし、燃えと萎えを繰り返したサオを取り出すと、愛おしげに頬擦りした。
「ふふっ・・・巽さ〜ん・・・・・・・・・・ふぁむっ・・・」
迷いも躊躇もヘッタクレもなく、サオを口に含む。 唾液も、それが美味であるかのように零れ滴る。 時々、亀頭をチロリッと舐め上目で巽を見る仕草は、悩ましいほどに可愛い。 巽はその美しく可愛らしい髪を撫でると、海豚は嬉しそうに鳴いた。
「ふぅんっっっ・・・・・・わむ・・・・・・ぅぅっ」
ちゅる・・・じゅぷ・・・・・・ちょり・・・
「海豚・・・・・・すげぇ巧い・・・・・・くっ・・・・」
不覚にも苦悶してしまうほど、海豚の舌技は巧くなっていた。
「巽・・・さんの・・・・・・すご〜く・・・美味し・・・♪」
ちょるる・・・・・みゅ・・・・・・ぴちゅ・・・・・・
「海豚・・・・・・もう・・・出るっ・・・!」
「ちょ〜だい・・・いっぱい、いっぱ〜い・・・ふぁぁ・・・ちょうだいぃぃ!・・・・・・あむっ」
「・・・・・・・・・・・・うっ」
巽が小さくうめくと、白濁の種が勢い良く爆ぜた!
びゅるびゅるびゅるるるるる・・・・・っ!
「ふぁぁぁぁぁぁぁっ・・・・・・」
海豚の瞳は恍惚として嬉しそうだった。 顔面に髪に口の中に鼻の中に、種が落ちる。
「美味しい・・・・・・美味しいのぉぉぉ・・・・・・」
顔に掛かった白い種をすくって舐め取る。 巽も髪や頬に付いた自分の種を舐め取って行く。
「後で、髪、洗ってやるからね」
「うんっ♪」
本当に嬉しそうに頷くと、海豚は巽の上にまたがった。
「巽さん・・・私、もう・・・」
「ああ・・・おいで、海豚・・・」
ゆっくりと腰を落とし、巽の亀頭に海豚の秘花がキスする。
「ひゃうぅぅぅぅぅんっ・・・・・・」
それだけでも達してしまいそうな声を上げた。 その声も、また可愛い。
「はぁ・・・ぁぁぁ・・・」
ようやく、しかし、滑らかにすんなりと巽を全部納めると、お互い抱き合ってキスした。
「・・・さ、動くよ・・・」
「うん・・・・・・♪」
ぐじゅ・・・・・・
「はぁんっ・・・・・・はぁ・・・・ふぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・」
それは、まさに獣の盛り声。 陰部からの淫らな音は、瑞々しく響き渡る。 すぐ近くの埠頭の波音と重なって。
じゅ・・・・・・じゅる・・・・・ぐじゃ・・・・・じゅぷぅぅぅ・・・・・・・
「はぁ・・・・ねぇ・・・気持ち・・・・・・いい?」
「ああっ・・・気持ちいいぜ・・・っ・・・・」
ぷにゅ・・・にゅぷ・・・・
「はぁ、ああ・・・・はぁん・・・・・・」
腰のストロークは早くなって行き、喘ぎも途切れ途切れになった。
じゅ、じゅぷ、じゃぷ、じゅぴゅ・・・
「はぁ、ふぁ、あぁぁ、あぅぅぅぅぅんっ・・・・」
「い・・・海豚・・・もう・・・!」
巽は既に限界に近づきつつあった。 そして・・・
「たつ・・・み・・・さんっ・・・イクのぉぉ・・・・・・イクぅぅぅぅぅぅぅんっっっっ!!!!」
「海豚ぁぁぁっ!」
どぴゅっ、どぉぷゅっ、どぅぷゅるぅぅぅぅっっっ!
種が海豚の中で爆ぜた。 安全日である故に創生されないが、久しぶりの中出しで海豚は歓喜に震えた。
「あああっ・・・・・・巽さん・・・・・・好き・・・・・いっぱい・・・大好きぃぃぃぃ・・・」
海豚は種を受け止めて、満足げに巽を抱き締めた。
「海豚・・・好きだ・・・ずっと・・・君だけを・・・・・・・愛してるよ・・・・・・」
巽は自分を受け止めてくれている海豚に、感謝の気持ちで抱き締める。 悦楽の余韻に浸りつつ、海豚は、済まなそうに呟いた。
「巽さん・・・・・・こめんなさい・・・」
「? なんだよ、藪[やぶ]から棒に?」
「その・・・夢のことですけど・・・ちょっと、問題が発生しちゃって・・・」
身体を繋げたまま夢の話をするというのは奇異だが、巽は優しく促した。
「問題って・・・?」
「その・・・この間、友達とカラオケに行ったんです・・・」
「そっか・・・」
誘ってくれなかったのは残念だが、多分、巽が剣道の春季大会の練習に励んでいたからであろう。 邪魔をしてはいけないと思ったのだ。
「それで、何、歌ってきたんだ?」
「マミ姉の『Believe』です・・・リバティーじゃないほうの」
ラジオの有名ボイスジョッキーの愛称と歌の題名をあげると、巽は合点した。
「旧の方ね。 機種が大体、予想できるけど」
「それを歌ったら、綺麗な声だねって誉めてくれたんです・・・」
「よかったね・・・誉めてくれたんだ・・・俺も礼くらいは言うべきかな、その娘に」
髪を撫で撫でして、海豚は嬉しそうに目を細めた。
「でもね、その娘が私の名義で・・・応募しちゃったんです」
「応募・・・?・・・・・・って、まさか?!」
「はい・・・その、歌手になるオーディションに・・・一次審査で通っちゃったんです」
「なんとねぇ・・・」
・・・確か、歌手にならなくてもいいから、俺の側で歌っていたい・・・と言っていたな・・・。 それが夢だったのだが、その前は歌手になること自体が夢だった。
「そっか・・・もし、本当に歌手になったら、あんまり俺とは逢えなくなるから・・・・・・」
「はい・・・」
海豚が力無く頷いてしまったので、巽は知識を絞った。
「・・・でも、海豚の当初の夢に、一歩前進する訳だけど・・・」
「でも、歌手になっちゃったら・・・巽さんに逢えなくなっちゃう・・・」
「そうだな・・・特に最初のころは、新人だので騒がれて、少し落ち着くかな?っと思った矢先に、パパラッチとストーカーがもれなくオマケで付いて来るもんなぁ・・・。 人気が出れば、それは確実だし」
「それに・・・巽さんの夢の邪魔になるんじゃないかって・・・」
「なるほどね・・・」
もし、俺が海豚の応援に回っていたら、大学に通って海洋生物学を習おうにも、無理が出る。 そもそも、大学に合格できるかどうかが・・・か。
海豚に心配されて、少し巽は嬉しかった。 だけど・・・
「・・・じゃあ、こうしよう」
巽は一つの提案を出した。
「海豚は、とりあえず、行くところまで行けばいい。 つまづいても前に転べば、それでも一歩は進んでいるんだから・・・」
「巽さんは、どうするの・・・?」
「俺も行くところまで行く。 大学に落ちるか、大学院に落ちるか、博士号取得で落ちるかはわからないけど。 その間、また、文通しようぜ」
「・・・!」
文通・・・そうだ、それがあったんだ・・・! 海豚の瞳はパッと明るくなった。
「そして、俺が大学に落ちたら、そのときは海豚のマネージャーか、ユニットの片割れだ。 伊達にギターを弾いていたわけじゃないからな。 そして海豚は・・・俺の嫁さんになってくれないか? 大学に来るかどうかは自由だよ。 学生結婚すればいいんだからな・・・」
「巽さん・・・・・・!」
嫁になってくれ・・・少し間接的だが、巽からのプロポーズに海豚は歓喜の涙を流した。
「はい・・・!」
・・・でも、巽は少し逡巡して・・・矛盾を見つけた。
「・・・あ、どちらも、駄目だったときと成功したときのこと、考えてねぇや・・・」
「・・・どうしますか?」
再び考え込み・・・未だに海豚と繋がったまま、考え事とは器用だが・・・妥当案を提示した。
「まあ、成功したらすれ違いは確実だから、文通は決まりだな。 なんなら、交換日記でもいいかな? 駄目だったら・・・でも、あきらめずに何度でもトライだ!」
「そして・・・私が歌手になって、巽さんが博士さんになるでしょ。 そしたら・・・あなたの子を産む機会が・・・」
「むむっ・・・それか・・・」
最終的には、家族そろって海外の海や湖沼を調べまわって、運が良ければネッシーやオゴポコたちに逢って井戸端会議でもして・・・、海豚は巽との子を育てながら、歌を歌いつづけたい。 巽は海豚との子のために、少しでもこの星を清めて行きたい。 それが・・・二人の夢だ。
「・・・とりあえず、受けてみます、オーディション。 それが駄目でも、成功しても、あなたのいる大学に行きます。 私も、この星の生命たちのことを、知りたいから・・・」
「うん・・・俺も大学に受かって見せるよ。 でも、時々は真似事でいいからマネージャーをしたいけどな・・・。 とにかく、適当に頑張って、受けてみるよ」
・・・こうして、自分たちの夢を話していると、本当に幸せだと感じられるから、不思議だ。 そう思いながら、巽の家に帰って行った・・・・・・・・・・。
了
「海豚物語(高校編):B面の第一話『ラブラブ!(自宅で)ソープランド』」へ
巽 「というより、座談会なんだよな、これ」
作 「そうだな。 ・・・ところで、海豚ちゃんは?」
巽 「恥ずかしいんで、欠席するってさ」
作 「・・・まあ、今回はかなり、悪運が無かったもんな」
巽 「書いたくせに、身も蓋も無いことをいうなよ・・・俺が居たからともかく・・・」
作 「ま、とにかく、後で謝っとくよ。 でないと、海神あたりをくらいそうだし」
巽 「ほう、わかってるじゃないか・・・」
作 「謝るついでに、次回は『ばりラヴ』にしてあるし」
巽 「まあ、とりあえず、許すとしよう。 ところで、リクエスト受けたんだってな?」
作 「ああ、今度は二次もので、月天様だよ」
巽 「どんなだ?」
作 「七梨夫妻の甘甘、愛愛[ラヴラヴ]の純愛もの。 青星五つ狙いです」
巽 「・・・でも、あの二人まだ中学生だぜ? 第一、太助の若旦那は・・・」
作 「ある程度甲斐性が出来た大人になって、シャオ夫人と結婚、初夜に契りを・・・のシチュだから、特に問題は無いはずです」
巽 「まさかと思うけど・・・暗月ちゃん(オリ・キャラ)の実況付き・・・なんて、やるなよ?」
作 「は、ははっ・・・まさか・・・ねぇ? (←実はやろうとしていた)」
暗月 「ま、いいですけれど。 眺めて慰めるだけですから」
作・巽 「って、うわぁあぁ?!」
暗月 「そんなに驚く必要はないでしょう? わたくしはバイド。 時や次元を移動できて、当然なんですよ」
作 「そして、怪獣の遺伝子も入った、シャオ夫人の複製精霊。 それが、設定」
巽 「だけど、慰めるったって、そんな相手って・・・?」
暗月 「それは・・・(ぽっ)」
作・巽 「ぽっ?!」
暗月 「黙秘権を行使します」
作 「居たかなぁ?そんなキャラ」
巽 「・・・あ、ちなみに、バイドというのは『R−TYPE』シリーズの敵種族のことだよ。 (一応、ちゃんとした解説)」
暗月 「・・・そろそろ、お時間ですが?」
作 「では、次回まで!」
巽 「感想、待ってるよ!」
暗月 「それでは、みなさん・・・」
三人 「再見[サイチェン]!」
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