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ヒーリング
江戸屋電気堂/文


 「では、私の家で合宿したらどうでしょう?」

  楓が最にそう申し出たのはエンジェリック・レイヤー全国大会の開催を控えたとある日であった。

  最は誰もいない男子トイレで王二郎の精をうけて臨んだ関東大会の決勝に敗れていた。王二郎の想いをもその身の内に抱いてもなお、奇跡の新人《ルーキー》の想いが彼女のそれを上回ったのだ。

  有利な組み合わせなはずだった。

  しっかりと防御を固めて敵の攻撃を捌きつつ、より重いダメージを的確に与えてゆく。最と白姫のこのスタイルは、手数で翻弄しスキを生み、そこに必殺の一撃を叩き込むという、典型的な軽量型のスタイルをとるみさきとヒカルに対し、もっとも有効な戦術だったはずだ。予想されるどんな攻撃も捌ききれる自信が、最にはあった。そしてスキさえ見せなければ白姫をKOできるだけの決定力はヒカルにはない。

  決定力の不足。それこそがヒカルの最大の弱点だった。そして守りの堅い白姫はそんなヒカルにとってまさに天敵だったはずなのだ。

  だが、ヒカルの動きは最の予想を超えた。そして白姫自身のアドバンスであったはずの重さを逆手に取った一手で、満身創痍のヒカルは逆転勝利を手にした。

  スキがあったとは思わない。ただヒカルが、そしてその操縦者《デウス》たる鈴原みさきが最を上回っていただけだ。

  奇跡の新人《ルーキー》。

  それが鈴原みさきに与えられたふたつ名である。

  だが、それが自分につけられた極寒の精密機械《アイス・マシーン》と同様、その本質を表していないことを最は思い知らされた。

  これは奇跡なんかじゃない、必然だ。

  最は敗北を知った瞬間そのことを確信した。王二郎に支えられてなおおよばなかった鈴原みさきの想いの靭《つよ》さ。それを最は実感したのだ。

  くやしかった。王二郎の期待に応えられなかった自分が不甲斐なかった。だが、不思議と満足感もあった。いい試合だったと心の底からそう思える。だからこそ純粋にくやしさも募るのだ。

  そして胸の内にふつふつとたぎる熱い想い。

  今度は負けない。

  あきらかに試合前よりもエンジェリック・レイヤーにかける想いが一回り大きく靭くなっている自分に気付いた最は思ったものだ。

  そうか、これがあの娘の『奇跡』なのかも知れないな……

  そんな感慨にふけりつつ、ある種の達成感を抱いて選手控室でぼうっと自らの思いに沈んでいた最に声をかけたものがいた。

 「あのう、私を全国大会に連れていってもらえませんか?」

  顔をあげた最の視界に、お下げ髪でメガネをかけた少女の柔らかい笑顔が映る。

  斎藤楓。

  準決勝で最と同様にヒカルに敗れた天使《エンジェル》ブランシェの操縦者《デウス》だ。その笑みを絶やさない親しみ易い雰囲気と、おっとりした立ち居振舞いとで男性に圧倒的な人気を持つ操縦者《デウス》でもある。人呼んで癒しの笑顔《ヒーリング・スマイル》。

  人を寄せつけない狷介さと、緻密で容赦ないその戦いぶりから極寒の精密機械《アイス・マシーン》と称され、女性に絶大な人気を持つ最とはある意味対照的な操縦者《デウス》と言える。

 「私のセコンドについてくれるというのか?」

  全国大会への切符は二枚。すなわち地方大会の優勝者と準優勝者に与えられる。最は決勝で敗退こそしたが、全国大会への切符は手に入れていたのだ。そして全国大会では専任のセコンドがつくことが許されている。

  的確な情報分析によって試合における操縦者《デウス》のサポートを行なったり、天使《エンジェル》のメンテナンスやチューンを担当したり、とセコンドのパートナーとしての役割はけして軽くはない。いや、強豪ひしめく全国大会で生き抜いていくためには必要不可欠な存在だといえる。

  だが、その狷介な風貌ゆえに、広く名の知られた操縦者《ゼウス》でありながら最には未だセコンドのあてがなかった。ハイパーモードというウラワザに近い能力を自分の天使《エンジェル》に与えた技術の持ち主である楓がセコンドに付いてくれるというのなら、こんなに頼もしいことはない。

 「はい。最さんさえよろしければ」

  ちいさく首をかしげてにっこりと笑む楓。

 「私の方には問題ない。いや、こちらから改めて頼む。私のセコンドについてくれないか」

  立ちあがって小さく頭を下げる最。

 「はい。では一緒にがんばりましょうね」

  そんな最に楓は笑顔のまま片手を差し出した。そして最がその手を取った瞬間、二人のタッグが成立した。

  チームを組むとなれば二人でしなければならない打ち合わせは数多い。今後の戦略の見とおしや、それにともなった戦術の開発。それに合わせた天使《エンジェル》のチューン。当然、操縦者《デウス》自身もそれに合わせたトレーニングが必要だ。

  とりあえずは街中のトレーニングセンターを利用していた二人であったが、いろいろと不都合が出てきた。

  共に上位ランカーの二人であるからポイントはたんまりだったし、ショップのスタッフ達もVIP待遇で便宜を図ってくれた。だが、二人はいかんせん目立ち過ぎるのだ。女性に人気の最と男性に人気の楓とのコンビだ、人気度だけでくらべたら優勝した鈴原みさきと小林鳩子のコンビすら上回るかも知れない。だから二人のゆくところ、望む望まざるかかわらずに常に人の輪ができてしまう。

  ショップにとってはそれも宣伝のひとつだからむしろ歓迎してくれたが、一般プレーヤーにはやはり迷惑をかけてしまう。なにより外野の騒がしさのために二人が集中できないのが困りものだ。

  そこで浮かびあがった対策が冒頭の楓の案、すなわち斎藤家でのプチ合宿であった。

 「いいのか?」

 「はい。家は夜家政婦さんが帰ってしまえば私一人になってしまいますからなんの気兼ねも要りませんし、大抵のショップに負けないくらいレイヤーの設備も整ってます」

 「ふむ、条件は揃っているというわけか」

 「ええ。それに、私、単純に最さんを家にお呼びしたいんです。今も言ったように、私、夜は一人で過ごさなくちゃならないんです。でも、それってやっぱりさみしくって……だから、お友達に泊まっていただくのはいつでも大歓迎なんです」

 「では、そういうことならお願いしよう」

 「はい、ぜひ」

  かくしてプチ合宿が決行されることになった。

 

     ※

 

 「ふう……」

  そして合宿当日の夜。斎藤家の妙に広いリビングキッチンで最は一人くつろいでいた。

  北欧風であかぬけたデザインの白木の椅子に腰掛けた最は、白地に紺の縦縞のパジャマを身につけている。むろん、男物だ。とはいってもよく女の子がサイズの大きい男物をだぶっと着こなしたりするのとは全く違う。姿勢の良い長身には男物の直線的なシルエットがピタりと決まり、高く組まれた長い脚がこれまた様になっている。くつろいでいるにもかかわらず、どこかにシンが通っているようなそんな整った美しさがあった。

  ふだんはばさばさした感じの無造作なシャギーの入った髪が、今はしっとりと湿っているのは風呂上がりのせいだ。楓は最と入れ替わりに只今入浴中。「お客様が先です」との楓の言により、最は一足先に風呂を使ってこうしているというわけなのだ。

  始めて訪れた他人の家だというのに、最はとてもくつろいだ気分になっていた。

 「癒しの笑顔《ヒーリング・スマイル》か……」なんとなくそうつぶやいてみる。

  自分や鈴原みさきに与えられた二つ名は必ずしもその本質を表しているわけではないと思うが、楓に与えられたこの名はまさしく楓その物を表しているのだということが、こうして共に時を過ごしたことで最にも実感できた。

  楓が常にその身にまとう穏やかな雰囲気は、周囲の人間の緊張感をごく自然にとりのぞいてリラックスさせてしまう。その癒しのオーラの中心はいうまでもなくその笑顔だ。まさしく癒しの笑顔《ヒーリング・スマイル》であった。

  私とは全く正反対だな、と最は思った。

  最の長身と端正に過ぎる美貌とは、彼女が望む望まざるに関係なく、周囲に威圧感をまきちらしてかすかな緊張を強いてしまう。そんな自分を自覚したときほど誰呼ぶとなく自然についたあの二つ名がのしかかる。

  極寒の精密機械《アイス・マシーン》。

  そんなことで自分自身を嫌いになるほど弱い最ではなかったし、なによりそんな最を受けとめてくれる王二郎という存在も今ではいるのだが、それでもこの二つ名はどうしても好きになれなかった。

  たしかにクールというか実利的なタイプだとは思うし、自分にも他人にも厳しいほうだという自覚もある。だが、どちらかといえば情に脆い性質《たち》だと自分では思っているし、こんな冷酷非情みたいないわれ方をされるのは正直なところ心外なのだ。

 「ああ、いいお湯でした」

  ほえほえした声が最の物思いを打ち破った。

  そちらに目をやると、濡れた髪にタオルを当てながらキッチンに入ってきた声の主が目に入る。体にはタオルを巻きつけただけのその姿は、もちろん楓だ。他に身につけているものと言えば、トレードマークのメガネのみ。そのあまりにもしどけない姿に最は一瞬度肝を抜かれた。

  凍りついている最を尻目に、楓はとてとてと大きな冷蔵庫を開くと一本の小さな瓶を取り出した。茶色っぽい中身のそれは、もちろんコーヒー牛乳だ。続いて冷蔵庫の脇にぶら下がったもので栓を開けると瓶に口を付け、左手を腰にやり、その身を反らしてのいっき飲み。

 「風呂上がりの一杯はやっぱり最高ですわ」

  ぷはあ、と息をしてそんなことをのたまう。

  冷蔵庫のドアに手をやってからこのセリフまで、全く動きに淀みがない。おそらく日常的に繰り返されている行動なのであろう。

  お、おやじ?

  反射的に最の心にそんな言葉が浮かぶ。意外と言えば意外だったが、それが妙に様になってる辺りがさらに意外と言えた。

  そして、さらに最があっけにとられる事態が発生する。

  空き瓶をテーブルに「たんっ」と置いた瞬間、楓が体に巻きつけていたタオルがはらりと落ちたのだ。マンガだったら一コマ分、あきらかに時間が凍った。

 「きゃっ」

  一瞬の間の後、悲鳴をあげてうずくまる楓。

  あまりにもスキをつかれてさしもの最も平常心を失い、本来なら見ないように顔を背けるべきところを楓のそんな様子をじっと見つめてしまう。

  最のまぶたのうちに今の一瞬に見えてしまった楓の裸身が焼きついていた。

  ふっくらと盛りあがった豊かなバストとその頂点の淡い桜色の蕾。きゅっ、と絞り込まれたウエストに深く刻み込まれた縦長のへそ。女らしくまろやかに張り出した腰。そして真っ白な太腿の間の意外なほどにおい茂った翳り。

 「み、見られて…しまいました?」

  うずくまったまま上目づかいに見上げてくる楓に、思わずこくこくうなづいてしまう最。

 「あ、あはは…恥ずかしいところを見られてしまいましたあ」

  楓はテレ隠しに笑いながら自分で頭をコツンとやりながら立ちあがって、タオルを巻きなおした。

 「綺麗だな、楓は」

 「は?」

  ぽつんと漏らした最の言葉の意味が良くわからず、楓はぽかんとした顔をする。

 「楓の体は綺麗だといったんだ」

 「まあ、ありがとうございます」

  相変わらずタオル一枚のままぺこりと頭を下げると、「でも……」と言葉をさらに継いだ。

 「最さんのほうがずっとお綺麗ですわ」

 「そんなことはない。私は…その…胸もないし……全体に肉付きが薄くてギスギスした感じがする。はっきりいって女らしくないと思う」

  にっこり微笑む楓に対し、最は彼女にしては珍しく、面を伏せてぽつぽつと語る。

 「だが、楓の体はどこもかしこも柔らかくて、あったかい感じがする。女の体はそうあるべきだと私は思う」

  そして伏せていた面を上げると、楓を正面に見据えて言った。

 「正直に言って、さっき楓の体を見てうらやましいと思った」

  それはあからさまとも言えるコンプレックスの吐露であった。

 「まあ。最さんはご自分のステキさを全然ご存知無いのですね」

  両手を広げて『やれやれ』といったポーズを取りながら楓はそんなことを言う。

 「わかりました。では私が最さんがどんなにステキか教えて差し上げますわ」

  そういうやいなや、最の手を取るとキッチンを出てずんずんと自分の部屋へと歩き出す。相変わらず体にはタオル一枚と言う格好のままだが、そんなことは気にも止めていない。

  表面的にはいつもと変わらずにこやかな笑みを浮かべている楓だったが、最はその笑顔に有無を言わせぬ迫力を感じ、つい手を引かれるままになってしまっていた。

  パタン。

  ドアが開いた先の部屋は、柔らかい色彩に満ち、愛らしい小物が随所に置かれた、実に絵に描いたような『女の子のお部屋』だった。ちょっと変わっているところといえば、そこらのトレーニングセンターに負けないくらいのエンジェリックレイヤーの設備があることくらいだろうか。

 「まずはそこにお座りになって下さい」

  びしぃっとベッドを指差し、丁寧な口調で、しかしうむをいわさずに最をベッドに腰掛けさせる。

  おっとりとして控え目、という印象はすっかり覆ってしまった。パートナーとしてかなりの時間を一緒に過ごして来たが、これまではその誰もが抱く第一印象どおりの人柄だったから、なおさらスキを突かれてしまった格好だ。

  冷静沈着。絵に描いて額にはめたような平常心をもってなる極寒の精密機械《アイス・マシーン》も、おかげてペースを乱されっぱなし。わけもわからず、ただなにか悪いことでもしでかしてしまったような気分にさせられている自分に気付き、ますます唖然としてしまう。

  か、楓ってこんなに強引だったのか?

  心の中でそうつぶやくのが精一杯だ。

 「そもそも……」

  一方楓はといえば、そんな最の狼狽をよそに早速説教を始める。左手を腰にやり、脚は肩幅。そして胸前で人差し指を立てた右手を振りながら、というポーズで。しつこいようだが、やはりタオル一枚の姿だ。

 「最さんは女の子みんなの憧れなんです。理想なんです。そこんとこ、おわかりになってるんですか?」

 「たしかに私には女の子のファンが多い。だが、それは私が女らしいからじゃあるまい。むしろ逆だろう」

  ちっちっちっ、と立てた人差し指を振って見せる楓。

 「違いますわ。今は女の子も強く、カッコ良く、の時代なんです。だから最さんは理想的な女の子なんです」

  そして、最の隣にすとんと自分も腰掛けながら「そう言えば……」と続け、「私だけ裸を見られるのは不公平です」と言うなり、いきなり最をベッドの上に押し倒してパジャマのボタンを外し始める。

 「お、おい。楓…いきなりなにを……」

  当然最はそう言うとあわててその手を押しとどめようとする。

 「見ましたよね?」

  必死に置きあがろうとする最を上からのしかかるようにして押さえこみながら、それでも笑みを浮かべたままそう問い返す楓。もちろん先ほどのハプニングのことを言っているのは間違いない。

 「あ、ああ。あれはすまなかった。だが……」

  だがそれはそっちが勝手に……という当然の抗議を、しかしなが最はすることが出来なかった。楓の笑顔がそれを許さなかった。

 「なら私には最さんの裸を見る権利があります」

  そういってさらににこやかに笑みをこぼす。

  その極上の笑みはあっという間に最の心を和ませ、抗議しようとする気持ちを溶かしてしまう。ベッドの上に押し倒されると言う、あきらかに常軌を逸した状態ですら、「それでもいいか」と納得させてしまう。

  恐るべし、癒しの笑顔《ヒーリング・スマイル》。

  そのにこやかさの秘めたる力に最は押されっぱなし。ただ、内心そうつぶやくのが精一杯だ。見る間にパジャマの前がくつろげられ、ブラをつけていない胸があらわにされる。

 「ほら……やっぱりステキですわ」

  ほうっ、とやるせないようなため息を突く楓。メガネの奥で目がすうっと細められた。

  たしかに美しかった。

  長身でいかつく見られがちだが、こうして直に見る最の上半身はひどく華奢だった。肩幅こそあるが、骨細で胸板も薄い。たしかにバスト自体は小ぶりだが、繊細な骨格にそれはとても似つかわしかった。

  つうっ、と楓の指先がバストの裾をなぞるように最の肌の上をすべる。感に堪えたように目がさらに細められる。

 「はあっ……」

  楓がため息を漏らすのも無理はない。それほどに最の肌は繊細だった。

  白さもさることながら、その肌目《きめ》の細やかさは人のものとは思われない。

  さらりとして、あくまでなめらかなその感触は、まさに陶人形そのもの。だが、指先はその薄い薄い皮膚の下に確かに血が流れているという証しのぬくもりを伝えてくる。力をこめれば押し返す弾力も感じとれる。はりつめたその皮膚は、ちょっとでも爪をかけたらとたんに破れて血が吹きだすのではないかと思わせるほどに繊細で、それゆえに磁器の硬質感と人の肌としてのしなやかさとを、危ういくらいに兼ね備えているのだ。

  楓の指先はついっとバストの裾をなぞり終えると、今度はその微妙な曲線を描く丘をすうっと上り始める。

 「お、おい。楓……」

  さすがに最があらがいの声をあげるが、その指先は何事もなかった用にその頂点の小さな蕾をつつく。

 「はうっ」

  肩がピクリと奮え、意図されない声が漏れる。

 「ふふっ。敏感なんですね……すごく」

  妙にうれしそうな楓の声。

 「本当にかわいらしいですわ、最さん」

  指先は肌よりもほんの少しだけ赤みの濃い突起を軽くつついたあと、その周辺で微妙に遊ぶ。

 「あ…ああ……やめ…て……」

  かすかな感触だからこそ、かえって意識が向いてしまう。王二郎もこんな愛撫をする。だが、王二郎は最の意識がそちらに向いたと知るや、すぐに強い刺激を与えて一気に彼女の肉体に火をつけてしまうが、楓のそれはいつまでたってもあるかなきかの刺激を、しかし途絶えることなく送りつづけてくるだけだ。

 「だ、だめ…だめだ……」

  いけない。このままではスイッチが入っちゃう。

  最は自分が雰囲気に酔い始めているのを感じていた。

  最は実はこうした雰囲気に弱い。まず気持ちにスイッチが入り、それによって躯が淫らなモードにシフトするのだ。

  王二郎との時は、まず言葉で心のスイッチを入れられる。淫らな言葉を囁かれ、それに羞恥する自分に女を感じ取ると、ずるずると雰囲気に飲みこまれてゆくのだ。

  楓はほとんどなにも言わず、ただあるかなきかのかすかな愛撫でその雰囲気を作っていった。相手が女性であると言うことも忘れ、意識がどんどん淫らな方に傾いてゆくのをもう止められない。そうやって躯はどんどん敏感になってしまうばかりだ。

 「ふふ、どんどん敏感になっていくみたい」

  そして楓はそんな最の状態をしっかり見抜いていた。そして自分もベッドに倒れこむと、顔をたった今指を遊ばせていた部分へと寄せる。

  ちゅっ…

  いきなり膨らみの頂点に軽くくちづけられ、敏感な蕾を小さく吸い上げられた。

 「ひうっ」

  どきん、と心臓が飛びあがって送りこまれた刺激に反応する。

  ああっ、だめだ……気持ち…良い……

  もう観念するしかなかった。こうなった自分はもう相手に逆らえないことは王二郎相手にイヤと言うほど知らされてきた。でも、同性相手にもこんな気持ちになるとは予想もしていなかったので、最はかなりとまどっていた。

 「ほんとに感じやすいんですね、最さん。じゃあ、こうしたら……」

  ちゅっ…ちろちろっ…

  今度はくちづけた後に舌先でくすぐってきた。

 「ひゃうっ!」

  さらに大きな反応に楓はやけに満足そうな表情を浮かべるが、すっかり狼狽している最にはそんなことにかまっている余裕はなかった。

 「気持ち…いいんですね?」

  かくかく、といった感じで機械的にうなづき返してしまう最。ああっ、なんて恥ずかしい答えを、などと思うが今さら後の祭り。ただ首筋を朱に染めて顔を背けて見せるのが精一杯だ。

  むに。

  敏感になった最の胸肌に柔らかいものが押し付けられた。先端にかすかにこりっとした感触がある。

  楓の乳房だった。いつのまにか体に巻きついていたタオルはなくなり、やわらかい肌がすべてさらされている。

 「ひあっ」

  最はまた悲鳴をあげる。完全におおいかぶさってきた楓は、顔をそむけたことで上を向いていた耳の中を尖らせた舌でちろりと舐めてきたのだ。

 「や、やめて…」

  だが、抗議の声が弱々しい。体の芯からすっかり力が抜けてしまっているのだ。こうなってしまったら逆らうことも出来ず、相手のなすがままになってしまうことは王二郎によっていやというほど教えられた。そして、くやしいけれどその果てに待っているものが快楽であることも十分に知っている。最は身を委ねる覚悟を決めた。

 「やっと素直になれたみたいですね」

  楓は早速、最に愛撫に抵抗する気配がなくなったのを感じとる。

 「いいんですよ、感じて。恥ずかしがらずに好きなだけ気持ちよくなってください。もっともっと感じさせてあげますから。だって、そうしている最さんってとっても可愛いんですもの」

 「可愛い? 私が?」

 「はい、とっても」

 「バカな。極寒の精密機械《アイス・マシーン》などと呼ばれる女が可愛いはずがない」

 「ぷっ…ほんとうに可愛いひと」

  楓は小さく吹きだしてしまう。

 「気にしてらしたんですね、コードネーム。あれはあなたの戦い方につけられた名前です。あなたについた名前じゃありません。領域《レイヤー》を離れたあなたはとっても可愛い女の子です」

  そう言いながら、楓は最の胸肌に舌をはわせ、しこり始めた小さな乳首を指先でくりくりといじりまわす。すでにスイッチが入ってしまっている最はそんないたずらのたびに、あっ、あっ、などとこらえ切れずに声をあげるばかり。

 「最さんの胸、温かいです」

  肌にほほを寄せた楓はそう言うと、胸に耳を当てて目をつむる。楓のかけているメガネのフレームが火照りはじめた肌にヒヤリと感じられた。

 「それに…ほら、すごいどきどきいってます。冷たくも機械でもないですよ。最さんは女の子です。とっても可愛い、女の子です」

 「私は…可愛い…のか?」

 「はい」

  楓の返答にためらいはなかった。

  最を可愛いと評したのは楓で二人目だ。一人目とはもちろん王二郎なのであるが、彼は本気と冗談の区別が全くつかない男である。そんなとらえどころの全くない彼の言葉に信頼を置くことはどうしてもできず、自分はただからかわれているだけなのだ、という疑念を最は捨て去ることができなかった。

  それでも最はかまわないと思っていた。たとえ弄ばれているだけだったとしても、彼女を女の子として扱ってくれたのは後にも先にも彼だけだったし、ときどき与えてくれる優しさは、嘘だったとしてもあまりにも甘過ぎた。

  とはいえ、そう覚悟を決めてはいても、だまされているだけかもしれないという疑念は最の心に常にしこりとして残っていた。甘い言葉に心を融かされ、底意地が悪いけれども巧みな愛撫に体を熔かされても、それでもそのしこりが消えることはけしてなかった。

  もし王二郎が最のこんな悩みを聞かされたならば、「心外だなあ、僕はこんなにもあなたを可愛いと思っているのに」などと即座に言うことだろう。そしてそれはまごうことなく本心なのであるが、そういった言葉がいちばん信用ならないのがこの男なのだ。いわば、最のこの悩みは全て王二郎の不徳のいたすところなのだが、そんなことはこのウソつき男の誠意を証明することが不可能な以上、なんの慰めにもなりはしない。

  だが、おなじ「可愛い」という言葉も楓がいえば話が違う。楓の言葉はまっすぐに最の心のうちに入っていき、そこにあったコンプレックスのしこりをすうっ、と溶かしてくれた。とても素直にその言葉を信じることができた。

  心のわだかまりが軽くなった最は、あらためて自分にのしかかっている楓の肉体を意識しだす。

  どこもかしこも柔らかい曲線で囲まれたその肉体は、どこかけぶるような優しさを感じさせる。上から押しつけられているふくらみはあくまでやわらかく温かい。思わず手を上げて指先でもその優しい感触を確かめてしまう。

 「柔らかい…」

  さらに口にまで出してしまった。それほどにそれはやわらかく、温かかい。ずぶずぶと指先が沈みこんでゆくようなやわらかさがそこにはあった。楓の肌は、あくまでもなめらかな最に対し、しっとりと吸い付くような感触だ。いわゆるもち肌というものだろう。とても心地よい感触が指先に残る。

 「もっと、触ってもいいですよ」

  楓のそんな言葉にさらにふにふにとその感触を楽しむ最。

 「やっぱりうらやましいな。バストのことでどうこういってる男共をバカにしていたが、たしかにこれは気持ちがいい」

  王二郎にこの楽しさを与えてやれない自分の体がやはりちょっぴりうらめしい。

 「あら、最さんのバストだってキレイだし、感触だって気持ちいいです。それにとても敏感だし」

  そう言いながらお返し、とばかりに自分最のバストへの愛撫を再開する。

 「最さんはご自分でなさったりしないんですか?」

 「自分でって…何を?」

 「オナニーです」

  質問の意味をとらえかねて怪訝そうな最に、楓は言われたほうがどぎまぎしてしまうほどあっけらかんとそう答えた。

 「私、夜は一人でいること多いから、ついやっちゃったりするんですよ」

  実は、このところ結構一人遊びにふけることの多い最だった。王二郎となかなか会うことができないさびしさから、ついその愛撫を思い出してそんな行為にふけるのだ。だからそんな楓の気持ちもよく理解できた。

 「でも、自分でするより、人にしてもらったほうが気持ちいいです」

 「彼氏は作らないのか? 楓だったらよりどりみどりだろうに」

 「私、男の方がちょっぴり怖いんです。だからどうしてもひいちゃうんです。家に男の人がいることがあまりないせいなんでしょうけど」

  いつのまにか楓の声が少し遠ざかっていた。ななめに胸元にかぶさっていた上半身は、すでにそこにはなく、ちろちろと官能をかきたてる細やかな愛撫もいつしかおへそのあたりに移っていったかと思うと、いまや下半身ににまで移動していたのだ。

 「さあ、ここも見せてくださいね」

  そう言ってパジャマのズボンに手をかける。

 「ま、待った。たのむ、それは……」

  覚悟を決めたといっても、やはり同性相手の行為におそれが先立ち、最はなんとか最後の砦を守ろうとする。

 「ダメです」

  必死に哀願する最にににべもなくそう答えると、楓はズルズルとそれを下げ出す。

 「や、やめっ……」

  必死に抵抗しようとするが、感じはじめて躯の芯から力のぬけている最の抵抗など、一回り小柄な楓でも容易にはね返せる。じたばたしながらも徐々に下着ともども脱ぎ下ろされてしまう。

 「ふふ、やっぱり濡れてる」

 「み、見ないで。たのむから……」

  必死で手で覆い隠そうとするが、楓はそれを許さない。

 「あ、ああっ、恥ずかしいっ!」

  楓の息を下腹部に感じた最は、そう叫んで目をつぶる。

 「はあっ、今度は私がうらやましくなっちゃった。最さんのここってすごくキレイ」

  たしかにほっそりした太腿の合間にある最の秘所はひどくつつましい外見を備えていた。

  秘毛は細く素直で、猥雑さを全く感じさせない。その淡い翳りのかげにのぞいて見える秘唇は薄く小ぶりで、先ほどからのいたずらにかすかにほころびながら血の色を昇らせ、さらりとした蜜をにじませ始めていた。

 「さあ、もっとよく見せてください」

  というと、楓は両膝に手をかけて長い脚を割り裂きはじめる。

 「いやあっ!」

  叫びながら股間を両手で押さえて必死に脚を閉じようとする最。だが、手でカバーし切れない脇腹やへそといったところをちろちろと舌先で愛撫されると、どんどん力が抜けていってしまう。

 「ムダですよ。最さんはこんなに感じ易いんですから」

  いつのまにか割り裂かれた両膝の間に陣取った楓は、それでもまだ股間を隠そうとする両手をはねのけ、今度こそその秘められた部分をまじまじと観察する。

  色づきほころびかけているとはいえ、未だその肉の花びらは咲きほこるまではいかず、わすがににじませた蜜にかすかにぬめ光りながら、これから待ついたぶりをおそれてかかすかに息づいている。

  花びらの合わさる頂点にあるべき花芯は、いまだ厚い莢におおわれたままだ。

 「ひうっ」

  最の体がはねる。楓が唇を寄せて莢の上から感覚の芯にくちづけをしたのだ。

  ちゅっ…ちゅっ…

  さらに花びらにくちづけると、今度は舌先でくすぐってゆく。

 「あ、だめっ、だめえっ」

  そこからピリピリと快楽の信号が背筋をとおって脳の奥底に、そしてそこから全身へと伝わってゆく。どんどん自分の体が恥ずかしい状態になってゆくのを自覚しつつも、もはやどうすることもできない。

 「くっ、くくっ…」

  最がかぼそいうめきを絞るたびに楓の目の前で肉の花がほころびてゆく。色を濃くして花開きながら蜜を吐く。舌先にそのさらりとした蜜を感じながら、楓は「ほんとに可愛いです」と心のなかでくりかえしていた。

  楓は以前からこの背が高く口数の少ない少女が、その風貌とは裏腹にとても優しい心の持ち主であることに気づいていた。ただ、その優しさのあらわしかたがひどく不器用なのだ、と言うことを。

  最は強い。自立した、一人でなんでもできる、そんな強さを持っている。それはたしかなことなのだけど、だからといって孤高を望んでいるわけではないに違いない、楓はそんな風に感じた。

  だから、東京地区大会が終わった時に声をかけ、手を差し出した。友達になりたいと心から願った。

  なかばいたずらのように始めたことだったが、自分の愛撫にかぼそく啼き声をあげて身を震わせる最の姿は本当にとても可愛く感じられ、もっと感じさせてみたい、もっと乱れさせてみたいと思った。

  いつしか楓を押しとどめようと股間に伸ばされていた最の両手と、それをはねのけていた楓の両手は、どちらからともなくにぎりあわされていた。

  しがみつくように握りしめてくる最の手を、楓はやさしく握り返してやる。そうしながら舌先で濡れそぼち始めた襞肉をまさぐる。

  同性の性器に口を付けるというその行為に、楓は不思議と抵抗を感じなかった。

  ひとつは先ほども触れたように、最のその部分のたたずまいがとても清楚だったからだろう。

  細くて量も少ないそこの毛は、陰毛などという言葉が似つかわしくないほどにやわらかく素直で、舌をはわせてもじゃりついたりしない。

 (本当にお花みたい…)

  小づくりなラヴィアは最初よりも血の色を濃くし、桜色から紅色へと変わっていたが、ふちの部分まで薄い肉の花弁は、その色の透明感ともあいまってまさに花びらというにふさわしい。そのとてもシンプルで清楚なたたずまいと比べれば、自分のそれはもっとずっとややこしい形をしていてなんだか動物めいた印象がある。

  舌に感じられる愛液も、さらりとした粘りの少ない物で、しょっぱさにかすかな酸味のまじったその味も、特に美味いとまでは思わなかったものの、けっして不味いとは感じなかった。

  それよりも、自分の愛撫に「ひっ」と息を飲んで身を固くし、握り合わせたてに力をこめてしまう最の可憐としか言いようのない反応の仕方が楓の心を奪っていた。

  あふれ始めた蜜をすずっ、と音を立ててすすってみる。

 「ああ、いやっ」

  いやいや、と顔を揺する。

  花びらを唇ではさみ引っ張ってみる。

 「あうっ」

  それを追うように腰を迫り上げてくる。

  敏感な花芽をすっぽりくるんだ莢ごと軽く吸ってみる。

 「ひぃっ」

  一瞬身体をひきつらせ、顔をのけぞらせておとがいをさらす。

  自分の愛撫でいちいち身を躍らせて示す最の反応が面白くてたまらない。愛しくてたまらない。だからもっと感じさせて、もっとこの同性の友人を官能に乱れさせてみたいと思う。

  ついに楓は最の肉の珊瑚珠を、強過ぎる刺激から守っていた莢から解放してしまう。

  自分で慰める時には敏感過ぎるそこには莢の上からタッチするだけだ。だが、楓は最をとことん乱れさせたいと思って直にそれを刺激することに決めた。

 「ひあっ! そ、そこはぁっ…だ、だめぇっ!」

  最の必死の抗議も空しく、敏感な肉の珠が外気にさらされる。

  莢から顔をのぞかせた珊瑚珠は、これは彼女自身のものより少し大きい、あずき粒よりも少し大きいくらいにまで張り詰めていた。

  ふと見上げると最がこちらを見ていた。必死の目で「お願い、そこは許して」と言う最に、楓はニッコリと微笑みかけて言った。

 「いっぱい感じてくださいね」

  そして唇をとがらせてふっ、と息を吹き付けた。

 「ひあっ」

  たったそれだけの刺激で最の全身がピクリと反応する。

  その大柄な全身を走ったであろう電流を、同性であるだけに楓は正確に想像でき、それゆえに目を細めた。

  ふっ、ふっ…

 「ふああっ」

  ふっ、ふっ、ふっ…

 「ひっ、ひひぃ…」

  ただ息が吹きかけられるだけのあるかなきかの刺激でも、敏感な最の快楽センサーは忠実にそれをとらえ、快楽を呼び醒ます信号を全身に伝える。そのたびに今度は全身から脳髄へと、さらなる快楽の要求信号が送り込まれる。その要求に答えて脳髄は一つの言葉を見つけ出した。

 (もっと…)

  だが、まだその言葉は脳の中に留まり、口を付いて飛び出しはしない。相手が同性である、という抵抗感がそれをためらわせた。

  ふっ、ふっ、ふっ…

  だが、楓は息を吹きかけてくることをやめない。そうされれば身体がたまらなく快楽を欲してしまうことを同じ構造の身体を持つがゆえに知っているからだ。

  ふっ、ふっ、ふっ…

  そして、ついに最は求める。

 「もっと…」

  恥ずかしい。同性に性的な刺激をねだるのは最高に恥ずかしいことだ。なぜなら自分の要求がどんな物であるか、相手も真に理解できるのだから。

  にっこりと楓が笑う。

  最の快楽への渇望も、それに対する後ろめたさも、そしてついにおねだりしてしまったその恥辱も、それらを全て理解した上で、彼女はにっこりと笑みを浮かべるのだ。極上の癒しの笑顔《ヒーリング・スマイル》を…。

  それを目にした最は、熱い灼けるような恥辱がふぅっとゆるんで心地よい温かさに変わるのを感じた。緊張がほぐれ、送り込まれる刺激を素直に受け入れる心境になった。

  楓の笑顔は無条件の赦しを最に与えてくれたのだ。

  いいんだ。気持ちよくなっていいんだ。心の底からそう感じた。全身がリラックスして、躯の中心から送り込まれる甘い快楽にゆったりひたり始める。

  そしてついに楓の唇が肉の珊瑚珠をついばんだ。

 「あ…はぁぁぁんっ」

  身体から力が抜けた分、上がる声は高まった。もうなにも我慢しなくていいのだから、声だってはばかることなどもうないのだ。

  豊かな中音の嬌声が部屋に満ちる。かすかにかすれるその艶かしさが、今度は楓を妖しく捕らえる。この人を気持ちよくさせたい、という思いとともに自分も気持ちよくなりたい、否、気持ちよくして欲しい。そんな思いが募り始める。

 「最さん……私にも、その…してくれませんか?」

  心地よい感覚にぽうっとなった最の耳にそんな楓の言葉が届く。(ダメですよ、一人だけ気持ちよくなっちゃ)感じやすい最をたしなめる、王二郎のそんな言葉が思い出された。

  最が首を小さくたてにふるのを見た楓は、体をずらして最の顔をまたぐ。

 「恥ずかしい。私のそこ、最さんみたいに綺麗じゃないから。でも、私もうたまらないんです」

  そんな楓に最は言葉ではなく、行動で答えた。

 「ひあっ」

  最は豊かな楓の腰を両手で抱きよせてすっかり開花して蜜をしたたらせている秘花に口をつけていた。

  汚いという意識はなかった。ただ、自分が感じている心地よさをこの優しい友人にも感じて欲しい、それだけだった。

  舌先が蜜の味を感じ取る。王二郎によって教えられた、自分の蜜より少し酸味が強く感じられた。 鼻腔の奥にはそのにおいが届いていた。甘く、やるせない匂いだと思った。

  秘花全体を口の中にとらえて吸い上げてみる。

 「ああんっ」

  楓が嬌声を上げる。続いて自分の珊瑚珠がねっとりした感触にくるまれたのを感じる。自分の愛撫を楓が返してくれたのだ。そして、その感触はしびれるような快楽の信号へと変わって脳髄へと流れこんでくる。

  その感覚は、すなわち自分が楓に与えた物でもあるはずだ。ならば、もっと楓を気持ちよくして上げよう、そして自分も気持ちよくしてもらおう、そう思った。

  ごく自然に愛撫に熱がこもった。舌先でねっとりと濃い蜜にまみれた花弁をかきわけ、まさぐる。尖らせた舌先を肉莢に突きいれ、敏感な花芯をねぶる。

  楓も負けじと愛撫を返す。

  花弁が唇に挟まれ引っ張られる。そのまま擦り合わされる唇に擦りたてられる感覚がたまらない。次はすっかり剥きあげられた珊瑚珠にそっと歯を当てられた。びっくりするほど鋭い、しかしつらくはならないギリギリの刺激が稲妻のように脳みそのど真ん中を突き抜ける。

  二人は互いに快楽を発掘しあい味わいあうことに夢中になった。言葉はもう要らない。互いに同じ快楽を求めあっているのだから。同性同士ならではのシンクロナイズだ。

  ちゅぐ…

 「ふああっ」

  ぴちゃ…

 「くふぅん」

  響くのは二人の秘所が奏でる淫らな濡れた調べと、たまらず漏らされる嬌声だけ。

 「はあんっ」

 「うくぅっ」

  少しづつ淫らなデュエットがピッチを高める。音程も、テンポも、クライマックスへ向けてどんどん高まる。

 「くぅぅぅぅぅん…」

 「ぅああああああ…」

  そして同時にクライマックスへ到達する二人。互いの下半身を強く抱きよせ、全身をふるふるとふるわせる。そしておとずれる心地よい弛緩。

  ひとしきり快楽のの余韻を味わう二人。最初に口を開いたのは楓だった。

 「……最さん。気持ち、よかったですね」

 「ああ」

  まだぽうっとなった状態が残っている最がけだるげに答える。

 「あの、ごめんなさい。最さんがあんまり可愛かったものだから、ついこんなことしちゃったんですけど…、私、別にそう言う趣味じゃないですから」

  たっぷりと快楽をむさぼり、芯に力の入らない体をなんとか仰向けに転がした楓が言い訳をはじめた。

 「だから、あきれたりしないでください。こんなこと、今回だけですから」

  むくりと起きあがった最が体の向きを入れ替えて、今度は自分の方が楓にかぶさってゆく。

  ちゅ…

  唇が軽く合わせられる。そして離した唇を軽くなめてから「私の味がする」と言った。

 「私もそれだけ感じたんだから、別に気にすることはない」

  そしてその顔には、ほんのかすかな、それでも最としては精一杯の笑みが浮かんでいた。

 「あ、こら、やめてくれ」

  今度は楓が両手を伸ばして最の頭を抱きよせて、その端正な顔をぬらりと汚している自らの悦びの蜜をなめとりはじめる。顔をはう舌のくすぐったい感触がたまらない。

 「本当。私も凄く感じちゃいました」

  そしてにっこりと癒しの笑顔《ヒーリング・スマイル》。

 「今度は二人一緒に入らないか?」

 「え?」

  最の唐突な提案の意味がわからず、きょとんとした顔をする楓。

 「風呂だよ」

 「ああっ」

  たしかに二人とも汗と、そして淫らな体液とにまみれてしまっていた。

 「でも、エッチはなしだ」

 「はい」

  最は無性に裸で話し合いたいと思った。体では十分語り合ったから、今度は気持ちを語り合おうと思った。

 (アイツのあのセリフ、もしかして本気だったのかもな…)

  自分に素直に向き合えるようになった最は、なにかというと「最さんは可愛い」を連発するうそつき男の顔を浮かべてそう思えるようになっていた。最のコンプレックスはずいぶんと癒されてしまったようだ。

  メガネをかけた少女の癒しの笑顔《ヒーリング・スマイル》に…。

 


解説

  アニメあ〜んどコミックス終了記念〜ん、てなトコですか。

 一応『メルティング・ポット』の続きなんですが、コレだけを

 読んでも話はワカりますヨ。

  実は書き上げてからコミックス五巻とか見て王二郎が○○と

 くっついたのにチとショック受けてたりして(汗)。

  アニメ版でもなんか王二郎×みさきちっぽかったしぃ。ちぇ。

  でも、いーんです。やつがれの中ではこーゆーカップリング

 でキマりなんスから。誰がなんと言おうとも。

 


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