free hosting   image hosting   hosting reseller   online album   e-shop   famous people 
Free Website Templates
Free Installer

←前  次→


海豚物語(中学生編):その1『再逢[さいあい]』
天船/文
栗里愛/画


  午後17:28、愛知県渥美町、恋路ヶ浜・・・。 浜から百数メートル沖に、少女が浮かんでいた。 別に入水自害を謀っているわけではない。 これが、彼女の習慣だからだ。

 「・・・気持ちいい・・・」

  仰向けに浮かび、波間に彼女の肌が見え隠れしている。 ・・・彼女は水着も着ず、全裸で浮かんたのだ。 

 「やっぱり、今ごろの季節が、一番気持ちいいな・・・」

  季節はようやく、夏に入ったばかりだった。 深海に等しく青味を帯びたセミロングの髪が、海と彼女の清らかさを表す様に、扇状に揺らめいていた。

 「・・・ぅ・・・ん・・・」

  いつの間にか、彼女の手は我が身を弄んでいた。 齢[よわい]十四にしては豊穣な胸は、殆ど毎日行っているこの行為で豊かになっていた。 同級生から羨まれるほどだ。

 「・・・はっ・・・んん・・・・・・」

  胸の頂きを軽くつねる。 

 「はぁんっ・・・ぅんっっっ・・・」

  掌[てのひら]で掴む、揉む、こねる。 海の水の冷たさも心地よく、彼女を快楽に浸していく。

 「・・・い・・・いい・・・っ・・・」

  そして、我が秘所に手が伸びる。 花弁をいじり、陰核を摘む。

 「ひゃあんっ・・・ぁぁあぁぁぁぁ・・・・・・」

  慰めている間に、彼女は海に沈んでいた。

海豚物語(中学生編):その1『再逢[さいあい]』

  しかし、長く潜っていても、彼女にはなんら問題はない。 なぜなら、彼女は人にあらざる血を引いているのだから・・・。

 (・・・ぁ・・・あぁぁ・・・っ・・・)

  拙い手は、しかし彼女の心を満たすことは無かった。

 (た・・・っみ・・・さんっ・・・)

  愛しい人の名を呼んで、切ない我が身を慰める。 そして・・・陰核を強めにつまんだ!

 (たつ・・・み・・・さん・・・っ・・・あぁ・・・はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっっっ!)

  海中で絶頂に達した。

 

 

 「・・・また・・・やっちゃった・・・」

  午後18:40自宅である民宿に無事に帰り、自分の部屋でも、我が身を慰めていた。 彼女は、ベッドに横たわり、ため息を吐き出した。 胸

 に幾つかの文[ふみ]を抱きしめて。

 「・・・寂しいよ・・・巽さん・・・」

  再び、彼の名を呼ぶ・・・が、無論、来てくれる訳がない。

  彼は名古屋の金山に住んでいる。 ここから金山まで行くのには、かなりの距離と資金が必要とする。 資金面では多分、無理だろう。 最近の不況で民宿も、存続が危ぶまれているし、おこずかいもその資金に回っているので、個人的に文無しも同然である。 そして、渥美半島の端から、都会までの距離は、同じ県内のはずなのに、彼女にとっては、宇宙の端から向こうの端までに等しく、遠い。 強いてあげるのなら海を渡って行くくらいのものだが、この身体では少し無理がある。

 ・・・それは、尋常な人間であればの話しだ。

 「・・・・・・でも、ワイドショーには出たくないしな・・・・・・」

  彼と自分は・・・正確には、二人の知り合いとして合計八人、つまり自分たちを含めて十人いるのだが・・・人間ではない。 種族は違うが・・・映画などに出てくる、『怪獣』なのである。 呼び名が違うだけの、全くの怪獣。

 

  彼女・・・姓名を、臨海[のぞみ] 海豚[いるか]・・・は、『聖海龍[デューテリオス]』と呼ばれる獣に。

  二つ年上の、愛しの彼・・・巌[いわお] 巽[たつみ]・・・は、『魔海龍[ダガーラ]』に変身するのである。

  前者は『森羅万象の生命の母』であり、後者は『汚れに狂う龍[ドラゴン]』でもある。

 

  二人が知り合ったのは、謀られたかのような偶然だった。 海豚十歳、巽十二歳のこと・・・。

 

 

 「いやっ! やめて、はなして!」

  学校から自宅への帰り道、不審な数人の男に伊良湖[いらご]灯台へ無理やり連れて来られ、海豚は必死に抵抗した。

 「やめてよ! 何する気なの?!」

  海豚は恐怖と不安にで押し潰されようとしていても、それに抗っていた。

 「何するも何も、良いことに決まってんじゃん!」

  男・・・しかし、中学生から高校生ほどの歳だが・・の一人が言うと、その取り巻きは海豚の四肢を封じ、口をふさいだ。 一人は両手と口を、一人は両足を。 そして、封じられながら、服を脱がされていった。

 「ううっ! うううっ! (いやっ、やめてっ!)」

  口は男の尻で器用にも塞がれ、思ったように声が出なかった。 やがて、肌が晒される。

 「ほ〜・・・綺麗だね、嬢ちゃん・・・」

  唯一、腰の下着を除いて全てが露わになる。 身を捻りよじり、なんとかして隠そうとするが徒労に終わってしまう。 男がどこからか取り出したビデオカメラで、海豚を舐めるように映す。

 「ううっ(いや)・・・」

  そして、最後の一枚も盗られてしまい、一糸まとわぬ姿になってしまった。 両足を封じていた男は、無造作に動き・・・海豚の脚を強引に広げさせた。

 「ううーっ(いやー)! 」

  未だに熟れておらず、産毛程度しか茂みの無い秘所が、男たちの目とカメラに映されていく。 海豚は羞恥心により泣いていたが、両腕担当の男によって、声すらも出ない。

 「さぁ〜て、メインディッシュを頂くとするか・・・」

  と、男が海豚の脚を持ち上げ味わおうとした、その刹那!

 「テール・・・スウィープッ!」

  剣を凪ぐような風が男の左耳にぶつかり、吹っ飛ばされた!

 「・・・なんでぇ、やっぱ結局、女の子をイジメてんじゃんか!」

  一人の、自分よりも少し年上で、男たちよりも明らかに年下の少年が、さっきまで男のいた場所に立っていた。

 「巽・・・も少し手加減しろよ・・・」

 「下手したら、文字通り首が飛んじゃうんだからね!」

  茂みから二人の男女も現れた。 男たちよりも明らかに年上の、夫婦のような仲の良さだった。

 「わーてるって!」

  少年がおどけて言うと、別の取り巻きが少年に襲いかかる・・が。

 「示現流・・・黒獣掌!」

  振り返りざま、少年の拳が、男のみぞおちに直撃する。 また、別の男には、

 「テール・ハンマー!」

  かかと落としを浴びせる。 ・・・残ったのは、海豚を封じている二人のみ。 その二人に女性が氷点下の視線で見下して言った。

 「さて・・・今ここで、伊良湖の水を百リットルばかり飲んで胃を破裂させて死ぬか、禁欲に殉じて遠くで幸せに暮らすか・・・どちらがいいのかしらね・・・?」

  女性の台詞に、容赦や手加減は微塵も感じられなかった。 男たちは命乞いしつつ、海豚から離れた。

 「・・・はい、これ着て。 何も無いよりマシよ」

  女性が毛布らしい布を海豚に被せて、他の連れの男二人を見た。 少年はこちらに背を向け、もう一人の夫らしい青年は、さっき吹っ飛ばされた男に詰問していた。 その声は静かだが重く、それが彼の義憤を表していた。

 「汝に問う。 お前に給料と命令を与えたのはどいつだ? いずくんぞ、これを仕組んだのは、お前自身か?」

  低く、威圧的な声に、男は声を絞って答えた。

 「お・・・おれだ・・・」

 「そうか・・・」

  短く答えると、青年に男は胸倉を掴まれ、持ち上げられた。

 「ならば、一つ、肝に深く刻んでおけ・・・」

  その一言一言は、男の神経までも切り裂いているようだった。

 「今後、再び乙女を汚すならば、汝らは生き地獄を味わうものと思え。 それを忘れるな・・・良いか!?」

 「は、はいぃぃぃぃぃ・・・!」

 「なら・・・」

  青年は男を持ったまま、無造作に振りかぶり・・・。

 「太平洋で反省してろ!!!」

 

 

  ブンッ!!

 

 

  彼はその男を投げ捨てたのだ! 男は伊良湖灯台の壁をかすめ、海へと投げ落ちていった・・・。

 

 

  ・・・・・・・・・・ドボン。

 

 

 「着弾を確認・・・と、もう一つ・・・」

  青年は男が持っていたビデオカメラを持ち上げると、

 「巽、いっちょ頼むぜ」

  少年に向け、軽く投げ上げた。

 「あいよ!」

  すると少年は、虚空から一振りの刀を顕現させた。 鞘[さや]に収められたそれを、抜刀の構えで持った。 数瞬、沈黙が支配する。

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・せいっ!」

  号砲一閃! 刀が閃くと、カメラが地に落ち・・・数瞬後、見事に四つに斬られたのだった。 少年は刀を振って、再び鞘に収めた。

 「・・・う〜ん、も少し手早く・・・かな?」

 「そうだな・・・」

  海豚を襲った男たちを奇襲で以って張り倒した二人の男は、それでも、海豚の方を向くことはなかった。

 「もう、こっちはいいわよ。 なおざりだけど、隠すべきとこは隠したから!」

 「む・・・そうか」

 「はぁ〜・・・やれやれだぜ・・・」

  女性の声で、ようやくこちらを向いた。 年長者の青年は威風堂々としていて、王族のような風格を持っていた。 一方の少年は、くせっ毛でおどけた感じだった。 しかし、その目は先ほどの男たちのものとは違い、清らかで優しかく、きりりっと引き締まっていた。

 「もう、大丈夫だからね。 悪い大人は、オレたちが懲らしめたからさ!」

 「・・・・・・」

  海豚は少年の目に見とれて、呆然[ぼう]としていた。

 「君・・・大丈夫?」

  年上の青年が掌を目の前で振る・・・が、反応が無い。

 「きっと、連中の所為で、気も腰も抜けちゃったのよ、きっと」

  女性が優しく海豚を抱き上げると、ようやく、気が付いた様だった。 一行は歩き出し、町へと向かっていた。 途中で服を調達する必要があるが、深夜のコンビニにそんな店は一軒も無いのが現実だ。 とりあえず、宿に向かって歩いていた。

 「あ、あの! ・・・ありがとう・・・助けてくれて・・・」

  海豚はなんとか謝辞を述べることに成功した。 そして、少年に向け、大胆なことを口走ったのだった。

 「あの・・・・・・好きです!」

 「え?」

  何を言われたか分からず、キョトンとした少年。

 『ええ?!』

  その台詞を聞き逃さず、大いに驚く大人の二人。

 「あ、あの、その、えと、ですね、あなたの目が、綺麗だなって、思って、その、だから、えと・・・!」

  自分が言った台詞にも関わらず、その本人も驚きで呂律[ろれつ]が回らなくなってきた。

 「ま、まあまあ、落ち着いて・・・」

  男がなだめようとするが、少年がそれを遮った。

 「それよりも・・・ごめんな」

 「え?」

  何に対して謝ったのか、わからないでいたが、少年も恥ずかしさか照れなのかで顔を朱くさせて呟いた。

 「その、さ・・・最初、あいつらの一人に蹴り入れようとした時にさ・・・君の裸、見ちゃったから・・・ごめんね・・・」

 「・・・!」

  途端に恥ずかしさで、真っ赤になった。 胸もさっきの恐怖とは別に、ドキドキしていた。

 「本当なら、嫌われたほうが当然なんだけど・・・好きだって言ってくれて、ありがとな・・・」

 「で、でも!」

  海豚は再び大胆な台詞を言った。

 「あなたみたいな人なら・・・見られても・・・いいかな・・・」

 『おいおい?!』

  大人二人が、またハモって驚いた。

 「・・・大人になったらゆっくり見させてもらうけど、今は止すよ。 情操教育に悪いって言うのがいるから、ここに」

  少年に指差され、青年がウンウンと、力んで頷いた。

 「だから・・・友達として、付き合って欲しいな・・・なんて・・・」

 『なんと?!』

  いい加減うるさいぞ、二人とも。 と目で睨む少年に、海豚は満面の笑みで答えた。

 「喜んで!!」

  その笑顔に、少年はめまいを覚えてしまった。 それほど、海豚が可愛くて・・・同時に、護りたいとも思ったのだった。

 「オレは巽。 巌 巽だよ」

 「わたしは、臨海 海豚・・・」

  新たなカップルに、大人二人も名乗った。

 「虎崎[とらのざき]獅竜鳳[しりゅうおう]だ」

 「同じく、洸[ひかる]よ。 けど・・・」

  洸と名乗った女性は、首を傾げた。

 「臨海・・・って、もしかして・・・?」

 「もしかして、お母さんの名前って・・・?」

  大人二人の問いに、海豚は落ち着いた様子で答えた。

 「ええ、鯱子[さちこ]ですけど・・・」

 「やっぱり!」

  洸が相槌を打ち据えた。

  というのも、彼らが宿に到着すると、女将である鯱子に海豚の捜索を願われたのだ。 洸が見つけ、巽が奇襲の一手を出した次第だ。 巽は少し皮肉を込めて、獅竜鳳に呟いた。

 「やっぱ、類は友を呼ぶのかね、アニキ」

 「かも、な・・・」

  獅竜鳳は苦笑って、頷いた。 そうして民宿に帰ると、母であり女将の鯱子にこっぴどく叱られた。 そして、巽に住所を尋ね、別れた後は文通して、仲を深めていったのだった。 そして、今に至るのだが・・・。

 

 

 「あれから・・・四年か・・・」

  海豚は昔のことを思い出しながら、文を胸に抱いた。 その文には、

 『高校に入ったよ。 聖真高校って、私立のところだけど。 できれば、君にも、ここに来て欲しいな・・・』

  と、おおよそ、そんな内容の文が書かれていた。

 「巽さん・・・カッコ良くなってるんだろうな・・・。 四年も経ってるもんね・・・女の子にもモテたりしてるんだろうな・・・」

  同封されていた写真には、それ相応に成長した彼の姿が写っていた。 来ている学校の制服は初々しくも格好良く、優しくて穏やかな瞳は未だに汚れておらず、初めて出会った時のように、その瞳にうっとりとして・・・・・・再び切なさがこみ上げて、自身の体を慰めていった。 今朝もしたから、今日はこれで四回目である。

 「・・・私って・・・嫌な女だよね・・・こんなに淫らだなんて・・・嫌われちゃうよ・・・・・・」

  しかし、身体が彼を求めていることは確かで事実だから、否定しようが無い。 ・・・まあ、そのお陰か、こんな豊穣な胸になったのだが。

 「・・・巽さん・・・逢いたいよ・・・」

  海豚は再び絶頂に達して暫らくすると、台所に向かった。 客はいないが、夕飯の支度をしなければ。 どんなに切なくて逢いたくても、空腹は訪れるのである。

 

 

 「そんなに逢いたきゃ、会いに行けばいいじゃん?」

  翌日、学校の同級生に言われても、海豚は勇気が出なかった。

 「・・・でも、行く途中でナンパされたら・・・?」

 「無視[ハバ]りゃいいじゃん。 どうせ、難破船なんだからさ」

 「それに、金山とか・・・名古屋に行ったことさえ無いのに・・・」

 「名古屋周辺の地図はあんの?」

 「十年前のなら・・・」

 「古っ!!」

  同級生は少し毒気のある目で突っ込むと・・・名案が浮かんだのか、ほくそ笑んだ。

 「じゃあさ、その彼氏に迎えに来てもらえばいいじゃん。 金山で待ち合わせしてさ」

 「そんな! 巽さんを待たせるなんて!!」

 「いいじゃないの! 第一、男は女を待つのが常識でしょうが!?」

 「・・・そうなの?」

 「そうなの!」

  同級生の力説に、海豚は・・・不安気に呟いた。

 「・・・巽さん・・・私だって、わかるのかな・・・。 写真、送ってはいたけど・・・」

 「・・・ま、わからなけりゃ、それだけのヤツってことでしょ。 しっかし・・・」

  同級生は海豚を羨ましそうに・・・睨んだ。

 「いいよね〜海豚は。 彼氏がいてさ・・・。 あたしのイイ人は何処にいんのよ」

 「あれ?・・・雨が連れてくるんじゃないの?」

  海豚のボケに同級生はずっこけた。

 「・・・それ、八代 ○紀だかのじゃ・・・」

 「そうだけど? ちがうの?」

  海豚は女将仕事ついでに、宴会でカラオケ(それもレーザーディスク!)を歌うのだが、そのレパートリーの殆どは演歌なのである。 尤も、最近では、ポップなものも歌うようになったのだが、マイナーなものばかりで、いつもアカペラで歌っている。

 「・・・とにかく、行ってみなよ!」

 「・・うん・・・がんばってみるよ!」

  同級生に励まされ・・・翌日の偶数土曜日、午前09:00に、海豚は思いきって海に飛び込んだ!

 

 ザブォオォォォン!

 

  何故、海に飛び込んだのか? 理由は簡単、安いから、である。 陸路では時間も勿論、金もかかるので、怪獣に変身して名古屋港へと向かったのだ。

 

  聖海龍[デューテリオス]とは、無論、この世界ではなく、異世界の生物である。 海水中を飛ぶように航行するが、宇宙空間でも活動出来る。 空中は飛行できないが、かなりの跳躍力で大気圏外へ出られる。 無論、どうやったらそんな真似が出来るのか、異世界でも未だに解明できていない。

 

  (名古屋港に近づいたら人身に戻って・・・)

  獣から人身に戻ると、なぜか全裸になってしまう。 海豚とて巽以外の人間・・・特に男・・・に、自分の肌をさらす気は、さらさらない。 獣の口にはゴマが付いているような感じで、防水加工したバッグが咥[くわ]えられている。 二日分の着替えとタオルが入っているのである。

  そうこうしている小一時間程の内に、名古屋港に近づいた。 海豚は人身に戻ると、バッグを手にして、更に進んだ。 その背には、翼のような背鰭が一対、水中移動するペンギンのように羽ばたいていた。

 (・・・さて・・・参ったな・・・)

  海豚は困り果てた。 人が多すぎる。 怪しまれるし、狙われるし、見られた挙句に襲われたら、身も蓋も無くなってしまう。

 (人が少ないとこに行かないと・・・)

  と、泳いで移動しようとした刹那。

 「あら、海豚ちゃんじゃない!」

 (ぎくぅう?!)

  一瞬、肩が強張った。 恐る恐る振り返ると・・・独特の、鴇[トキ]色の髪をした美女が立っていた。 ちなみに地毛である。 体つきは華奢で儚そうな印象があり、しかし、出る所引っ込む所はちゃんとある。 海豚を大人ッぽくすれば、殆どスリーサイズなどは一緒だ。

 「ひ、洸さん〜!」

  四年前に知り合った女性・・・虎崎 洸だったのだ。

 「ちょっと待っててね・・・」

  洸は回りを見渡した。 周りの人間が入なくなったところを見計らって、海豚を引き上げた。 素早く、近くの物陰に移動する。

 「ここで見張ってるわね」

 「すみません・・・」

  感謝しつつ、タオルで身体を拭き、服に着替えた。

 「・・・もう、大丈夫です」

 「うん・・・じゃ、とりあえず喫茶店にでも行こうか」

 「は、はい・・・」

  小一時間ほど歩いて、二人は名古屋港のポートメッセ近くの喫茶店に立ち寄った。

 「・・・で、やっぱ、巽くんとこ?」

  洸が単刀直入に訊ねたので、海豚はドギマギしつつも頷いた。

 「え、ええ・・・」

 「・・・泊まってくの?」

 「・・・と・・・思って・・・」

  海豚はだんだん顔が赤くなっていくのを、自分でもわかっていた。 洸はその様子を微笑んで見ていた。

 「青くて春で・・・ね・・・」

 「え?」

  何を言い出すのか首を傾げたが、

 「・・・年寄りのボヤキよ・・・」

  美味くかわされてしまった。

 「じゃ、送っていくわ。 他の害虫駆除もついでにね」

 「洸さん・・・」

  洸は海豚の心を察して、同行を申し出た。 海豚は感謝しつつ、承諾したのだった。

 

 

  途中、確かに害虫、漂流途中の難破船の類が彼女達に寄って来たが、洸が毒々しくあしらったので、男たちは無残にも玉砕し、陥落し、轟沈していった。

 「ここよ」

  着いた先は、一軒の安アパート。 ここに巽が実兄と共に住んでいるのだ。

 「巽さん・・・」

 「この時間だと・・・まだ、学校で部活やってるかもね」

 「確か、剣道部なんですよね?」

 「・・・よく知ってるわね?」

 「文通してましたからね・・・」

  海豚はそう言うと、切なくなってアパートを見上げた。

 「ちなみに・・・206号室よ」

 「洸さん・・・どうして・・・?」

  洸が不思議に思えて、海豚は彼女を見上げた。

 「・・・私みたいに・・・初めてが『他の男たち』だった・・・なんて、悔しくて悲し過ぎるじゃない。 あなたにはそんな思い、して欲しくないからね・・・」

  洸は昔、性的虐待の対象にされ、さまざまな『虐待』を受けた過去があった。

  破瓜、強姦、輪姦、獣姦、青姦、痴漢、視姦、アナル、レズ、SMその他などなど・・・。  少なくとも、愛情や思いやりで抱かれたことは、一切無かった。 今の夫・・・獅竜鳳に出会うまでは。 尤も、今度は、して欲しくて堪らなくなっているのだが・・・。

 「今の内に、初めてだけは巽君に渡しちゃいなよ。 後悔する前にね・・・」

 「・・・・・・うん」

  海豚は部屋で待って、夕食を作ることにした。 デザートは勿論・・・自分の貞操である。 洸は部屋の掃除を略式に行っていた。

 「さて、男しか棲んでいないとなると、必ず「ある物」があるわ。 それって、なんだと思う?」

  洸の問いに、肉じゃがを煮込んでいた海豚は戸惑いつつも答えた。

 「えっと・・・・・・猥本[わいぼん]・・・ですか?」

 「古〜・・・すごい単語だこと! ま、あってるんだけどね・・・」

  と、敷かれたままの布団の下から、幾つかのエロ本が出てきた。

 「・・・し・・・仕方ないですよ! 巽さんだって一応、男の人なんですから!」

 「ま、そりゃあ、ウチの旦那みたいに過剰に嫌うやつなんて、特別天然記念物クラスだけどさ・・・」

 「・・・でも・・・巽さん、それだけ寂しい思いをしてるってことですから・・・」

  洸はその台詞にクスッと微笑んだ。

 「そういう優しいところ・・・変わってないわね・・・」

 「洸さんや巽さんのお陰ですよ・・・」

 「そうかな〜・・・」

  洸が少し苦笑うと、海豚は何かを察知したように、耳を澄ました。

 「・・・巽さん、帰ってきたみたいですね」

 「え?」

  少し驚いて海豚を見遣った刹那、

 「ただいま・・・って、えええ?!!」

  巽も驚いた声を出して帰ってきた。

 (マジ?!)

  洸は、海豚を只者ではないような顔で見遣った。 海豚は気兼ねなく、満面に微笑んで迎えた。

 「おかえりなさい、巽さん」

 「あ、ああ・・・ただいま・・・って、そーだけどそーじゃなくて!!」

  巽は突っ込み気味に叫んだが、すぐに訂正した。

 「・・・ごめん、別に来て欲しくないとか、そんなんじゃないだけど・・・」

 「いえ、わたしの方こそ、突然お邪魔してごめんなさい・・・」

 「・・・まあ、確かに突然過ぎたけど・・・いらっしゃい、海豚ちゃん」

  巽ははにかんで海豚を迎えた。

 「・・・それじゃ、キジは逃げるわね」

  と、洸は巽達の部屋から出て行こうとした。 それを海豚は呼び止めた。

 「洸さん! ・・・さっきは有難う御座いました」

  ふかぶかとお辞儀したので、洸はこそばゆくなってしまった。

 「い・・・や〜ね〜・・・私と海豚ちゃんとの仲じゃなきゃ、あなたが襲われてたんだから。 ま、思う存分、姦[ヤ]ッてらっしゃいな」

 「・・・そういうと、すごく卑猥なんですけど・・・」

 「愛か欲かの違いを除きゃ、結局は同じ事よ。 それじゃね」

  手をヒラヒラ振って、洸は去って行った。 その様子を巽はハテナマークをトリプルスピンさせた。

 「一体、なんのことなんだ?」

 「女同士の会話ですよ?」

 「・・・じゃ、遠慮するよ・・・」

  と、巽は鼻をひく付かせた。

 「この匂い・・・肉じゃがかい?」

 「あ、わかりますか? 実家から持ってきて作ったんですよ」

  ホクホクの笑顔で言う海豚を、巽は眩しそうに目を細めた。

 「・・・巽さん?」

  海豚が訝しげに呟くと、巽は懐かしそうに、

 「可愛くなったね・・・海豚ちゃん・・・」

  途端に海豚の顔が朱く染まった。

 「本当に・・・綺麗になったよな・・・」

 「そ・・・そんな、巽さん・・・」

  海豚の顔は遂に、炉心溶融[メルトダウン]を起こしているほどに赤くなってしまった。

 「・・・四年になるんだっけ・・・写真で見るよりも、美人になったよな・・・」

 「巽さん・・・」

  海豚は感激して・・・泣き出してしまった。

 「わたし・・・そんな風に、言われたの・・・初めてです・・・」

  巽は慌てて・・・海豚を優しく抱きしめた。

 「俺も・・・寂しかったよ・・・あの時から、君のことしか考えられなくってさ・・・。 アニキは殆ど、夜勤とかでここにはいないし、帰ってきても一人ぽっちでさ・・・寂しくって、どうにかなりそうだった。 ・・・だけど、君と文通してたから・・・君からの手紙が、俺をまともな人間のままでいさせてくれたんだ・・・」

 「・・・だけど、やっぱり、こうして触れ合っていたいです・・・」

 「俺も・・・願わくば、君と一緒に暮らしたいよ・・・海豚ちゃん・・・」

  海豚は微笑を浮かべて、巽の顔を見上げた。

 「・・・海豚でいいですよ。 呼び捨てなら、巽さんも呼びやすいでしょ?」

 「・・・じゃ、俺のことも呼び捨てで呼んで良いよ、海豚・・・」

 「じゃあ・・・巽・・・・・・さん・・・」

  海豚はやっぱり駄目、と首を横に振った。

 「ごめんなさい・・・なんか偉そうな感じがして・・・」

 「そっか・・・・・・ま、無理強いしないからいいよ・・・」

 「じゃあ、巽さん・・・」

  と、海豚は目を閉じ・・・巽に顔を向けた。

 「前菜に・・・キスを・・・どうぞ・・・」

  前菜とは、民宿で育った海豚らしい表現だった。

 「一緒に、食前酒として・・・頂くよ」

  二人の唇が重なり・・・少し深く、口付けを交わした。 程なく、唇が離れた。

 「・・・日本海溝の、海洋深層水・・・って、ところかな?」

 「あとで、マリアナ海溝のも差し上げますよ・・・」

  悪戯っぽく微笑んで、海豚は台所に去った。

 「手伝うよ」

  巽の申し出に海豚は、

 「お願いしますね」

  満面の笑みで答えた。 洸が片付けた居間にちゃぶ台を出して、その上に、ご飯に肉じゃが、海豚の得意料理である海鮮料理・・・といっても、アジの塩焼とシジミの味噌汁に、アサリの酒蒸し。 そして、冷蔵庫に残っていた漬物。 それらがちゃぶ台に並ぶ。 日本ならではの粗食である。

 『いただきま〜す』

  二人は一緒に箸を持った。 巽が早速、肉じゃがの芋に箸をつけた。

 「・・・・・・う、美味い!」

 「そ、そんな大袈裟な・・・」

 「いや、マジで美味いよ! ・・・まあ、それまで、コンビに弁当だったというのもあるけどさ。 兎に角、美味いぜ!」

  巽が余りに絶賛し・・・事実、美味しそうに食べるので、海豚も嬉しそうな顔で食べた。

 『御馳走様でした!』

  小一時間ほどでアジの塩焼きは綺麗さっぱり骨だけになり、肉じゃがも煮汁を残さず、二人の胃の中に消えた。 その間、巽は五回もご飯のお代わりをしたのだった。 海豚は後片付けをし、茶碗などを洗っていた。

 「巽さん・・・すごい量を食べるんですね・・・」

 「ま、育ち盛りってヤツさ。 剣道もやってるから、結構、腹減るし。 その分、ご飯も美味しくなるってもんだ」

 「でも、すごく美味しそうに食べてくれると、こっちも作った甲斐がありますよ」

  そういう海豚も、嬉しそうに家事をこなしていた。

 「そりゃあ、シェフの腕が良いからね・・・否、板前が正確かな?」

 「もう、巽さんったら・・・」

  ・・・洗い物を終えると、海豚はバッグから着替えを取り出した。 時刻は八時を大きく過ぎていた。

 「お風呂、お借りしても良いでしょうか?」

 「あ、ああ・・・いいけど?」

 「じゃあ、失礼しますね・・・」

  と、風呂場を見つけると、再び巽に言った。

 「あ、あの・・・良かったら、『デザート』を・・・お風呂で召し上がりませんか?」

 「で・・・デザート?!」

  巽は素っ頓狂な声を挙げてしまいそうになった。 デザート・・・それは・・・・・・次回の講釈にて。

 

 

 


解説

 みなさん、始めまして・・・天船[てんせん]と申します。

 みなさんの書かれた作品を見ていて、自分も何か書こうと思い、筆・・・の代わりであるキーボードをとった次第です。

 今回はあまり淫らじゃないですけど、物語を進めながら、淫らになって行・・・く予定です。

 さて、(ネタが少ないので)マイキャラの名前の由来でも、徒然と・・・。

 

 メインヒロインの海豚ちゃんの場合、「臨海ドルフィン」という曲のタイトルを、名前っぽく変換しただけです。

 ・・・で、それだけじゃなんだから、特殊技能[スキル]として『水中でも活動可能』を付け、青姦・・・それも、海の中での水中プレイを実現

 させたく思ったのです。 ・・・で、誕生したのが、相手役の巽くん。

 

 彼は過去にDVを身近に体験し、それがトラウマになった・・・と、本編にあります。 あとは、海豚ちゃんの相手にふさわしく、同じスキルを持つ、 しかし、別種族の少年という感じです。

 

 二人の血に流れている、『ヒトにあらざる血統』である『獣種の血統』をスキルの由来にして、海豚ちゃんには、どこかのゴジラ小説で出てきた「デューテリオス」を、巽くんには「モスラ2」の『ダガーラ』に変身する・・・という設定なんですが・・・。

 夫婦喧嘩でもしない限りは、まず変身しませんね(汗)。

 ・・・と長くなるので、今回は、この辺で。 

 


感想メールを送る

 お名前:
 

 メールアドレス(記入しなくてもOKですが、そのかわり御返事が書けません):
 

 メッセージ:
 

 

掲示板に感想を書く

戻る