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―01
「千式紅炎球ッ!!」
「サンダーボルトピッチングッ!!」
片方は炎を、もう片方は雷を纏った二つの直球が、ハイスピードで風を切り、ぶつかりあう。
炎と雷がぶつかり合い、まるでそこに小さな太陽が出現したかのような眩しい光、スピーカーから放たれる耳を塞ぎたくなるような重低音が起こる。それはまるで激しい爆発をスローモーションで感じているようだ。
だが、球を投げた二人の少女は決してそこから視線を離そうとしない。
「……」
「……」
勝負の行方を一瞬たりとも見逃すまいと、瞬きすらすることなく、真剣な眼差しで見続けている。
夜の闇の中、赤い光が一人の少女を照らし出す。赤毛のポニーテール。上はセーラー服の印象があり、ズボンはキュロットになっている、ピンクで統一された野球のユニフォームを着ている。
夜の闇の中、黄色の閃光が一人の少女を照らし出す。ボサボサの整えられていない金髪のショートカットの、まるで少年のような少女。肩の辺りが膨らんでいるブラウスの上にチョッキを着込んでいる高校の制服を纏っていた。
二人の外観や持つ印象はまるで違う。しかし、自分たちが投げた球を見つめる瞳から感じられる強い意志は、二人とも全く同じ所から来ていると思えるほどにそっくりだった。
それは、勝負に対する拘り――強い負けん気から来ているようだ。
やがて、二つの球より炎と雷が消える。互いの異常なほどの球の回転数が互いを相殺しあい、本来の魔球としての威力を無効化させているのだ。だが、今度は変わりに大気を切り裂くような甲高い音が発生する。
――そして。勝負は着いた。
―02
片方の球が、見た目でも分かるほどに回転が無くなっていき弾かれる。そして残った球は片方の少女の頬を掠り、木の幹にぶつかりのめり込む。摩擦で煙が起こり、やがて球は回転がおさまる。
――バカな……! こんなに重い球を投げられるなんて……!
自分の頬に流れる血にも気がつかぬまま、驚いた表情で木の幹にのめり込んだ球を見つめる。
「滝沢さん……、私の勝ちね。ちゃんと女子野球部に入るって約束、守ってね」
赤毛のポニーテールの少女は、息を切らしながらも気丈にそう言った。その口調には一点の曇りもない純粋さがあった。
それに金髪のショートカットの少女――滝沢馨[かおる]は、先ほどの驚きはどこへやら、思わず笑みを浮かべてしまう。そしてこう思ってしまう。
――なるほど。これじゃぁ勝てないわけだな。
と。
滝沢馨はしばらく考えるように顔を俯かせすぐに上げる。そこには新しい何かに挑戦するような不敵な笑みが浮かべられていた。
「……いいさ。付き合ってやるよ、オマエらの言う『楽しい野球』ってやつにさ」
髪を掻き分けながら、呟くように頬を赤くしながらそう言った。
「で、オマエってなんていう名前だっけ?」
「私の名前は野々原千晶。よろしくね」
「ああ、よろしくな」
そして二人は互いに手を出し合い握手をした。
――しかし世の中ってのは広いな。こんな球を投げられるやつがいるなんてな……。
そこまで思い、滝沢馨はあることに気がつく。そして、球がめり込んだままの木の幹を見る。
――……ひょっとして……
自分の心の中に湧き上がる不安。それを自覚する滝沢馨。彼女はそれを振り払うように軽く首を左右に振る。
――いや、これほどのヤツがそんなわけないよな……
そう考えるものの、しかし心の中にわき上がる不安を完全に消し去ることはできなかった。
―03
第二理科室。その下にセロテープで張られた紙に『浅井真弓研究所』と書かれている、なんだか凄く怪しい所に一人の少女が立っていた。
眼鏡をかけた黒髪のストレートロングの大人しい印象のある少女だ。彼女は何の迷いもなく、その扉をノックする。
「浅井さん、泉だけど……」
「お、早かったね。開いてるから入ってー」
中からの応えに牧野泉は軽く頷き、扉を開き中に入った。中には二人の少女がコンピュータのディスプレイを前に座っていた。
制服の上に白衣を着たショートボブの眼鏡をかけた少女と、羽織袴を着た切れ長の瞳をした剣士という印象のある少女。
意外な顔の組み合わせに一瞬、牧野泉は驚くもののすぐに用件を思い出し聞く。
「で、話って何なの? ポジション決め? それとも練習メニュー作り?」
「いんや、その前にどうしても話しておかなきゃならないことがあってさ。しかし滝沢さんと林さんにちょっと確認してからって思ったんだけど……来るの遅いな、あの二人」
白衣の少女にてこの第二理科室の主、浅井真弓は言った。
「話しておきたいこと? 確認って……どういうこと?」
「……千晶殿に関することだ」
牧野泉の戸惑いの疑問に羽織袴の少女――須永知美は言いにくそうに、顔を伏せながらそう呟いた。
「千晶のこと……?」
牧野泉は、二人が何を言いたいのか分からず混乱しきった表情で、須永知美の言葉をそのまま返していた。
続
うわっ、長くなりすぎッ!! 本当の予定ならばこの一編だけで序章を終わらすつもりだったんですけど、書きたいことが増えてしまって結局前後編となってしまいました。しかし、このままだったらもしかしたら前中後編になっちまうかもしれません。
とりあえず、これはメディアワークス刊の中野友貴さんのコミック版をベースに書いとりますので、多分これ知らない人は混乱すること間違いなしでしょう。しかし、これのための解説編はストーリーの構成上書けませんでした。ゴメンなさい。
一応今後の展開としては、千晶と泉のレズネタで行きます。プロットはすでに作ってありますが、そのとおりに展開できるかどうかは謎(自分で言うなッ!)。
ちなみに、最初はゲーム版をベースにした陵辱奴隷ものをというコンセプトだったんですが、途中で挫折しました。
急いで書き終わして本編のHシーン(早く書きたいんですよ、マジで)に突入しますんでどうぞご容赦のほどを。
でわでわ、M.I.A.でした〜。
今週中には後編(もしくは中編)を間違いなくお届けしますので〜。