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ラーゼフォン・第三楽章・二人の街 エピソード・二人の時間
R'/文


 〈あらすじ〉

 21世紀初頭の東京。母子で暮らす高校生・神名綾人[カミナアヤト]は、模試会場に向かう途中に突如上空に現れた謎の航空部隊の攻撃に遭遇した。

 破壊された街で、綾人は自分の描いた絵に酷似した風景の中で、不思議な少女・美嶋玲香[ミシマレイカ]に出逢う。玲香に導かれるようにして地下鉄に乗り、神殿にたどりついた綾人は、卵から巨大な人型の存在「ラーゼフォン」が出現する瞬間にめぐりあわせた。

 「真実を見せる」その言葉に従って、謎の女性・紫東遙[シトウハルカ]とVTOLで東京を脱出しようと試みた綾人は、玲香に導かれてラーゼフォンに同調、体内へと入っていく。ついに目覚めのときがきた。

 超兵器ドーレムを粉砕したラーゼフォンは、そのまま東京から飛び去っていった。

 外から故郷を見た綾人は、そこに巨大な木星のような「TOKYO JUPITER」を目撃する。

 そこには、消滅したはずの外界があった。

 「外の世界はずっと前に消滅したはずじゃ……」驚く綾人に

 「そう教え込まれてきたわけよね。でも、この場所はこうやって存在している」遙は冷然と目の前の現実を突き付ける。

 

 

 エピソード「二人の時間」

 

  周囲は夕焼けに染まり、かつてのパイパーマートの広大な駐車場であった場所を、綾人と遙は二人で揃って歩く。

  食料と生活必需品の買い出しの後だった。お金を払っていないので、買い出しとは言えなかったが、やっていることは似たようなものだった。

  必要な物を店内で探し、手当たり次第に買い物用のカートの中に放り込んでいく。買い物の最中、遙は鼻歌交じりに、品物を見定め――主に製品の製造年月日と賞味期限を――、できるだけ状態の良い物を選んで、カートに入れていく。

  どんどん入れていく。金を払う必要がないのだから、別に遠慮する必要もない。それに、品物だって、このまま放置されたままでただ朽ちるのを待つだけより、誰かに利用された方が嬉しいに決まっている。いわば物資の有効利用だ、と綾人も思う。

  しかしだ、と綾人は思う。カートを押しているのは、綾人だ。遙はカートを綾人に押し付けると、自分は手ぶらで品物を定め、それを何の遠慮なく、次々とカートに放り込んでいく。そして、どんどんカートは重くなっていく。

  最初は綾人も、遙との二人だけの――本当に二人だけの――買い物を楽しんでいたが、カートの中身の重量が増えるのに比例して、気分はどんどん落ち込んでいった。特に、賞味期限の問題から食糧のほとんどが缶詰だったこともあり、カートの重量はかなりのものになっていた。

  いかにカートに車輪が付いていると言っても、所詮は買い物用のカートに過ぎず、そんなに重い物を運ぶように出来てはいない。それに、長い間放置され、全く清掃されていない店内は、床などにかなりの埃やゴミが溜まり、カートがスムーズに押せるような状態ではなかった。

  しかし、そんな綾人の苦労を知ってか知らずか、遙はカートを綾人に預けっぱなしにして、自分はさっさと先に行ってしまう。その後を、綾人は無言で重すぎるカート押しながら付いていく。

  これでは、我が侭な女主人の買い物に付き合わされる哀れな召使いだ、と綾人は以前に観た古い映画のワンシーンを思い出していた。あの時は、何故、我が侭で勝手気侭な女主人に、召使いは反発もせずに、黙って従っているだけなのかと思ったが、今ならその召使いの気持ちがよく解る。

  こういう場合は、反発しても無駄なだけだ。一番賢明なのは、黙って従うことであった。その方が楽だし、不必要な反発をして、彼女の機嫌を損ねるのも得策ではなかった。

  今の綾人には、彼女は必要な存在であった。ここに――東京ジュピターの外に――来て、綾人は初めて自分がどうしようもなく、無知であることを悟った。全てに対して――。

  もし、彼女――紫東遙がいなかったら、今頃自分はどうしていいか分からず、途方に暮れていただろう。それを考えれば、カートを押すことぐらい、何でもなかった。ただそれにしても、少し重すぎたが――。

  遙と綾人の二人がハイパーマートの店内での買い出しを終え、外に出た時、辺りはもう日が陰り始めており、美しいというより、怖いほどの赤さで夕焼けが、周囲の景色を染めていた。

  車一台ない、ただ不必要に広いだけのパイパーマートの駐車場は、舗装のアスファルトはひび割れ、所所捲り上がっていたりして、正直歩くだけなら何ともないが、荷物が一杯のカートを押しながら歩くのは難儀だった。

  綾人はカートの小さな車輪がひび割れに引っかかる度に、転倒しそうになり、慌てて体勢を立て直す。それを何度も繰り返す。

 「今度はどこ?」

  今日一日中、本当に色々なところに引っ張り回され、綾人はちょっと辟易気味であった。これから野宿生活するにあたって、当面の食料を主とした生活物資を揃えなくてはいけないのはよく分かっていたが、これ以上荷物持ちとして付き合うのは御免被りたかった。

 「もう陽が落ちるわ。ラーゼフォンの所まで戻って、落ち着く場所を探さないと」

 「ラーゼフォン?」

  綾人は鸚鵡返しに訊く。初めて聞く言葉だった。ただその言葉を聞いた途端、心の片隅で、ザワッとした何か分からないものが動いた気がした。が、その感覚もはほんの一瞬で消えてしまい、意識の表層に小さな波紋が生じただけであった。

 「そう、翼を持つ巨人。君はあれと同化していたのよ?覚えてないの?」

  遙は少し不思議そうに、綾人を見詰める。

 「ラーゼフォン……」

  綾人は言葉の響きを確かめるように、呟く。

  遠い、そう、何か遠い過去の記憶を思い出させる、懐かしい響きの言葉だった。

 

 

 『来年の七月、満を持しての開催となるオリンピック・カブール大会に向けて、スケートボード・ジャンプの日本選手団のメンバーが、今日発表されました。女子では前回、二〇二四年の平壌大会で惜しくも銀メダルだった七瀬ルイ選手に……』

  何気なくラジオを聴いていた綾人は驚いて、思わず食事の手を止めてしまう。

  二人は古い、放棄されたままの小型の漁船の船内に、寝袋を敷いて、携帯コンロで温めた缶詰を食べている最中であった。放棄されて久しい船だったので、バッテリーは上がっていて使いものにならず、明かりはパイパーマートで手に入れたキャンプ用の小型のランタンが一つあるだけ、二人はその明かりの下で、黙々とスプーンを動かし、味気のない缶詰だけの食事をしていた。

  会話がない中で、ラジオの音声だけが二人の間に流れる。ラジオは、遙が食事の準備を――といっても、単に缶詰を開けて、携帯コンロで温めるだけだったが――している間に、綾人が船内で見付けたものだった。

 「二〇二四年?」

 「どうかした?」

  綾人の様子に気が付いて、遙も食事の手を止める。

 「今、二〇二四年って言わなかった?」

  綾人はラジオを目で指して、確認する。

 「言ったわよ」

 「だって今は二〇一五年だろ?僕が一九九八年生まれで」

 「十七歳でしょう。ちょっと待って、私が混乱しちゃうじゃない」

  遙は自分の腕時計の日付を見て、指折りで計算する。

 「今日は十一月十日はずよね?」

  遙は独り言のように呟く。

 「十一月?」

 「二〇二七年のね」

  さも当然のことのように、遙は答える。

 「あなたは未来人?」

  綾人はその答えを聞いて、突拍子もない質問をする。

  遙はわずかな間、質問の意味をしかめなかったが、綾人が何を訊いているのか解ると、

 「ぷっ」と吹き出すと、突然「はっははは」と大笑いする。

  綾人が呆然としている中、遙は腹を捻って、遠慮ない笑い声を上げる。

 「何がおかしいんだ!」

  綾人は遙の遠慮のない笑い方にカチンと来て、声を荒げる。

  それでも、遙はしばらくの間、「クククッ」と腹を抱えて笑っていたが、笑いの衝動が収まると、今度は一転して真面目な顔をして、

 「説明には時間が掛かるわ。すぐに聞きたい?」

 「うーん、聞いても理解できないかもしれない……」

  少し困惑しつつ、綾人は答える。

 「私が言ったこと気にしているの?これが何かの陰謀かもしれないって」

  遙は言いながら携帯コンロで淹れたコーヒーの入ったマグカップを綾人に手渡す。

 「熱っ」

  綾人は一口啜って、あまりの熱さに顔をしかめる。

 「愛のように甘く、悪魔のように黒くってわけにはいかないけれど、コーヒーには違いないでしょ?」

 「何か浦島太郎の気分が解ったような気がするよ」

  綾人は改めて慎重にカップに口を付け、熱いコーヒーを啜る。じんわりとほろ苦さと甘さが口の中に広がる。

 「ラーゼフォンは玉手箱にしては、大きすぎるけどね」

  ははは、と今度は二人揃って笑い合う。

 「俺は友達を――玲香を助けてやれなかった」

 「……」

 「一つだけ教えてくれよ。かあさん、友達、今でも生きているんだろう?あの壁の向こう――」

  綾人は船窓から見える、まるで巨大な壁のようにそそり立つ斑紋模様の半球体に目をやる。

 「東京ジュピター。私達は、そう呼んでいるわ」

  遙も船窓の外に目をやる。

  ジュピターか、確かに木星にそっくりだな、と綾人は思う。いや、それ以外にあの壁を形容する表現はないだろう。

  つい昨日まで、自分自身があの壁の中にいたのだ。そして、外の世界は完全に消滅して、存在しないものと思っていた。

  東京ジュピターか、自分はあそこに再び帰ることが出来るのだろうか。綾人は不安になる。自分の全く知らない世界に、放り出されることがこれほど不安なことだとは思いもしなかった。

 「生きているんだよね?そこで」

 「ええ」

  遙は答えたが、自分の答えが少年にはほとんど慰めにはならないことは分かっていた。

 

 

 「――眠れないの?」

  深夜、ランタンの明かりを消した船内で、二人はそれぞれの寝袋にくるまって横になっていたが、遙は隣の綾人がまだ寝付いていないことに気付いていた。綾人はただ遙に背を向けて、まんじりともせず、何か考えているようだった。

 「……」

  応えはなかった。

 「もしかして、怖いの?」

  遙は挑発的に言う。

 「そんなことはないッ!」

  綾人は反射的に身体を起こし、反駁しようとする。が、すぐに冷静になる。

 「――多分、そうなのかもしれない。誰だって、全く知らない世界に突然、独りで放り出されたら、不安になるさ」

 「……あなたは独りじゃないわ」

  そう言って、遙は綾人を抱き寄せる。咄嗟に綾人は抗おうとしたが、優しく包み込むような遙の仕草にほだされ、そのまま身を任かせてしまう。

  いい匂いだ。綾人は遙の柔らかな肌を感じ、今まで感じていた不安が遠のく。子供の頃、泣いていると、よくこうやってかあさんは抱いてくれたっけ。綾人は温もりを感じながら、心地良い感覚に、たゆたう。

  が、しばらくして、ふと我に返る。子供のように扱われたことに、恥ずかしさを覚え、離れようとする。

 「どうしたの?」

 「もっ、もう大丈夫だから……」

  綾人は身体を離しながら、自分が遙の胸に顔を埋めていたことに改め気が付いて、動揺して、顔を赤らめる。

 「あらっ、イヤだ。なにHなこと、想像しているのよ」

  遙は綾人が自分の胸に意識を向けていることに気が付いて、咎める。しかし、その口調はあくまでも優しいものであった。

 「ちっ、違いますよ。僕はただ……」

  言い訳しようとするが、言葉が上手く出てこず、しどろもどろになってしまう。それに加えて、遙のHという言葉がきっかけで、今日の昼、二人揃って船から転落してずぶ濡れになった後、マーケットで濡れた服を着替えたとき、更衣室の破れた仕切りの隙間から覗き見えてしまった遙の下着姿を思い出してしまい、綾人は一層どぎまぎしてしまった。

 「ねぇ、しよっか」

  遙は綾人の動揺ぶりを半分面白そうに見ていたが、身体を寄せて、耳元で囁く。

 「えっ?」

  綾人はびっくりして、遙を見詰め返してしまう。驚くほど近くに遙の瞳があり、綾人をじっと見詰めていた。

 「やっぱり、Hなこと考えていたんだ」

 「そんなこと……」

  そんなことはない、と綾人は強く反発しようとしたが、自分が邪な考えを持ってしまったことに対する罪悪感から、それが出来なかった。

 「まあ、君ぐらいの年齢の子はそれが普通かもしれないわね」

 「すいません」

 「バカねぇ。謝ることなんかないわよ。ほら、こっちにいらっしゃい」

  遙は自分の寝袋を開いて、綾人を誘う。

 「えっ、でも……」

 「なに遠慮しているのよ。こんなになりながら」

  遙は綾人のズボンの脹らみに手をやって、悪戯っぽく笑う。

 「これはその……」

  綾人は慌てて腰を引いて、寝袋でそれを隠す。

 「ずーと、そのまま一晩中独りで悶々としているつもり?もしかして、綾人君、マゾ?それならそれで良いけど」

 「そんなことはないですけど……」

  言いながら、綾人は決心が付かず、躊躇する。

 「もう焦れったいわねぇ」

  遙は綾人の煮え切らない態度に業を煮やして、自分の寝袋から抜け出すと、強引に綾人の寝袋の方に潜り込んでくる。

 「ちょ、ちょっと」

  綾人は仰け反って逃れようとするが、寝袋に入った状態でそんなことは出来ず、掴まってしまう。

  綾人は観念する。あまりジタバタするのもみっともない。それに、遙は女性としても十二分に魅力的であった。

  手際よくズボンを下ろし、露わになった綾人のモノをゆっくりと優しく撫でる。

  なれない刺激に思わず、ビクッと腰を引いてしまうが、すぐに恥ずかしさより、快感がまさる。遙の手はひんやりとしていて、柔らかく気持ちが良かった。

 「どう?」

  遙は指で優しく包み込むように優しく愛撫しながら、訊く。

 「凄く気持ちいいです」

 「出そうになったら言ってね。このまま出しちゃうと大変だから」

  言いながらも、愛撫を続け、刺激を与え続ける。

 「……あの、ちょっと待って下さい」

  綾人は遙の手を抑える。

 「何?」

  遙は手の動きを止め、顔を上げる。

 「その……もう出そうになって……」

  恥ずかしさで、消え入りそうな声で言う。

  それを聞くと、遙は優しく笑って、自分のスカートからハンカチを取り出し、それを押し当てる。

 「はい、いいわよ。我慢しないで出しちゃいなさい」

  遙はそう言って、包み込んだハンカチの上から、適度な刺激を与える。

  いったん、遠のいていた快感が再び、戻ってくる。そして、すぐにまた出そうになる。しかし、綾人はぐっとそれを堪える。この気持ちよさをもう少し長く感じていたかったし、それにあまりに早く出してしまうのもみっともなかった。子供扱いはされたくなかった。

 「もうバカねぇ。我慢しなくていいって言っているのに」

  そう言うと遙は手の動きを早める。それに伴って急速に快感が高まる。

  綾人の息遣いが一段と激しくなったのを見て、遙は最後にハンカチで敏感な部分の先端を強くさする。

 「あっ」

  綾人は思わず声を漏らし、その刺激に堪えられずに、出してしまう。一度、出始めると、もう止めることは出来なかった。

 「遠慮しなくてもいいのよ。全部出して、すっきりしちゃいなさい」

  そう言って、遙はハンカチで綾人の出すものを受け止めつつ、刺激を与え続ける。

  綾人はその快感に溺れて、一気に全てのものを吐き出してしまう。

 「うわっ、凄い量ね」

  ハンカチに出されたものを見て、遙は少し呆れたように言う。

 「ごめん」

 「だから、謝ることはないって言っているでしょう。で、どうだった?すっきりした?」

 「お陰さまで」

 「そう、それは良かった。じゃ、最後にもう一度見せなさい」

 「え、何で?」

 「最後にきちんときれいにしないと駄目でしょう。ほら、見せなさい。拭いてあげるから」

  遙はどこからか新しいハンカチを取り出していた。

 「いいよ、それくらい自分でやるから」

  綾人は急に気恥ずかしくなって、遙からハンカチを奪おうとする。

 「バカねぇ。今更、なに照れているのよ」

  巧みに綾人の手を避けて、遙はもう一度、ハンカチを綾人のモノに押し当てて、今度は本当にゆっくりと、そして丁寧に拭いてきれいにする。

 「あら、やだ。もう?」

  遙は拭いている最中に、また急に堅くなり始めたことに気が付いて、呆れたように言う。

 「だから、いいって言ったのに」

  綾人はふてくされて、横を向く。

 

 ――続く――

 


解説

 TVアニメのラーゼフォンの二次小説です。

 本文の内容自体は、TVで放映された第三楽章「二人の街」のAパートとBパートの中間の物語です。(CM中の話?w)

 実は第三楽章のみしか見ていないので、設定的にかなり間違っているかもしれません。はっきり言って、紫東遙(シトウハルカ)役の久川綾の声に触発されて、思いつきで書いてしまったものです(笑)

 TV本編を見ていない人は、いまいち分からない内容になってしまっています。

 一応、続きを書く予定はあるのですが、この手の内容のものがどの程度受けるのか分からないので、続編は不明です。ただ、Hシーンが途中で終わっていますので、その続きだけは書くつもりでおります。

 あくまでも要望があればの話ですが(^^;

 


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