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夜更けの四重奏(前編)
ぶいすりゃあ/文


 時計の針が1時過ぎを指している。昼間の賑やかさとは打って変わり、静かなたたずまいを見せている、ひなた荘。

 下弦の月が、辺りを弱々しく照らしている。外から見る限り、まるで何年も人が住んでいないかのような雰囲気すら漂っている。

 しかし、そんな中、人の蠢く気配のする場所が、一箇所だけあった。その部屋の入り口に掛かっているプレートに書かれている、「304号室 成瀬川なる」の文字。

 薄暗い部屋の中に敷かれた布団の上に、二人の人影があった。月の光に照らされて、暗闇の中に浮かび上がる、白い裸身。

 色素の薄い長い髪を布団の上に広げ、仰向けに寝ているなるの腰がやや宙に浮いている。その上に、景太郎が覆い被さっていた。

 景太郎の腰が小刻みに動いている。声を押し殺した息遣いよりもはっきりと聞こえる、妖しい水音。

 なるの恥部から出入りする景太郎の逸物に、ゴムは装着されていなかった。

 景太郎の腰の動きが早くなる。ぎしぎしと床が軋む。二人の息遣いがアップテンポになるが、声は漏れてこなかった。

 景太郎の口がやや大きく開いた。その瞬間、なるの恥部から、景太郎の逸物が勢いよく引き抜かれた。

 なるのふくよかな胸の上に、白いほとばしりが降り注いでいった...。

 

 *

 

 景太郎「じゃあ、オレ、部屋に戻るよ。」

 なる「うん...おやすみなさい。」

 なるのカラダを拭いたあと、景太郎は、自分の服を抱えて、裸のまま、なるの部屋から出ていった。その後姿を、布団に横たわったまま、なるが見つめている。

 戸が閉まると同時に、なるは深い溜息をついた。

 なる「また、一緒にイケなかったな...久しぶりに、ナマでやったのに。」

 なるがぽつりと呟く。床の上に置かれたリッド君を見つめながら、なるは憂鬱な気分になっていた。

 なる「一体、どうしちゃったんだろ、私たち...」

 最近、二人の交わりに微妙なズレが生じていた。絶頂のタイミングが合わなくなり、気持ちの昂ぶりが薄くなっている。

 原因を調べようとして、交わる回数が増えていったが、得られるのは形容し難い空しさばかりだった。

 なるは寝付けず、悶々と布団の中で悩みつづけていた。

 

 *

 

 景太郎「オレ、やっぱり下手糞なのかなぁ...」

 部屋に戻った景太郎が溜息を漏らす。ここ最近の交わりで、景太郎が先に果てる回数が、なるのそれを上回り始めていた。

 やりきれない気持ちのまま、下着も着ずに布団に潜り込む、景太郎。天井を見上げると、ひときわ目立つ大きな穴がある。

 つい先程まで、その穴の向こうにいた筈なのに、今の景太郎には、そこが随分と遠い場所に感じられた。

 景太郎「...そうだ、瀬田さんに相談してみよう...」

 瀬田とはるかがモルモル王国で結婚式を挙げて、そのままサラと一緒に現地で居を構えてから一ヶ月余りが過ぎていた。

 突然の事だったので、身辺整理が出来ておらず、三人は、今日から一週間だけ、帰国することになっていた。

 景太郎「夫婦って、こういう時、どうするのかなぁ...」

 景太郎もまた、悩みながら、寝付けずにいた。

 

 *

 

 キツネ「(あっちゃ〜...)」

 むつみ「(あらあら...)」

 可奈子「(まったく、この二人は...)」

 素子「(ホントに、スキモノだな...)」

 しのぶ「(はわわ〜、センパイィィ...)」

 あからさまに寝不足の顔をした景太郎となるが、朝食の食卓にいる。二人の情交は、ひなた荘の中では、今や公然の秘密となっていたが、敢えて言及する者はいなかった。一人を除いて。

 スゥ「何や、けーたろ、なるやん、二人とも眠そうやな。セーリョク足りへんのか?」

 次の瞬間、スゥは言葉が続けられなくなっていた。お茶を入れていたしのぶが使っている筈の電気ポットが、テーブルの上にうつ伏せになったスゥの頭上に鎮座していた。

 キツネ「ま、まぁ、久しぶりにはるかさん達が帰ってくるから、今夜は宴会しようや、みんな。」

 気まずい雰囲気を和らげようと、キツネが明るく振舞う。

 しのぶ「あ、後で材料買ってきますよ。何、作ります?」

 素子「まだ、鍋という季節でもないし...」

 可奈子「秋の味覚をフルコースで。」

 むつみ「うふふ、酒蔵でいいお酒、見つけてありますよ。」

 みんなが宴会の話で盛り上がる中、景太郎となるは眠い目のまま、黙々と朝食を食べていた。

 なる「(...そうか、はるかさんになら、悩みを打ち明けられるかも...)」

 ぼんやりと、なるは、そんな事を考えていた。

 

 *

 

 東大の瀬田の研究室は、ダンボールの山で溢れかえっていた。そのかわり、書籍や土器で一杯だった机や本棚は、すっかり空になっていた。

 瀬田「やぁ、景太郎君、助かったよ。うちは研究員とかいないから、どうしようかと思っていたけど、たった一日でここまで片付くとはねぇ。」

 景太郎「伊達に助手のバイトはしていませんよ。分類するなら任せてください。」

 瀬田と景太郎が、ソファーの上で一息ついている。瀬田がタバコの煙をうまそうに燻らせている。二人はしばらく、お互いの近況などの話題で弾んでいた。

 やがて、景太郎が、おもむろに瀬田に話を切り出した。

 景太郎「瀬田さん、その...はるかさんと、アレの方はうまくいってますか?」

 瀬田「おや?どうしたんだい、景太郎君。そんなあからさまな話が聞きたいなんて。」

 景太郎「実は...」

 景太郎は、恥をしのんで、瀬田に悩みを打ち明けた。

 瀬田「ふむ...なるちゃんを満足させられなくなったっていうのか。それじゃ、聞くけど...アレは二人の合意の上でやってる?」

 景太郎「多分、そうだと思いますけど...」

 瀬田「それじゃ、ダメだよ、景太郎君。」

 景太郎「えっ...?」

 瀬田「女性はね、男と違って周期があったりして、非常にデリケートなんだ。やっちゃいけない時期だってある。男がしたいと思っても、我慢しなきゃダメなんだよ。」

 景太郎「でも、なるは文句一つ言わないし...」

 瀬田「なるちゃんの性格は、君が一番、知ってるんじゃなかったのかい?」

 景太郎は、瀬田からその事を指摘され、返す言葉がなかった。黙りこくってしまう景太郎。

 瀬田「...そうだ、今夜ははるかの所に泊まる予定なんだ。よかったら、宴会の後に、来てくれるかな?相談に乗ってあげるよ。」

 景太郎「...はい。それじゃ、オレ、宴会の準備があるので、これで失礼します。」

 悩みを打ち明ける事が出来て、景太郎は、少し気分が楽になり、瀬田の研究室を後にした。

 瀬田「ふむ...」

 景太郎を見送る瀬田の顔に、少しいたずらっぽい笑みが浮かんだ。

 

 *

 

 なる「ホントにいいんですか?こんなに貰っちゃって。」

 はるか「元々、婆さんから譲り受けたものがほとんどだし、もう、着る事もないしな。」

 和風茶房日向の二階にあるはるかの部屋に、なるが訪れていた。

 部屋の片隅には、おびただしい数の衣装箱が積み上げられている。それらの中には、はるかがコレクションしていた和服の数々が入っていた。浴衣に振袖、婚礼衣装など、これだけ揃えたら破産するんじゃないかと思うくらいの上等品ばかりだった。

 はるか「売ればそれなりの金額になるだろう。この店の維持費にも使えるしな。」

 なる「売りませんよ、勿体無い。」

 はるかとなるは、しばし談笑し合っていた。はるかは相変わらず、うまそうにタバコを咥えている。二人はしばらく、お互いの近況などの話題で弾んでいた。

 やがて、なるが、おそるおそる、はるかに話を切り出した。

 なる「はるかさん、その...瀬田さんと、アレの方はうまくいってますか?」

 はるか「不躾だな、いきなり。景太郎と何かあったのか?」

 なる「実は...」

 なるは、恥をしのんで、はるかに悩みを打ち明けた。

 はるか「...で、単刀直入に聞く。お前等、どれくらいのペースでしてるんだ?」

 なる「週に3回ほど...」

 はるか「やりすぎだ、バカモン!!」

 なる「ふえっ...!?」

 はるかの怒号に、なるが思わず泣き顔になった。

 はるか「景太郎に求められたら、いつでも応じていたって?やりたくなったら、いつでも誘っていたって?自分のカラダのリズムも考えずにやりまくってるから、バランスが崩れたんだろうが。」

 なる「だ、だって、だって...」

 はるか「だってじゃない!!...それにお前等は、住人と管理人という立場こそ違うが、一つ屋根の下で暮らしているんだぞ。こんな時期からやりまくっていたら、早々と倦怠期を迎えてしまうぞ。それでもいいのか?」

 なるは、はるかに叱られて、しゅんとしてしまった。

 はるか「...そうだな。今夜の宴会が終わったら、こっちに来い。相談に乗ってやるよ。」

 見兼ねたはるかが、やや穏やかな口調で、なるに話しかけた。

 なる「...ありがとうございます。それじゃ、私、宴会の準備をしに、ひなた荘に戻ります。」

 なるは、はるかにぺこりとおじぎをして、はるかの部屋を出た。

 はるか「面白くなりそうだな...」

 なるを見送るはるかの顔に、少し妖しい笑みが浮かんだ。

 

 *

 

 大広間に11人分の膳が並んでいる。その上には、松茸、栗、さつま芋や、秋刀魚、鮭など、秋の味覚がずらりと並んでいた。

 ご馳走に舌鼓を打ちながら、和やかに始まった宴会だったが、半時間程経った頃には、部屋中にアルコールの匂いが立ち込め、あちらこちらで乱痴気騒ぎが繰り広げられていた。

 素子と可奈子が肩を組んで、演歌らしき歌をがなりたてている。スゥとサラは、上半身裸になって、ヘンな振りつけで踊っている。一升瓶を抱えたむつみが、コップでしのぶに酌をしている。しのぶはそれを一気に飲み干し、ぷはぁと豪快に息を吐く。キツネは既に酔い潰れて、夢の住人になっていた。

 はるか「...何か、ペースが早すぎないか?」

 なる「そ、そうですね...キツネがこんなに早く潰れるなんて...」

 瀬田「景太郎君。僕達、こんな所にいていいのかな?」

 景太郎「いつもは、こんなんじゃないんですけど...」

 この後の予定を控えてペースを落としていた4人だけが、素面を保っていた。

 むつみ「うふふ〜、は〜るかしゃ〜ん。いかがれすか〜?」

 いつもは酒に強い筈のむつみまで、泥酔していた。はるかは、むつみが持っている一升瓶のラベルに目をやると、途端に顔色を変えた。そのラベルには、こう書かれていた。

 (象殺し改 アルコール度数50パーセント)

 はるか「やばい、みんなこの場から一旦逃げろ!!」

 はるかの号令と共に、景太郎となるが、大広間から逃げ出した。

 はるか「何やってんだ、お前もこいよ。」

 瀬田「おおっと。」

 呑気にむつみから酌を受けていた瀬田は、はるかに首根っこを掴まれ、ずるずると引きずられていった。

 やがて、大広間のあちこちから、大きないびきが鳴り響き始めた。

 

 *

 

 景太郎「あれ...なる、どうしてここに?」

 なる「景太郎こそ、何で?」

 和風茶房日向の二階。瀬田に呼び出された景太郎は、はるかの部屋の前に立っているなると鉢合わせした。

 瀬田「お、二人とも来たのか。入っておいでよ。」

 なる「え...瀬田さんもいるの?」

 なるは事情がわからず、あたふたしていた。景太郎がなるの肩にそっと手を置くと、なるは少し落ち着きを取り戻した。

 景太郎「それじゃ、失礼します。」

 景太郎が引き戸を開ける。半分ほど開けた途端、いきなり景太郎が引き戸を閉めた。

 景太郎「わたたっ、し、失礼しましたっ!!」

 思いっきり動揺し、両手をばたばたと動かしている、景太郎。

 はるか「何やってんだ。早く入ってこいよ。」

 部屋の中からはるかの声がする。なるがおそるおそる引き戸を開く。はるかの部屋の中が視界に入った途端、なるが大きく目と口を開いて赤面した。

 部屋の真ん中に敷かれた布団の上に、素っ裸の瀬田とはるかが、並んで正座をしていた。

 瀬田「景太郎君、なるちゃん。入っておいで。」

 あまりにも理解し難い状況に戸惑いながら、景太郎となるは、はるかの部屋に入っていった。

 はるか「全く、お前等ときたら、ホントに似たもの同士だな。ここまで行動パターンが一緒なカップルも、天然記念物モノだぞ。」

 なる「えっ、それじゃ、景太郎も、瀬田さんに相談を?」

 景太郎「なるの方こそ、はるかさんに?」

 きょとんとした目で見詰め合う、景太郎となる。そんな二人に、瀬田が話しかけた。

 瀬田「はるかと相談したんだけどね。君達には、まず、我慢を身に着けてもらう必要があると思うんだ。そこでだ。」

 瀬田が一回、コホンと咳払いをして、話を続けた。

 瀬田「これからしばらくの間、君達には、僕達の指示に従ってもらう事にするよ。拒否はできない。いいかな?」

 景太郎となるが、こくりと頷く。

 はるか「...ホントに、いいんだな?」

 はるかの問いかけにも、頷く二人。

 はるか「よし。それじゃ、お前等、服を全部脱げ。」

 景太郎・なる「えっ...!!」

 はるか「聞こえなかったのか?服を全部脱げと言ったんだ。」

 やや語気を荒げたはるかの声が、二人を緊張させた。二人はおずおずと服を脱いでいく。

 生まれたままの格好で、瀬田とはるかの前に立つ、景太郎となる。

 はるか「よし、そこに並んで座れ。」

 ハダカのまま、畳の上に並んで正座する二人。瀬田が二人に次の指示を出した。

 瀬田「これから、僕とはるかがここでセックスをする。君達は最後までそこで見ているんだ。但し、そのままの姿勢でね。」

 いつのまにか、はるかが瀬田にしな垂れかかっていた。瀬田ははるかの頭を抱えると、そのまま唇を重ねていった。

 

 *

 

 景太郎「う、うぁぁ...」

 なる「は、はぅぅ...」

 景太郎となるは、目の前で繰り広げられている、比較的ソフトなキスだけで、早くも股間に刺激が集中していた。既に始まってから五分位は経過していたが、瀬田とはるかは、互いの唇を執拗なまでに舐めまわすだけで、未だに相手の口に舌先を挿入[いれ]ていない。

 時々、二人の舌先が触れ合い、少し絡めては離れる。互いに焦らし合っているのか、観客を焦らしているのかわからないくらい、それは続いた。

 やがて、瀬田とはるかは一旦口を離すと、やや姿勢を変えた。瀬田の右手がはるかの左乳房に触れる。人差し指と中指で乳首を挟むと、瀬田は再びはるかと唇を重ね、舌を挿し入れた。二人の舌が絡み合い、互いの唾液が混ざり合う。

 緩やかな間隔で水音が聞こえてくる。そのリズムに合わせて、瀬田の指に挟まれたはるかの乳首が勃起してくる。先程までぶらんと垂れ下がっていた瀬田の逸物が硬度を増し、少しずつ上向いてきた。

 景太郎となるは、自分の股間からじわりとした感覚が伝わってくるのを感じていた。既に勃起しきった景太郎の逸物の先端から、透明な液が滲み出る。なるの恥部から、粘り気のある蜜が染み出てくる。

 すぐ隣に恋人が、自分と同じ格好でいる。にもかかわらず、情交できない。まるで拷問を受けているかのような心境に、二人は陥っていた。

 景太郎「(た、たのむよ...早く、終わってよ...)」

 なる「(わ、私...おかしくなっちゃいそう...)」

 瀬田の右手に力が入る。はるかの左乳房に指が食い込んでいく。そのまま、瀬田は、ゆっくりと右手を時計回りに回し始めた。

 二人の口から聞こえる水音のペースが早くなる。それが、観客の二人にさらなる刺激を与えた。

 景太郎「あぁぁぁぁ...」

 なる「ひ、ひんっ...」

 呼び水に触れたかのように、景太郎となるの股間から、透明な液が流れ出す。

 観客の二人から喘ぎ声が聞こえてくる。しかし、瀬田とはるかは、お構いなしに、あくまでマイペースで色事を続けていく。

 

 4人にとって、長い夜の始まりであった。

 

 

 


解説

 ぶいすりゃあです。ご無沙汰してます。

 

 またまた、ラブひなを題材に書いてしまいました。この話は、一応、拙作「昼下がりの逢引」の後日談という位置付けですが、前作を知らなくてもいいように作ってあります。

 

 前編、中編、後編の3部作の予定として書いていますが、この前編では、Hのシチュエーションに持ち込むまでで終了してしまいました。一応、冒頭にもHはあるのですが、ストーリーの展開上、萎えな描写になってしまいました。ごめんなさい。

 その分、中編及び後編では、ねっとりと書いていく予定にしております。

 

 それでは、また。

 


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