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Memories On
フラテルニティ/文


 その日も、白く輝く丸い月が、夜空にその存在を主張していた。

 

 月明かりの下の海岸線、そっと手をつないで足並みを揃える、一組の年若い男女の姿。

 私立、浜咲学園の制服にその身を包み、少年は穏やかな笑みを、傍らに寄り添う少女へと向けていた。

 それは、全校生徒が見守る中、人目もはばからない白昼の大告白劇によって、図らずも学校中の有名人となってしまった究極の純愛カップル・・・・・・伊波健と白河ほたるの姿だった。

 

 

 

 

 鉄製の大きな門を軋ませながら、ぼくは門の内側へとほたるを促す。

 すると、一匹の白い子犬がパタパタと尻尾を振りながら駆け寄ってきて、そのままほたるに飛びついた。

 「トモヤァ〜♪ 会いたかったよぉ〜」

 一方のほたるも嬉しそうに、しゃがみ込んでその相手をする。トモヤは、このアパートの同居人である信くんが入居と同時に連れてきた、彼の言うところの「相棒」であるらしい。

 またひとまわり大きくなったトモヤを、いまだに子犬と称するのは、やはり不適当だろうか。

 ぼくはトモヤとの再会に夢中になっているほたるを見やり、何気なく視線を建物の方へと移したまま、ぼんやりと思いを巡らせていた。

 ・・・朝凪荘・・・。

 ぼくが親元を離れ――正確には、転勤により親が離れていったのだが――、去年の秋から一人暮らしをしている古いアパート。

 思えばここに来てから本当にいろいろなことがあった。良くも悪くも、それらはみな思い出深いものだ。

 そして今現在の入居者は、ぼくを含めた無精者の男二人・・・。荒れ放題の庭を一瞥して、ぼくは思わず苦笑した。

 軽く頭を振って視線を戻すと、ほたるはまだトモヤとじゃれあっているようだった。

 久しぶりにほたるがウチに泊まっていくことになって、ぼくも少なからず浮かれているのかもしれない。考えてみれば、夏休み以来のことだ。

 そういえば、あの日も満月だったな・・・・・・。

 ふと、クスノキの梢を鳴らせた生ぬるい風が、爽やかな香りを残して頬や首筋を撫でるように流れていった。

 

 

 

 

 205号室。

 朝凪荘の二階、西の端に位置するぼくの部屋。

 ぼくとほたるはあの後、部屋に荷物を置いて近くの銭湯へ行き、その帰りがけに夕食も済ませてきた。

 今は部屋でテレビを見ながら、くつろいでいる状態だ。

 さして面白いわけでもないバラエティ番組を見るともなしに眺めながら、ぼくはこれからのことを考えていた。

 あとは、このまま寝るだけ・・・・・・なんてことは、ないよな。

 ほたるだって、一人暮らしの彼氏の部屋に泊まりに来るということが、どういうことだか分からないはずもない。

 正直、これまでにほたるとそういう行為に及んだことが、ないわけではなかった。けれどもそれが、彼女のための、真の意味での誠実な行動であったかといえば、それはきっと違う。

 ぼくとほたるは、付き合っているから―――。

 その程度の理由で、ほたるを愛していると、一生この手で守っていけると言い切るだけの自信もないうちに、ぼくはただひたすらに流され続けていたのだ。

 彼女と体を重ねることは単純に心地よいものであったし、また、ほたる自身もそれを望んでいたから。

 そんな虚しい言い訳をしながら彼女を抱いた分だけ、ぼくは彼女の真摯な想いをないがしろにしてきたのだ。

 ぼくは二度と、そうして彼女を傷つけたくはなかった。

 隣には、手を伸ばせば届く距離に、部屋着姿のほたるがいる―――。

 ここへ来て最後の一歩が踏み出せず、ぼくはいつしか泥沼のような物思いに沈んでいた・・・・・・。

 

 

 

 「ほ、ほたる? 何やってるんだよ!?」

 そんなぼくを現実に引き戻したのは、ほたるの突拍子もない行動だった。

 何か股間に違和感のようなものを感じたと思ったら、いつのまにかぼくの足元にまで移動していたほたるが、ちょうどジッパーを下ろしたジーンズを脱がしにかかっていたところだった。

 「ふふ、今日はぁ〜・・・・・・ほたるがしてあげるね♪」

 笑顔でそんなことを言いながら、トランクスの中から逸物を取り出そうとする。

 ぼくは一瞬、ほたるが何を言わんとしているのかが分からなかった。

 「え!? い、いいよ・・・。そんなことしてくれなくても」

 自然と、動悸が激しくなる。

 ぼくは慌ててそれを制止しようとしたのだけれど、ほたるのなめらかな指の腹の感触に刺激され、肉棒はぼくの意に反してむくむくとその大きさを増していった。

 (・・・・・・って、何を考えてるんだよ!? ほたる!)

 「もぅ〜、相変わらず素直じゃないなぁ・・・。ほたるがしてあげるって言ってるんだから、健ちゃんは黙って身を任せてればいいの!」

 語気を強めながら、手にした肉棒をごしごしとしごきだすほたる。

 普段はピアノの鍵盤の上を舞い、美しい旋律を紡ぎ出すその白い指で。

 「身を任せるって・・・・・・ちょ、ちょっと、ほたる・・・!」

 「まぁ、いいから、いいから♪」

 このときのほたるは、何だか不自然に思えるほど、いやに積極的だった。

 そしてぼくは、そんな思いもよらない突然のほたるの行動と、強引さの前に、どこにも抵抗の余地がないことを悟らざるを得なかった。

 有無を言わさず上下する、繊細で、それでいて力強いほたるの指使いに、ぼくの下半身は正直に反応し、ドッと血液を集めてしまう。

 そうして流されるままにイニシアチブを奪われたぼくは、ただほたると、その与える快感の波に翻弄されるだけ以外の道を失ってしまっていた。

 ほたるは緊張した面持ちで、両手でくるんだペニスを凝視していたかと思うと、やがて決心したように顔を近づけていく。

 ぱくっ。

 ほたるが口を丸めて、亀頭部分を咥えこむ。

 「う・・・っ!」

 肉棒が温かな口腔粘膜の感触に包まれた瞬間、全身の感覚全てが股間に集約されたような、甘く痺れるような快感が突き抜けた。

 ちらりと、ぼくの様子を窺おうと視線を上げたほたると、期せずして目が合った。

 れろっ、るりっ・・・・・・と狭い口内で蠢く舌先が、否が応でも敏感な部分を刺激する。

 稚拙な動きではあったが、それ以上に、自分の股間に顔を埋めて奉仕する最愛の恋人の姿に、ぼくは昂奮しきっていた。

 「ほ、ほたる・・・もう・・・」

 早くも限界が訪れたことを知らせ、ほたるの頭を引き離そうと、両手をかけたところまでは良かったのだが・・・・・・。

 ちうっ、ずづっ・・・・・・と鈴口を吸いたてられ、ぼくは思わずその快感にのけぞった。

 気が付けば、ほたるの頭をより深く引きつけるようにして、ぼくは射精してしまっていた。

 どくっ、どく、どくっ・・・・・・。

 「んんっ、んむぅ〜〜っ・・・・・・!」

 深くのめりこんだと思いきや、突如として喉奥で爆ぜた肉塊に、目を白黒させるほたる。

 慌てて逸物を引き抜くと、ほたるの唾液と混ざって白い糸を引いた。

 ほたるはちょっと迷ってから、小さく喉を鳴らして、口内に溢れる精液をこくこくと少しずつ嚥下していく。

 ようやく全てを胃に送り込んだほたるは、こほこほと軽く咳き込んで、抗議するように目線だけでぼくを見上げてくる。

 

 「もぉっ・・・・・・健ちゃんってどうしてそう、早いのぉ?」

 「だって、今のは、ほたるが・・・・・・」

 ぼくはいささか傷つきながら、反論するための言葉を探していた。

 まさか、ほたるが・・・・・・そんなことをしてくれるなんて、思ってなかったから・・・。

 「―――あっ!」

 やがて何かを思いついたのか、ほたるが短く声を上げた。

 「―――もしかして、昂奮しちゃった?」

 嬉しそうに、身を乗り出して訊いてくるほたる。

 その瞳に、いたずらっぽい笑みが浮かんでいるのが分かった。

 「ち、ちがうよ、そんなこと・・・・・・」

 「きゃはっ♪ あせってる、あせってるぅ〜! 図星なんだ?」

 確かにそれは図星だったのだけれど、素直にそう認めてしまうのも、それはそれで何だか悔しいような気がした。

 技術云々の話ではなく、ただほたるにされた・・・・・・というだけで、あっけなく達してしまった自分が無性に情けない。

 「昂奮してなんかいないよ」

 努めて平静を装って、ぼくはそれだけを口にした。

 「『昂奮してなんかいないよ』」

 自然と抑揚のない口調になっていたぼくの言葉を、ほたるがわざとらしく繰り返した。

 「きゃはっ♪ 健ちゃんって、ほんとに可愛いねぇ〜」

 「・・・・・・・・・・・・」

 ひとりはしゃぎだすほたるに、ぼくは閉口するしかなかった。

 「『昂奮してなんかいないよ』」

 「―――だってぇ〜♪ にゃははははっ」

 何がそんなに可笑しいのかを理解する気も起きなかったが、とにかくそれが、ひどく屈辱的であるということだけは認識できた。

 「・・・・・・こらっ、ほたる!」

 ぼくはほたるの細い腕を掴むと、そのまま布団の上に押し倒す。

 「きゃんっ♪ 健ちゃんのエッチぃ〜」

 ただじゃれあっているだけのように、楽しそうにぼくをからかうほたる。

 「大体、こんなのどこで覚えてきたんだよ・・・・・・フェラチオって言うんだぞ?」

 今度はぼくが反撃に出た。

 そう言ってやるとほたるは、一瞬目を丸くして、自分のしたことを今の今まで忘れていたとでも言うように、みるみる顔を赤くしていく。

 恥ずかしそうに目を逸らして、もじもじとしている。

 そんなほたるの可愛らしい反応を見て、ぼくは形勢逆転の確かな手ごたえを感じた。・・・・・・はずだった。

 「だって、健ちゃん・・・・・・そうゆうの、好きなんでしょ?」

 じっとぼくの目を見つめながら、不安そうに訊いてくるほたる。

 「へっ?」

 思いがけない質問を投げ返されたことに、ぼくは思わず面食らってしまった。

 そしてそんな風に戸惑うぼくを後目に、ほたるが静かに言い放った。

 「念のために言っておくけど・・・・・・隠してあるエッチな本のことだったら、ほたる、とっくに知ってるからね」

 そう言って、机の引き出しの一番下を指差す。

 ・・・・・・。

 ・・・・・・。

 ・・・・・・何だって?

 ほたるの投下した言葉の爆弾が爆発するまで、ぼくの中で数秒の時間を要した。

 「な、な、なななんでそれを知ってるんだ?」

 「まあ、健全な男の子だったら、しょうがないと思うけど・・・・・・」

 ほたるも自分で言っておいて恥ずかしくなってきたのか、次第に声が小さくなる。

 

 「だから・・・そんな本なんかじゃなくて、ほたるが健ちゃんを喜ばせてあげたくって・・・・・・」

 

 

 しばらくお互いに黙り込む。

 ぼくは相変わらずばつが悪かったが、それはどこか気恥ずかしくも、不思議と居心地のいい沈黙だった。

 (ぼくは、また・・・・・・ほたるに気を遣わせていたのか)

 健気な気持ちが優しく胸に沁みてきて、ぼくは思わずほたるの細い身体を抱きしめていた。

 「あっ・・・・・・健ちゃん・・・・・・」

 ほたるが、愛しい―――。

 かつては正視することすら躊躇われた、ただそれだけのことを素直に受け入れることが、今のぼくには出来る。そしてそれだけの強さをぼくに与えてくれたのもまた、ほたるだった。

 そうして抱いた腕の中のほたるが、微かに震えているのが分かった。ぼくと視線を合わせようとしない、その瞳は何かに怯えているようで、それは今にも泣き出しそうに見えた。

 今更ながらに、胸が痛んだ。不安に揺れる心を隠して、ただぼくのために笑った彼女の感情の糸は、こんなにも張り詰めていたのだ。

 そんなほたるの顔が見えないように、ぼくはそっとほたるの耳元に唇を寄せ、囁くように小さく言った。

 「ぼくは・・・・・・ほたるだけだから」

 それは、待ち合わせに遅れてきた恋人が言い訳をするときのようにきまりが悪いものだったけれど、全てを包み込むような力強さを持つ、偽りないぼくの本心だった。

 「健ちゃん・・・・・・」

 

 一筋の雫が、ほたるの頬を伝う。

 顔を上げたときには、まるで春の日差しが誘う雪解けのように、ほたるは安らかな笑みを満面に湛えていた。

 ぼくが探し続けてきた答えは・・・・・・ほたるがずっと待ち続けていた言葉。

 ぼくは照れ隠しに少しだけ苦笑して、何も言わずに親指を伸ばしてそれを拭った。

 二人は見詰め合ったまま、お互いの瞳に、確実にお互いだけを映していた。

 

 (ごめん・・・。なんだか、ぼくは・・・ほたるを泣かせてばかりいるね・・・)

 (――ううん・・・いいの。だって、ほたるも・・・・・・健ちゃんだけだから)

 

 夜が、しんしんと更けてゆく・・・・・・。

 

 

 

 

 月光だけが支配する薄暗闇の室内、ぼくたちは生まれたままの姿で求め合うように抱き合っていた。

 「ほたる・・・・・・」

 愛しい人の名を呼びながら、みずみずしく濡れ光るその唇に、ゆっくりと自分のそれを重ねてゆく。

 「ん・・・・・・けんちゃん・・・」

 熱い吐息が、お互いの唇へと吸い込まれていく。

 何度目かも分からないそのキスは、今まで感じてきた以上の柔らかさと、温かさをぼくに伝えてくれた。

 ぼくはほたるの口を塞いだまま、そっと手のひらを合わせるようにして、指と指とを互いに絡ませた。

 「んむ・・・・・・ふあ・・・・・・」

 軽く唇を吸い上げ、差し入れた舌で、ゆっくりと這うように歯列をなぞる。そうして探し当てたほたるの舌を吸い上げて、ぼくの舌で絡めとったまま逃がさないように、舐り尽くすように味わう。

 満月の蒼白い光に照らされて、ぼくたちは狂おしいほどの濃厚な口付けを交わしていた。

 「んんっ・・・・・・ぁん、ふぁぁあ・・・・・・」

 ようやく唇を離すときも、その別れを名残惜しむように、二人の舌はお互いに追いすがるようにして、間に一本の唾液の橋を渡していった。

 ほたると、視線が合った。短く息を吐くぼくを、ほたるは肩を上下させながら、蕩けたように潤んだ瞳で見上げていた。

 そんなほたるの艶っぽい表情にどきりとする。そしてそれによって、ぼくはちょっとした悪戯心を起こしてしまっていた。

 もっと、可愛いほたるが見たかった。

 それに実のところを言えば、ぼくはほたるに一方的にいかされたことをまだ根に持っていた。

 すっと体を下に移動させて、ほたるの秘所に顔を近づけていく。うっすらと毛が生え揃ったそこは既に湿り気を帯びているように見えて、ほんとうは薄暗くてよく見えなかったのだけれど、ぼくはたまらず、むしゃぶりつくようにほたるの秘部に吸い付いた。

 「ひゃうぅぅんっ!」

 その瞬間、ほたるが、大きく身体を震わせて鳴いた。

 突然の強烈な刺激に驚いたといったような、素直な快感の反応が嬉しかった。

 ぼくはほたるの割れ目に舌を突っ込むような形で、ぴちゃぴちゃと大げさに音を立ててそこをかき混ぜた。

 「あうぅ・・・・・・け、健ちゃん・・・。そんなところ・・・・・・汚いよぉ」

 ほたるははっきりと感じていると分かるほど悩ましげな吐息を漏らしながら、恥ずかしそうに身を捩じらせる。

 そこを口でするのは初めてだったけど、ぼくに抵抗はなかった。

 「さっきのお返し。それに、汚くなんてないよ」

 そう言って、肉襞に隠れるように控えめに存在する、ぷっくりと充血したほたるの可愛らしいクリトリスを、ジュルジュルと激しく吸いたててやった。

 「はああぁぁぁあ・・・っ! け、健ちゃぁぁあんっ!!」

 白くて華奢な身体を弓なりに反らせて、一際高いフォルティシモの嬌声を上げるほたる。

 どうやら、軽く達したみたいだった。

 

 (自分だって、早いじゃないか・・・・・・)

 内心そう思いながらも、ぼくは悪い気はしていなかった。というよりも、はっきり言って昂奮していた。

 打てば響くような、ほたるの快感を示す素直な反応が嬉しくて、ぼくは改めて「素直さ」というものについて考えさせられていた。

 ほたるはぼくを「素直じゃない」とよく言うが、もしほたるがぼくと同じように素直じゃなかったら、それはどうなのだろう?

 自分で仮定してみて、何だかひどい違和感を覚えた。やはりぼくは断然、素直なほたるがいい。もちろんそれだけではないにしろ、それが彼女の大きな魅力の一つであることは疑いようもない。

 ならば・・・・・・ほたるのためにも、ぼくも素直であるべきなのだろうか? 今なら、ぼくはほたるの気持ちが理解できているはずだ。だから今こそ、素直にぼくの全てをさらけ出して・・・・・・。

 そこまで考えて、やはりぼくは思い直すことにした。自分の想像に、何だかひどい違和感を覚えた。

 「何と言うか、ほら。それは役割分担みたいなもので」

 誰にともなく、ぼくは言い訳をしていた。ちなみにそれについては、単にぼくがそういう性格なだけだという説もある。

 「えっ? 健ちゃん・・・・・・なんの話??」

 ほたるが、きょとんとした顔で見ていた。

 ぼくはどう答えたものかと少し迷ったが、自分が今まで考えていたことの馬鹿馬鹿しさに苦笑した。

 「ほたるが、ものすごく可愛いって話」

 別に嘘というわけでなかったけど、言ってから、ちょっと白々しいかとも思った。

 でもほたるは、すぐに嬉しそうな顔を見せてくれた。恥ずかしそうに赤く染めた、はにかんだような笑顔。それはぼくの言葉を受けて素直に反応したからであって・・・・・・何だか、ぼくはまた嬉しくなった。

 

 「ほたる・・・・・・入れるよ」

 そうこうするうち、ぼくはどうにも我慢ができなくなっていた。欲望は既に、ぼくの股間で猛るように屹立していた。

 「うん・・・。来て・・・・・・健ちゃん」

 慈しむような優しい笑みで、ほたるはぼくを待っていた。

 ぼくは覆いかぶさるようにもう一度ほたるを抱きしめて、耳たぶに軽くキスをする。

 「んっ・・・はあぁぁ・・・」

 ほたるの身体がぴくりと震えて、甘い吐息がこぼれた。

 ぼくは少しずつ、ゆっくりとほたるの中にその身を沈めていく。

 ほたるの愛液で十分に濡れていたそこは、それでもまだちょっと窮屈で、押し出すようにぼくを強く締め付けてきた。

 「ああぁっ・・・け、健ちゃぁん・・・・・・っ!」

 ほたるを愛する律動が、ぼくの中でその動きを早める。頭の中が真っ白で、ただひたすらにぼくはその名前を呼んだ。白濁した意識の中で、同じようにほたるもまたぼくの名前を呼ぶのが、やけにはっきりと聞こえていた。

 「ほたる、ほたる、ほたる・・・・・・!!」

 「健ちゃん、健ちゃん・・・けんちゃん・・・・・・っ!!!」

 高まりゆくふたつの名に導かれて、ぼくたちは急速に昇りつめていき、ふたりの愛が満ちてゆくなか、ぼくは何とか彼女の体外に射精することに成功したのだった・・・・・・。

 

 

 

 

 ほたるが静かな寝息をたてて、ぼくの横で眠っている。

 その寝顔がどことなく幸せそうに見えて、ぼくは穏やかな気持ちで微笑んだ。

 そして、そんな満月の夜に強く願うように、誓うように、こうしてほたるとともにある、変わることのない平穏を、ぼくは改めて思った。

 

 

 ぼくはもう迷わない。

 これから先にある道程。どこまでも。いつまでも。

 ぼくはぼくの護るべき愛しい女性[ひと]を、何よりも大切にしながら歩いてゆくのだ。

 それこそぼくが生きていく理由なんて、それだけで十分だと思えるくらいに・・・・・・。

 そして、そんなぼくの隣では、いつだってほたるが笑っていてくれるように――――。

 

 

 同様に、過ぎ去ってゆく全てのものは、みな愛おしむべき、ぼくたちの想い出なのだ。

 

 終

 


解説

 どうも、フラテルニティです。

 「メモリーズオフ2nd」で、一応、ほたる編その後ということで書きました。

 エンディングからすると、こんなわけの分からん外伝シナリオは存在し得ないと言われるかも知れませんが、どうにかしてメモオフっぽい真面目さを出したかったのでそこは許してやってください。(真面目・・・か?(汗))

 なにぶん元のゲームがあまりにも素晴らしいもので・・・。でもまぁ僕としても、これが今までで一番良い出来になった気がしますし。(あくまで、気がします・・・ですよ)

 そう、途中までは物凄く上手く書けてる気がしてたんですが、何度も何度も読み返しながら、その度に手直しを加えていって、頑張れば頑張るほど、何だか自信がなくなってきて・・・。(汗)時間をかけた割には・・・うぅん、どうなんでしょうね?

 というわけで、感想などいただけると非常に有難いです。(この文はおかしい! とか、この展開はおかしい! 等の指摘もあったらぜひ教えて下さい)

 なにしろ、「健ちゃんって、どうしてそう早いのぉ?」(元は信くんの台詞です)から書き始めた小説ですから。(苦笑)

 そして偉大なる先輩作家さん達のメモオフ連合に、僕は無事仲間入りを果たすことができたのでしょうか?(笑) まぁなんにせよ、メモオフは書けたらもう少し書いてみたいですね。はい。

 

 幻水の方も、続きを書くと言っておきながら、筆が止まっておりまして・・・。(汗)お待ちくださっている方々、大変申し訳ないのですが、もうしばらくお待ちください。

 

 それでは、ここまでお読みくださり、どうもありがとうございました。

 これから投稿の期間の間隔がさらに長くなりそうな、フラテルニティでした。(大汗)

 


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