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10 クライアント
「千影ちゃん……のんびり水晶なんか眺めてると、行動に遅れをとっちゃうよ?」
海神航(男子2番)が倒れた海神千影(女子6番)に冷たく語る。
千影ちゃん……生きてるの?
海神可憐(女子3番)はただ、その圧倒的な光景を見る事しか出来なかった。
悔しい……可憐は何もしてあげられない……お兄ちゃんを止める事も……
航:「……どうやら、また死体が増える羽目になったようだね。いいや、時間がないし、ミッチー、大和。最後の説明をして。」
テレビの中にいるミッチー(SPBR法推進委員会)とマック大和(SPBR法推進委員会)が再び説明を開始し始めた。
ミッチー:「……そうね、最後の仕上げをそろそろしないと……みんな、言うの忘れてたけど制限時間は3日間、3日間で最後の一人が決まらない場合も首輪は爆発するわ。開始時間は―――そうね、先程の12月24日、午前0:00からとしましょう。つまり、12月27日と28日の間の午前0:00までが制限時間ね。」
大和:「みんなもそうならない様に気をつけろよ!!」
ミッチー:「あと、臨海副都心にある施設とかなんだけどー、利用できる物も結構あるから有効に使ってみてねー。荷物は廊下の人がデイパックっていう形で渡してくれるわ。」
じいや:「……ここまでで質問ある人いますか?」
じいや(SPBR担当教官)が確認を取る。
「はーい。」
天使の様なかわいらしい、それでいてちょっぴり甘ったれな声が室内に響いた。
じいや:「……どうぞ、女子8番、海神雛子さん。」
雛子:「生き残れるのは〜一人だけなの?」
航:「そうだよ、雛子ちゃん。最後まで戦い合わせて生き残った一人だけが帰れるんだ。」
航が海神雛子(女子8番)の質問に返答した。
雛子:「うん、分かったよ!!お兄たま!!」
雛子はそれだけ言うと席についた。
じいや:「……では、以上で説明を終わりにしますか。」
航:「――――じゃ、お楽しみの転校生を紹介するか……。入れてきてくれ。」
ガラッ
室内のドアが突如開かれた。二人の少年が黒服に囲まれながら歩いてくる……。
あの人達は、確か……。燦緒さん?
航:「転校生紹介します。山神燦緒(男子3番)君と、空神皆井(男子1番)君です。みんな、仲良くしてあげてね。」
燦緒:「……又お会いしましたね、妹さん達。今回もお願いします。」
皆井:「……。」
山神眞深美(女子13番)はギロッと燦緒を睨み付けているのが可憐にも見て取れた。
眞深:「……。」
燦緒:「おやおや……。」
航:「じゃあ最後に僕から……。」
航がさっきの表情と近い顔つきになった。
航:「みんな、甘ったれない事だよまずは。さっきも言った通り、僕は皆の日頃の行いを熟知している。……つまり、殺し合いを拒んでる人、おかしいよね?」
可憐は回りの生徒を見渡す限りでは、多少その言葉に過敏に反応している者がいる事が分かった。
航:「つまり、いいかいみんな、日頃の様子を見ている限りでは、みんなは殺し合い、出来るはずだよね?出来なくちゃおかしいよね?日頃から誰かが死にかけているような事を絶えずにやっているのに出来ないだなんてどうかしているからね。……出来ないなんて今頃言わせないからね……。そう、みんながいつもやってる事をやればいいんだ。いつものようにやっていれば問題は無いだろう?」
可憐は……そんな事……
航、続ける。
航:「……いいかいみんな、このゲームではいかなる反則もルール上許される。だけど、これだけは覚えておけ!!このゲームは、みんなは自分の存在価値を自分で探し出すものでもある!!それを忘れるな!!」
じいや:「……よろしいですか?」
航、しばらくして静かに頷く。
じいや:「なお、航様も今大会に参加されます。今の一時的な今大会監督の特権以外は皆さんと平等に扱いますので御安心を。」
航、燦緒、皆井といった人物達が自分達の所定の席につき始めた。
航:「じゃあじいや、後は監督を受託するからよろしく。」
じいや:「……では、早速ですが出席番号順の男女、男女の順で出発してもらうとしましょう。」
【残り15人】
11 ジェノサイド
「女子四番、海神咲耶さんね……」
ミッチー(SPBR推進委員会)がじいや(SPBR担当教官)にクジの報告をした。
じいや:「女子四番、海神咲耶さん、最初の出発者です。準備をしてください……」
じいやが海神咲耶(女子4番)に最初の出発を告げる。
咲耶:「……分かったわ。」
最年長の咲耶ではあったが、その声は明らかに動揺している。
じいや:「荷物は廊下に置いてあります。」
咲耶、席を立ち廊下へと出て行った。出て行く時、かすかにクラスメイト達を睨み付けていた……。
航:「咲耶ちゃんヤル気かもね。みんな、注意したほうがいいよ。」
まさか……咲耶ちゃんが……?ううん、ここは冷静になって、みんなを信じなくっちゃ……
海神可憐(女子3番)は冷静を保とうとしていたが、相変わらず震えが止まらずにいた。
ミッチー:「……次ね、女子五番、海神白雪さん。」
幾分緊迫している海神白雪(女子5番)がガタッと立ち上がる。
白雪:「ひっ…ヒメは…。」
じいや:「なんですか?海神白雪さん?」
じいやが銃口を白雪に向けている。
白雪:「―――な、なんでもありませんの……。」
そういうと逃げるように白雪は廊下の方に走っていった。
ミッチー:「……次、女子6番―――ああ、彼女はそこで死んでますね。じゃあ次行って……。」
航:「―――いや、まだ千影ちゃんは生きてるよ。」
航が言うと同時に、後ろの方でムクッと立ち上がる海神千影(女子6番)の姿があった。これには航以外の誰もがギョッとした。
千影:「……さすがは……兄君だね……。」
背中に二つ銃創を作っている為か、辛そうに話す彼女はやっとの思いでじいやのところまで来て航にこう言い放った。
千影:「兄君……私達は……決して逃げる事の出来ない糸で……結ばれている……そう……私達は……この世に転生してきた頃から……運命の黒い糸で結ばれている……逃げる事は…出来ないよ?」
千影はそれだけ言い放つとさっさと廊下の方に歩き出した。歩きづらそうではあったが―――かろうじて一命を取り留めていた。
航:「……フフッ、面白いよ、千影ちゃん……。」
―――数分が過ぎた。海神四葉(女子11番)、海神雛子(女子8番)、海神衛(女子9番)といった人物達が戦場へとひと足先に出発していった。室内は未だに血が放つ特有の臭いによって占領されている。
じいや:「女子13番、山神眞深美さん、準備してください。」
山神眞深美(女子13番)は荷物を整えるとじいやにつかつかと歩いていった。表情はいつもは見る事が出来なさそうな強張った表情である。
眞深:「……1つ聞いておきたい事がある。」
じいや:「いいですよ、なんでも質問しなさい。」
眞深:「このクラスの連中、私達以外にもっと、そうね、あと15人ぐらいはいたはず。今日の旅行、アンちゃん……海神航と親密な連中しか参加してないけど、これと何か関係はあるの?」
じいや:「ああ、その事でしたか。その人達なら今……。」
眞深:「まさか、あんた達……」
じいやが黒服の一人に合図を出す。
――――嫌な予感がした。
黒服の一人が変哲も無い天井からぶら下がる糸を引くと――――
バタバタバタ……
正面のカーテンで隠されていた部分が開くと同時に、席についたクラスメイト達の瞳には恐ろしい物が映った。
「キャーーーー!!!」
一同(特に可憐・花穂)は一斉に叫びだす。
航:「はい、騒がない騒がない。ちょっと邪魔になったから公務執行妨害で処分しただけの事だよ。」
目の前にはいつしかの吉田ファミリー含む、3年B組の生徒達の死体が転がっていた。尋ねた眞深も見難そうな顔つきをしていた。そう、ただ遺体となって転がっているわけではないのだ。首の上の部分が無かったり、ゼリー状の異様な物体、恐らく脳味噌だろう、理科の授業でよく見る、体の内臓が血を除けばはっきり分かる人体模型のようなもの、血管や心臓がもぎ取られたりしているものなど、見た事の無い珍物がそこら中に転がっているのだ。
眞深:「……あんた達、絶対潰す。」
眞深はそれだけ言うと、迅速に廊下のほうへ歩き出した。
航:「……」
本当に、何もかもが最悪だった。
【ゲーム開始 12月24日 AM1:00】
【残り15人】
12 罪と罰と兄の裁き
第一日目 12月24日 AM1:15 ゆりかもめ『国際展示場正門』駅 駅ホール
アニィ……ゴメン、ボクはなんて事を……。
海神衛(女子9番)は既にビッグサイト前に通る電車、ゆりかもめの国際展示場駅の駅のホールのベンチに座っていた。とても、悲しそうな表情をしながら―――
もう、許してもらえないのかな……?
思えばルール説明中、海神航(男子2番)が言ったように、妹達はこの頃敵視しあう事が非常に多かった。衛もその中の一人に入っている。
ボク、アニィの事しか考えてない時は他の事なんかどうでも良くなっちゃって……でも、結局それはアニィを悲しませてしまうないようだったんだね……そのせいで、鞠絵ちゃんや山田さんまで……
お台場の夜―――衛の悲しみとは対称に遠くで光る東京タワー、今は深夜だからすこしためらいがちだが、オレンジ色に輝く摩天楼の数々、近くできらめく大観覧車は、衛の心を癒すような働きを与えた。
ああ、これはきっと罰なんだ……ボク達が仲良くしなかったから……アニィをガッカリさせるような事をしたから……
ピンポンパンポーン……
衛:「……電車?」
『まもなく二番線に、新橋行き電車が参ります。』
そういえば言ってたな……施設がどうとか……
衛はとりあえず立ち上がり、来た電車に乗ることにした。
アニィ……僕は何をすれば許してくれるの……?どうやって罪を償えばいいの……?神様、もう一回ボクにチャンスを……下さい……
【残り15人】
13 真・運命の黒い糸
「男子2番、海神航君。準備してください。」
ミッチー(SPBR法推進委員会)は海神航(男子2番)の名前を呼んだ。
このとき既に、部屋に残ってる生徒の数は航含めて4名、海神可憐(女子3番)、海神花穂(女子2番)、山神燦緒(男子3番)となった。
航:「……」
もはや無言となった航は、立ち上がると廊下の方へ移動し始めた。何故か、少しぐらついている……。歩いている途中、可憐と花穂の席の間でがくっと倒れそうになった。可憐と花穂の机端の上に手を置いた事が支えとなったので、倒れずには済んだ。
可憐:「……」
じいや:「大丈夫ですか?航様……」
航:「……ああ、平気だ。」
航は体勢を整えるとまた歩みだした。
……お兄ちゃん?
可憐は航が出た後、初めて机の端の方に小さな手紙がぽつんと置かれているのを発見した。
……これ、お兄ちゃんが?
ミッチー:「女子2番、海神花穂さん、準備してください。」
ミッチーは花穂の名前を呼ぶが何も反応しない。下を向いて何かを読んでいるようだった。
可憐:「……花穂ちゃん」
花穂:「あっ、ハイ!!」
花穂は呼ばれた事に気が付くと素早く準備をして立ち上がった。可憐はたまたま花穂の手に握られている、自分が渡された手紙と同じ柄の手紙を発見した。
花穂ちゃんも……?この手紙……
花穂は廊下に出る寸前、すこし嬉しそうな顔をしているのが可憐には見て取れた。殺しを楽しむという笑顔ではない、日常で浮かび上がりそうな笑顔だった。
……?花穂ちゃん……なにが手紙に書かれてたの?
可憐も花穂同様、手紙の内容を覗いてみた。
―――――お兄ちゃん
可憐は思わず顔を緩ませてしまった。
ミッチー:「男子3番、山神燦緒君。」
そんなやり取りを知るはずが無い一番前の席に座る少年、燦緒も準備をし始めた。燦緒が出て行くと遂に、可憐のみとなった。
ミッチー:「……男子4番は死んでるからこれで最後ね。女子3番、海神可憐さん、準備して。」
可憐も花穂同様、少し喜びの表情を見せていた。可憐も準備をすると素早くこの部屋を退室した。
『前もって言っておく。この内容は無視してもらっても構わない。―――地図上の北の方にお台場海浜公園っていう公園があるんだ。そのすぐ南にマンション、シーリア台場がある。3日目の夜11:00頃、もし生きているのならシーリア台場2号棟の屋上に来てくれ。頼む……。 航』
14 黄昏の大和撫子
第一日目 12月24日 AM1:20 パレットタウン ネオジオワールド
「ここまで来れば……大丈夫ですわ。」
海神春歌(女子7番)は既に、ビッグサイトを外れ、娯楽施設、パレットタウンの方に移動していた。地図で言うと、ほぼ中央にあたる。
春歌:「……なんて事でしょう……兄君様、わたくし達のやっている事を見抜かれていたなんて……。」
春歌は誰もいないはずなのに明かりがポツッとついているパレットタウンに異様な感覚を覚えた。
春歌:「!!クッ……。」
春歌は海神衛(女子9番)によって負傷したまだ痛みの走る足をやっとの思いで立たせると、観覧車のほうへ移動し始めた。
とにかく……安全な場所を確保しなければ……
「わたくしは……ただ兄君様の事が好きだから……」
ウェルカムハウス、春歌の部屋。春歌は必死に衛を弁解していた。
「……で?ボク達他の妹達が許すと思った訳?」
たまたま当日の部屋の掃除係だった衛は、海神航(男子2番)が着替える時の写真を偶然見つけてしまった。
衛:「……春歌ちゃん、一回向こう側の世界に送ってあげようか?」
衛が言うとき既に、衛の足は春歌の腹をヒットしていた。
春歌:「ウグッ……。」
春歌は腹筋を最大限に使うと、素早く衛の頭の上をジャンプでふわりとすり抜け、窓ガラスを割って外に逃げた。
衛:「……逃がさないよ?」
衛は胸にしまってあるスタンガンを手に取ると、自慢の足を生かして春歌を追い始めた。
……いけない、変な事を思い出してしまった。でも……あのとき兄君様の気配がかすかだけどしたかもしれない。ひょっとしてあの時に……
コツ……コツ……コツ……
春歌:「誰ですか!?」
春歌は叫ぶと同時に自らの身体を反対側に向け、何かの武道の構えをとった。
春歌:「……雛子ちゃん……?」
春歌の目の前には、泣きながら近寄ってくる海神雛子(女子8番)の姿があった。
【残り15人】
黒い歯車は動き出した……。その歯車は誰に求められないだろう……。一人の「少年」は偽善と言う精神を恨んでいる。
「少女」達の偽善を熟知している「少年」を知った「少女」達に心境の変化は現われるのか……。偽善をなくすまでは「少年」の傷ついた心は
決して癒されない……。「少女」達は、自分達の償いをどのように悟ったか……。
ただ、たとえ「少女」達が自分達の過ちに気付いても、「少女」達へ送るレクイエムは、決して減る事はない……。
【残り15人】