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さくらと桃矢の甘い生活 その05
料理長/文


 「小狼くんが・・・転校」

 「はい・・・」

 すまなそうに目を伏せて知世が答える。

 「さくらちゃんには私からお伝えするように、とのことでしたので」

 「何で! どうして急に転校なんかしちゃうの!」

 「クロウカードが全てさくらちゃんカードに変わったから、もう日本にいる必要は無くなった、とおっしゃってましたが・・・」

 「そんな・・・」

 さくらはガックリと肩を落とした。

 「日本を離れるのは明日の午後だそうです」

 「明日・・・そんなに急なの」

 「でも、今日ならご自宅にいらっしゃるのでは?」

 「そうだよね・・・お家に行けば会えるよね」

 「はい、きっと会えますわ」

 

 「でね、今日の帰りに寄ってみようと思うんだけど」

 「ふーん。で?」

 「お兄ちゃんにもついて来て欲しいの」

 「何で俺が」

 昼休み。桃矢tさくらは木を背中にして二人で弁当を食べていた。

 「一人だと行きにくいんだもん・・・・・・」

 「返事」

 「ん?」

 「返事・・・するのか?」

 「うん・・・」

 「何て言うつもりだ」

 「わたしには他に好きな人がいます、って」

 「そうか・・・・・・マンションの下までだったらついて行ってやるぞ」

 「下まで?」

 「あぁ、それから先はお前一人で行ってこい」

 「うん・・・」

 「それじゃあ、そろそろ昼も終わりだし、俺は戻るからな」

 「うん・・・バイバイ」

 「校門のところで待ってるぞ」

 「あ・・・・・・うん!」

 

 「ここか・・・」

 「そうだよ」

 さくらは小狼の住むマンションの入口で、小狼の部屋を呼び出した。

 『どちら様で・・・おぉ、これは木之本様、小狼様に御用でしょうか?』

 モニターに偉の姿が映った。

 「はい。小狼くんはいますか?」

 『申し訳ございません、生憎と外出中でございます。よろしければ、部屋でお待ちになられますか?』

 「あっ、いいです! あの・・・明日は何時の飛行機なんですか?」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 外で待っている桃矢の元へ走る。

 「小狼くん、いないんだって・・・」

 「そうか・・・・・・色々と手続きがあるんだろう。で、どうする?」

 「あのね・・・」

 「ん?」

 「わたし、空港まで見送りに行こうと思うの」

 「明日・・・土曜日だから学校は休みか」

 「うん。それでね・・・」

 桃矢はさくらが言わんとしていることを察して、先んじて返事をした。

 「一緒に行ってやるよ」

 「えっ・・・・・・本当に?」

 「明日はバイト入れてないはずだからな。それに、成田までお前一人で行かせるのは心配だ」

 「一人で行けるもん、行けるけど・・・・・・一緒に行ってくれるんだね?」

 「あぁ、それじゃあ帰るぞ」

 「うん!」

 桃矢がさり気なく手を差し出す。さくらは嬉しそうにその手を握った。

 

 

 「お兄ちゃん」

 「ん?」

 「明日は夕方の飛行機だから、少しくらい夜更かししてもいいよね」

 「そうだな・・・」

 さくらと桃矢はソファの上に肩を寄せ合って座っている。二人で膝の上に毛布を掛けて、ただ静かに座っていた。

 「ふぁ・・・」

 できるだけ一緒に起きていたいから、と必死にこらえていた欠伸が、油断していたさくらの口から漏れた。

 「眠たかったら、寝ればいいだろ」

 「うーん・・・・・・お兄ちゃんはまだ寝ないの?」

 「さくらが寝るんなら、俺も寝るよ」

 「だったら、さくらが起きてれば、お兄ちゃんも起きててくれる?」

 「あぁ。でも、無理はするな。お前が寝るまでそばにいてやるから」

 パフッ・・・

 さくらが伸びをしながら桃矢の膝の上に倒れこんだ。桃矢はさくらの身体をゆっくり、優しく撫でてやる。

 「ん・・・」

 さくらは気持ちよさそうに目を細くする。

 「わたし、ここで眠ってもいい? お兄ちゃんが眠くなったら起こしてもいいから」

 「しょうがないやつだなぁ」

 そう言いながら、さくらの身体に毛布を掛けてやる。

 「お兄ちゃんの膝枕・・・・・・やっぱりサッカーやってるから筋肉ついてるね」

 自分が枕にしている桃矢の太腿をさくらが撫でまわす。

 「こら・・・」

 さくらは思ってもいないが、女性の柔らかい手で太腿を触られるというのは、男に強い刺激を与える。しかも、その刺激の影響を最も体現するモノの前に、愛おしい女性の顔があるのだ。

 「ん?」

 さくらは自分の目の前で起きた桃矢の肉体的変化にやっと気付いた。

 「お兄ちゃん、もしかして・・・・・・」

 「う、うるさいっ! 悪いかよっ!」

 桃矢のズボンの中身が大きくなっていくのがハッキリとわかる。それでも、さくらは太腿を撫でる手を止めなかった。

 「もう、止めろよ!」

 「ねぇ・・・・・・お兄ちゃん、興奮したの? わたしのせいで興奮したの?」

 さくらには桃矢の反応が嬉しかった。

 「・・・そうだよ」

 観念したように桃矢が答えた。

 「そっかぁ・・・わたしのせいなんだ・・・・・・」

 「だから、もういいだろ」

 「うん!」

 桃矢がさくらに掛けていた毛布をまくった。

 「どうしたの?」

 「起きてるとろくな事が無い」

 「そんなぁ・・・」

 「だから、寝るぞ。今日はどっちの部屋で寝る?」

 「あ・・・・・・わたしの部屋!」

 

 

 「何してるんだ、早くしないと間に合わないぞ!」

 玄関で桃矢が呼びかける。

 「はーい、今すぐ行くー!」

 ドタドタドタ・・・・・・

 「お待たせ!」

 「階段壊す気か」

 「壊れないもん! それより、急がなきゃ」

 「そうだな。タクシー使うぞ」

 「うん!」

 二人は大通りまで出てタクシーに乗ると、駅に急行した。

 「お父さんにちゃんと書いてきた?」

 「あぁ、少し遅くなるかも、ってな」

 「お家に帰ってきて誰もいなかったら、お父さん、寂しいだろうね」

 「一応、留守電にもメッセージ入れてあるから、電話してくれればわかるだろう」

 「そっか」

 「それより、そろそろ駅だぞ」

 「うん」

 慌ただしく改札を抜けて、ちょうどホームに入ってきた急行に飛び乗る。

 「ハァ、ハァ、ハァ・・・急行に乗れたね」

 「これなら間に合うな。でも、事故でもあったのか?」

 「何で?」

 「少しダイヤが乱れてるみたいなんだ。本当なら急行に間に合わないはずだったんだけどな」

 「でも、乗れてよかったね」

 「そうだな」

 それからも、成田空港までの接続は思っていた以上にスムーズだった。

 

 「思ったよりも早く着いたね」

 「そうだな」

 そう言って、桃矢は辺りを見回した。国外へ出る人、それを見送る人で空港の出発ロビーはごった返している。

 「ガキの乗る便はまだ手続きにはいってないか・・・・・・ここで待っていればいいんじゃないか」

 「うん・・・」

 「どうした?」

 返事に元気の感じられないさくらに桃矢が尋ねる。

 「ちょっと・・・・・・ううん、大丈夫、大丈夫だから!」

 「そうか・・・何か飲み物でも買ってくる。何がいい?」

 「何でもいいよ」

 「そういうのが一番困るんだ。わかった、適当に買ってくるぞ」

 「変なのはやだよー!」

 桃矢はそれに片手をあげて答えた。その後姿はたちまち人の中に消えてしまう。

 「小狼くん・・・・・・会えるかな・・・」

 一人になると、そのことだけが頭の中に浮かんでしまう。

 「会って返事しなくちゃ」

 

 その頃、小狼は・・・

 「小狼様、よろしかったのですか?」

 「何のことだ」

 「せっかくマンションまで訪ねて下さったのに」

 「さくらのことか・・・・・・いいんだ、あの時はこんなに早く日本を離れるなんて思ってなかったから」

 「『あの時』とは?」

 「べ、別に何でもない!」

 もう少し、せめて中学・・・いや小学校を卒業できるまで日本にいられたら。こんなことなら告白なんかするんじゃなかった。小狼の胸中は後悔でいっぱいだった。

 「ご気分でも悪いのですか?」

 そう尋ねながら、偉はさくらが来るであろうことを確信していた。しかし、それとなく辺りを見回しても、それらしい人影は見つけられない。

 もっとも、成田を発つ時間を教えただけで、会う約束をしているわけではないのだから当然ではあるが。

 「そろそろ搭乗手続きが始まりますが」

 「そうか・・・よし、行こう」

 

 「小狼くんは来ないし、お兄ちゃんも遅いなぁ・・・」

 さくらは懸命に背伸びをするが、小学生の背伸び程度でこの人ごみの中から目当ての人物を見つけることができるはずもなかった。

 その時、不意にさくらの頭の中に馴染みのある感覚が閃いた。

 「・・・・・・! クロウさん・・・エリオルくんがここにいるの?」

 そこ感覚は小狼にも感じ取れた。

 「偉、ちょっと待っていてくれ!」

 何枚かの札を手に、小狼が走り出す。

 「小狼様!」

 荷物を軽々と脇に抱えると、それを追って偉も走り出した。

 

 「こっちの方から気配がしたんだけど・・・」

 さくらが人ごみをかき分けて走った。

 「まだ何か企んでるのか!」

 小狼も同じ方向に走っている。

 「あっ・・・」

 二人はほぼ同時に互いの姿を確認した。

 「小狼くん・・・」

 「さくら・・・どうしてここに」

 一瞬の間をおいて、二人はゆっくりと歩み寄る。

 「小狼様」

 偉がクマのぬいぐるみを手渡す。

 「偉・・・」

 小狼はぬいぐるみをさくらに差し出す。

 手を伸ばすさくら。その時、さくらを呼ぶ声が聞こえた。

 「さくら」

 小狼とさくらの間にぬいぐるみが落ちる。

 「お兄ちゃん・・・」

 振り返ると桃矢がさくらを睨みつけていた。

 「さくら、お前は何をしに来たんだ?」

 桃矢は語気を荒らげる。

 「それは・・・」

 「おい、小僧。さくらがお前に大事な話があるってよ」

 不意に言われて、小狼は床に落ちたぬいぐるみを見つめていた視線を上げる。

 さくらが手をギュッと握りしめていた。

 「さくら・・・」

 「小狼くん、わたし、あの時の返事をしに来たの」

 小狼の言葉を遮るようにさくらが口を開く。

 「わたし、小狼くんのこと好きだよ。でも・・・」

 「でも・・・?」

 「わたしね、もっと『好き』な人がいるの・・・」

 「・・・俺が香港に帰るから、そういうことを言ってるのか?」

 さくらは首を横に振る。

 「小狼くん、違うよ・・・・・・誰よりも大事で・・・守ってあげたくて・・・守ってほしい人がいるの」

 「・・・・・・」

 「小狼くんは大事な友達だよ・・・・・・でも、友達なの・・・・・・」

 「・・・・・・そうか」

 小狼はそれだけ言うと、さくらに背を向けて歩き出した。

 「偉、そろそろ出発の時間だぞ」

 「・・・・・・はい」

 事の成り行きを見守っていた偉は、さくらと桃矢に一礼するとその後を追っていった。

 

 二人は展望デッキから小狼の乗った飛行機が飛び立つのを見送る。

 「行ったな」

 「お兄ちゃん・・・」

 「さくら・・・お前、あのぬいぐるみの意味を知ってて受け取るつもりだったのか?」

 「あ・・・・・・」

 「あいつのことを傷つけないように・・・そう思っているなら、そういうことはしちゃいけない」

 「うん・・・」

 「でも・・・・・・よく言えたな」

 さくらの頭を大きな手が撫でる。

 「お兄ちゃん・・・・・・うん・・・言えたよ・・・お兄ちゃんがいてくれたからだけど・・・・・・」

 「それでもいいんだ」

 「うん・・・・・・小狼くんにもわたしじゃない、小狼くんだけのことを思ってくれる人がいるはずだもん」

 「そうか・・・それじゃあ、少し遅くなったけど昼飯でも食うか」

 「うん!」

 

 

 「ほら、口のトコにソース付いてるぞ」

 桃矢が手を伸ばして紙ナプキンで拭いてやる。二人は空港のレストランで遅めの昼食を取っていた。

 「さくら、子供じゃないもん」

 「そんなトコにソースを付けてるだけで子供だよ」

 「もう! あ・・・」

 「ん?」

 さくらの声につられて窓の外を見ると雪が舞っていた。

 「お・・・季節外れだな」

 「小狼くんの飛行機が飛んだ後でよかったね」

 「そうだな」

 外の雪はだんだんと本降りになってくる。

 「積もるかな?」

 「たぶんな」

 そんな話をしている間もどんどん雪の降りは激しくなってきた。

 「ちょっと行ってくる」

 「おトイレ?」

 「違う、電車の確認だ」

 「行ってらっしゃーい」

 

 「どうだった?」

 「わからない。急いで駅まで行ってみよう」

 「わかった!」

 二人が駅に下りていくと、改札前は人だかりができている。そこには「列車は降雪のため運休します」と掲示されていた。

 「どうしよう・・・」

 「父さんが帰ってきてるかも知れない。電話してくる」

 「うん」

 公衆電話待ちの長い行列に並んで十数分、桃矢はやっと家に連絡を取ることができた。

 「父さん? よかった帰ってきてたんだ」

 『桃矢くん、そちらは大変みたいですね』

 「あぁ、列車が動いてないんだ」

 『でしたら、無理をしないでどこかに泊まって下さい。お金は足りますか?』

 「うん、そうさせてもらう。それじゃあ」

 心配そうな顔で待っていたさくらは、桃矢の姿を見て駆け寄ってきた。

 「お父さん、帰ってきてた?」

 「あぁ、今日はこっちで泊まるところを探せって」

 「帰れないの?」

 「列車が止まってるからな・・・早目にホテルでも探しておこう」

 「うん」

 しかし、同じことを考える人間は大勢いるもので、空港のカウンターで探してもらっても、なかなか部屋の確保はできなかった。

 「どうするの?」

 「もしもの時は空港のロビーで寝るしかないな」

 「そう・・・」

 「もう少し経ったら、もう一度聞いてみるよ」

 「うん」

 

 「この雪で、どこもいっぱいのようですね」

 「そうですか・・・」

 しばらくして空港カウンターにもう一度聞いてみるが、職員の返事は同じだった。

 あきらめて戻ろうとした桃矢にカウンターの職員が呼びかける。

 「あ、お客様。たった今、ダブルの部屋が一つ空きましたが」

 「ダブルか・・・・・・それじゃあ、お願いします」

 「承知しました」

 桃矢はホテルの場所を確認すると、ベンチに座っていたさくらを呼ぶ。

 「さくら、部屋が取れたぞ!」

 「取れたの!」

 「あぁ、ツインじゃなくてダブルだけどな」

 「でも、これで野宿しないで済むね」

 「野宿・・・そうだな。それじゃあ急ごう。昼飯が軽かったから、腹減ってるだろ」

 「うん!」

 

 

 「ご兄妹ですか?」

 ホテルのフロントマンは二人を疑わしそうに見ている。

 「何か問題があるんですか?」

 「いえ・・・保護者の方に確認を取らせていただいてもよろしいでしょうか?」

 「えっ・・・あっ、はい」

 桃矢が告げた電話番号にフロントマンが電話する。

 「はい・・・はい・・・・・・申し訳ありません・・・はい、少々お待ちください。お客様」

 「はぁ・・・・・・もしもし、俺だけど」

 『桃矢くん、何とか泊まるところは確保できたみたいですね』

 「何とかな。で、何だって?」

 『いえ、桃矢くんとさくらさんのことを疑ってたらしいんですよ』

 「疑う?」

 『ええ、女の子をホテルに連れ込もうとしてるんじゃないか、ってね』

 「うっ・・・・・・」

 その答えに桃矢は一瞬、言葉を失った。

 『どうかしましたか?』

 「あぁ、いや・・・別に」

 『それじゃあ、さくらさんのこと、よろしくお願いしますね』

 「・・・・・・わかってるよ。じゃあ」

 フロントマンに電話を返す。

 「それでは、こちらがルームキーになります」

 鍵を受け取ると二人はエレベーターで部屋に上がった。

 

 「うわぁ!」

 さくらが窓に張り付いて外を眺める。外は一面の銀世界だった。

 「この季節にここまで積もるなんて」

 「すごいね、お兄ちゃん!」

 部屋は最上階の一つ下。それでも、部屋からの眺めは絶景だった。

 「滑走路が真っ白だよ!」

 「ほぅ・・・」

 さくらの言う通り、滑走路は白い平原となっていた。

 「朝になったら足跡つけてきてもいいかな」

 「バーカ、どうやってあそこまで行くんだ?」

 「へへへ・・・」

 さくらはポケットの中のカードをそっと確かめた。

 「それより、晩飯はどうする?」

 「もう少したってからでいいよ。お昼食べたの遅かったから、あんまり減ってないんだ」

 今のさくらには、食事よりも窓からの雪景色の方が大事らしい。

 「それじゃあ、せっかくだからルームサービスで何か軽いのを頼むか」

 「うん」

 窓に張り付いたまま返事をする。

 「ふっ・・・」

 桃矢はそんなさくらの様子を見て微かに笑うと受話器を取った。

 

 

 「夜中なのに明るいね」

 「あぁ、雪明かりってやつだな」

 「ふーん」

 降り続いていた雪もスッカリ止んでいる。それでも、交通機関の麻痺は回復していない。

 「ホテルに泊まって正解だったな」

 「そうだね。これも、小狼くんのおかげかな」

 さくらの言葉を聞いて桃矢は表情を硬くした。

 「さくら」

 「何?」

 「俺で良かったのか?」

 「・・・何のこと?」

 「あいつのぬいぐるみ・・・受け取ろうとしたのは・・・・・・」

 さくらがギュッと桃矢の身体にしがみついた。

 「ううん。わたしはお兄ちゃんがいいの・・・・・・お兄ちゃんじゃなきゃダメなんだよ」

 その身体を桃矢は優しく抱きしめる。

 「ありがとうな」

 桃矢に抱きしめられて幸せそうな顔をするさくら。

 「お兄ちゃん・・・・・・お風呂・・・入ろう・・・・・・」

 「また一緒にか?」

 「うん・・・・・・ダメ?」

 「そうだな、せっかく高い金払ってるんだから使わせてもらおうか」

 「うん」

 

 「ふぅー」

 「温かいねー」

 ホテルの湯船は木之本家のとは違って、二人で入っても十分な余裕があった。

 「お家のお風呂もコレぐらい大きかったらいいのに」

 「ダメだ、ダメだ。うちの風呂場じゃ湯船だけでいっぱいになっちまう」

 「そうかー」

 「それより身体洗ってやるよ」

 桃矢が立ち上がる。

 「え・・・・・・」

 「どうした?」

 「あの・・・」

 「ん?」

 「わたし、もう少し温まっていたいから・・・」

 「そうか・・・せっかく洗ってやろうと思ったのにな」

 「ごめんね」

 「まあいいさ。俺は先に身体洗っちまうからな」

 「うん・・・」

 さくらは肩まで湯につかって身体を洗う桃矢を見ていた。

 「お兄ちゃん」

 「何だ?」

 「ここってバスローブあったよね」

 「そう言えば・・・」

 「今日はあれ着て寝ようよ」

 「あれは寝間着じゃないんだぞ。それに、風邪引かないか?」

 「お部屋も暖かくしてさ」

 「しょうがないな」

 そんな話をしている間に桃矢は身体を洗い終わってしまった。

 「それじゃあ、先に上がってるからな」

 「うん。ちゃんとバスローブ着てね」

 「わかってるよ」

 

 桃矢が脱衣所から出て行ったのを確かめてさくらが湯船から上がる。

 「ふぅ・・・少しのぼせちゃったかなぁ・・・・・・今日はいつもよりキレイに洗わなくちゃ」

 上半身を念入りに洗うと、スポンジを下半身へと下ろしていく。

 「ん・・・」

 軽く触れただけで身体中にピリッと電気が走った。

 「はぅっ・・・」

 スポンジではなく、直に触れてみる。

 ・・・・・・ちゅぷっ・・・・・・

 そこはすでに奥から染み出してくる蜜で潤っていた。

 「あ・・・」

 ・・・・・・くちゅっ・・・・・・くちゅ・・・くちゅ・・・・・・

 手にまとわりついていた泡がたちまち愛液によって洗い流される。

 「・・・・・・お兄ちゃん・・・・・・」

 続けたいのをグッと我慢して、さくらは再び身体を洗い始めた。

 

 

 桃矢は部屋の灯りを落として雪景色を眺めていた。部屋の中は雪明かりでほのかに青白く染まっている。

 「本当に積もったなぁ・・・」

 さくらに言われたとおりバスローブを羽織って、部屋の暖房を高めに設定してあった。

 ガチャ・・・

 バスルームのドアが開く音がする。振り返ると、だいぶ大きなバスローブを羽織ったさくらが立っていた。

 「さくらも見てみろよ」

 「うん・・・」

 二人は並んで窓際に立つ。

 「キレイだね・・・」

 「そうだな」

 「わたし・・・・・・もう眠くなっちゃった」

 さくらが桃矢を見上げる。

 「よし・・・そろそろ寝るか」

 「うん・・・」

 

 ホテルのダブルベッドは兄妹が使っているベッドを合わせたよりも大きく、クッションが効いていた。

 「暖房つけたままでいいよね」

 「あぁ、電気代取られるわけじゃないしな」

 桃矢はベッドサイドの灯りをつけて布団に潜る。

 「さくらも早く寝・・・・・・・・・ろ・・・」

 振り返った桃矢の目にバスローブを脱いださくらの姿が飛び込んできた。

 「何を・・・・・・してるんだ」

 さくらは何もいわずに掛け布団をまくると、桃矢の上にのしかかる。

 「バカッ!」

 「バカでもいいもん・・・」

 さくらの目は真剣だった。その瞳に桃矢の顔が映っている。

 「どうしたんだ?」

 桃矢を見つめる瞳から涙がこぼれる。

 「うっ・・・うっ・・・・・・うっ・・・・・・うゎーん」

 さくらは桃矢の胸にそのまま泣きついた。

 「さくら・・・」

 桃矢には何が起きたのか、どうしてさくらが泣いているのかわからなかった。それでも、優しくその頭を抱いてやる。

 「何があったんだ、さくら?」

 鼻をすすりながらさくらが顔を上げる。

 「わたしね・・・・・・今日、小狼くんとお別れする時にね・・・ちょっとだけ・・・ちょっとだけだよ・・・お兄ちゃんのことを忘れちゃったの・・・・・・」

 さくらの告白を桃矢は黙って聞いていた。

 「あの時・・・お兄ちゃんが私の名前を呼んでくれなかったら・・・・・・」

 そんなさくらを愛おしく思って、その頭をギュッと強く抱きしめる。

 「今は違うんだろ?」

 「うん・・・・・・やっぱり・・・やっぱり、お兄ちゃんが大好きだよ・・・・・・でも・・・」

 「でも?」

 「お兄ちゃんも・・・わたしみたいになったらどうしよう・・・って思ったら怖くなっちゃったの」

 「安心しろさくら・・・・・・俺にはお前だけだよ」

 「本当?」

 「あぁ」

 さくらは泣き腫らした目元を拭うと、桃矢と唇を重ねる。

 「・・・ん・・・・・・わたしを・・・お兄ちゃんだけのものにして・・・」

 「お前・・・・・・自分が何を言っているのかわかってるのか?」

 「・・・・・・うん・・・・・・」

 頬を赤くして恥ずかしそうに答える。

 「痛いぞ」

 「・・・う、うん」

 「俺だって・・・・・・我慢してるんだ・・・・・・一度始めたら・・・最後まで止まらないかも知れないぞ」

 「うん・・・わかってる・・・でも・・・・・・」

 「わかった・・・・・・あ・・・・・・」

 抱きしめられているさくらのお腹の下で、何かが硬く、熱くなっているのがわかる。

 「お兄ちゃん・・・・・・」

 「しかたないだろ」

 「ううん・・・・・・嬉しいんだよ」

 

 桃矢もバスローブを脱ぐ。部屋は暖房が十分に効いているので、裸になっても寒くは無かった。

 ベッドの上で均整の取れた桃矢の身体を見つめるさくら。そのさくらの口から知らず知らずに言葉が漏れた。

 「・・・大きい・・・」

 桃矢の股間から巨大な逸物がそそり立っていた。

 「そんなに見るなよ・・・」

 さくらには今までで一番大きくなっているように思えた。ベッドから下りて桃矢の元に近付く。その手が逸物に触れた。

 「うっ・・・」

 「熱くって・・・ビクンビクンしてる・・・・・・どうすればいいの?」

 さくらが逸物に触れたまま当夜の顔を見上げる。

 「どうすれば・・・って言われても」

 「お兄ちゃんも・・・初めてなんだよね」

 「あぁ・・・」

 こういう時は男がリードするべきなのだろう。ましてや相手は歳の離れた妹だ。しかし、桃矢には週刊誌や友人の話を盗み聞きした程度の知識しかなかった。

 「お兄ちゃんの・・・先っぽが濡れてるよ」

 さくらに言われてハッと気付く。

 「さくら、ベッドに横になるんだ」

 「えっ?」

 「いいから早く」

 「うん・・・」

 さくらは言われるままにベッドの上に横になる。桃矢はその両足を掴むと、ゆっくりと開いていった。

 「恥ずかしいよぉ」

 そうは言っても、さくらは兄のするがままにされていた。

 「さくらも濡れてるんだな」

 さくらの秘所から透明な蜜が染み出している。桃矢はそれをすくい取るように指を滑らせた。

 「はぅっ」

 さくらの身体がビクッと跳ね、足を閉じそうになるが、桃矢の身体にブロックされてしまう。

 ・・・・・・くちゅっ・・・くちゅっ・・・くちゅっ・・・・・・

 桃矢の指は単調だが優しくさくらを愛撫する。まだろくに毛も生えていない恥丘が赤みを帯び始めた。

 襞の中から小粒の真珠のような肉芽が顔を覗かせる。

 ・・・・・・くにゅっ・・・くにっ・・・くにっ・・・・・・

 その肉芽を指先でこね回す。

 「・・・・・・あぁっ・・・あっ・・・・・・やめて・・・はぁっ・・・・・・はぁぁっ・・・・・・」

 口ではそう言いながら、桃矢が手を離したにもかかわらず、さくらは足を閉じようとはしなかった。

 桃矢はそこへ顔を近づけると、そっと舌を伸ばす。

 ・・・・・・ぴちゃっ・・・・・・

 「・・・・・・はぅっ・・・・・・」

 桃矢の両肩に叩きつけるようにさくらが足を閉じる。

 ・・・・・・ぴちゃっ・・・ぴちゃっ・・・・・・ちゅっ・・・ちゅぅっ・・・・・・

 初めて口にした愛液は酸っぱいようなしょっぱいような不思議な味がした。舌を這わせると後から後から愛液が溢れてくるようだった。

 「・・・はぅっ・・・あぁっ・・・あっ・・・・・・お兄・・・ちゃん・・・・・・はぁぁっ・・・・・・」

 何度も叩きつけていた両足もいつしか動きを止め、さくらの両手は桃矢の頭を逃がさないように押さえつけていた。

 舐め回すだけだった桃矢の舌が襞の中に割り入る。

 「・・・・・・はぅぅぅぅっ・・・・・・」

 舌が入る感覚だけで、さくらは軽い絶頂を迎えた。

 「・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 全身で息をしているようなさくらに桃矢が心配そうに声をかける。

 「大丈夫か?」

 「・・・う・・・うん・・・・・・気持ちよかったの・・・・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 「そ、それじゃあ・・・・・・行くぞ」

 桃矢は逸物に手を添える。その先端からは、先走りが糸を引いてさくらのお腹の上に落ちる。

 「う・・・うん」

 「痛かったら言うんだぞ」

 「うん」

 桃矢は逸物の先端をさくらの秘所へと押し当てる。

 ・・・・・・ちゅぷっ・・・・・・

 硬く閉じていた淫裂が形を変え、逸物の先端を包み込もうとするが、それでも限界はあった。

 「口から息を吐くようにするんだ」

 「はぁぁぁぁ・・・すぅぅぅ・・・はぁぁぁぁ・・・」

 さくらが息を吐いた瞬間、逸物がさくらの胎内へと勢いをつけて入っていく。

 ・・・・・・めりっ・・・めりっ・・・めりめりっ・・・・・・

 そんな音が聞こえてきそうなほど、さくらの淫裂は押し広げられている。実際、桃矢は逸物を通してその音にならない音を感じていた。

 先端が胎内に入った所で一瞬の抵抗があったが、その抵抗も逸物の勢いの前に突破されてしまう。その抵抗を過ぎると、逸物の先端は何かにぶつかって侵入を止めた。

 さくらは歯を食いしばって、声を上げるのを必死に堪えていた。その目尻からは涙も流れている。

 その様子にやっと気付いた桃矢は慌てて逸物を抜こうと腰を引く。しかし、その腰にさくらの両足がしっかりと回されていた。

 「さくら・・・」

 「いいの・・・・・・もう少し・・・もう少しこのままで・・・・・・」

 苦痛に顔を歪めながらさくらは答えた。

 予想以上の締め付けは痛いぐらいだったが、さくらの方がどれだけ痛いのかを思って、桃矢はしばらくそのままでいることにした。

 「お兄ちゃん・・・・・・少しくらいなら動いても大丈夫だよ・・・」

 しばらくして、さくらがそう言った。

 「大丈夫なのか?」

 「うん・・・・・・もう痛くない・・・・・・」

 さくらが嘘を言っているのはすぐにわかった。桃矢はゆっくりと、さくらに負担にならないように腰を引き始める。

 逸物を引き抜く動作に合わせて、さくらの胎内から破瓜の血が流れ出した。桃矢は妹の処女を奪ってしまったことに罪悪感を感じながらも、それ以上にさくらに対する愛情を感じていた。

 「ゆっくり・・・動いてね」

 「あぁ、ゆっくりな」

 SEXと言うにはあまりにもゆっくりな動きで、逸物はさくらの胎内を出入りする。強烈な締め付けでゆっくり動かざるを得ないことも事実だが、それ以上にさくらがこれ以上の痛みを感じないように桃矢が動きをコントロールしていた。

 しかし、その動きが徐々に速さを増し始めた。さくらの胎内から溢れる愛液が、潤滑液として桃矢の逸物にまとわり始めると、さくらも最初よりは痛みを表情に出さなくなってきた。

 ・・・・・・じゅぷっ・・・・・・じゅぷっ・・・・・・じゅぷっ・・・・・・

 湿った音が部屋に響く。

 「・・・あっ・・・・・・うっ・・・うっ・・・・・・あぁっ・・・・・・」

 桃矢が腰を動かすたびに、さくらの口から苦痛混じりの声が漏れる。それでも、桃矢は腰を止めることができなかった。長時間、締め付けられていた逸物は今にも限界を迎えそうだった。

 「さくら・・・・・・大丈夫か・・・・・・」

 「わたしは・・・あっ・・・・・・大・・・大丈夫・・・うっ・・・・・・」

 「俺は・・・もう・・・・・・うぁっ・・・・・・」

 「お・・・お兄ちゃん・・・うっ・・・・・・大丈夫・・・・・・大丈夫だよ・・・うっ・・・・・・」

 「はぁっ・・・・・・はぁっ・・・・・・はぁぁぁぁぁぁぁっ・・・・・・」

 桃矢は一際大きな声を上げるとさくらの胎内にその精を解き放った。

 ・・・・・・どくぅっ・・・どくぅっ・・・どくぅっ・・・どくぅっ・・・・・・

 さくらは自分の中で桃矢の逸物が脈打ち、そのたびに何か熱いものが溜まっていくのを感じた。

 ・・・・・・じゅぽぉ・・・・・・

 逸物を引き抜くと、破瓜の血と混じって薄桃色に染まった精液が泡を立てながら流れ出す。

 「さくら・・・」

 「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・お兄ちゃん・・・」

 桃矢はさくらの身体を抱き上げるとバスルームへと運んでやった。

 

 

 「さくら・・・大丈夫か?」

 「うん・・・少しだけ痛いけど」

 「悪かったな」

 「ううん」

 再び二人で湯船につかっていた。

 「でも・・・」

 「ん?」

 「これで、わたしはお兄ちゃんのものだよね」

 「あぁ・・・そうだな」

 「わたし・・・後悔なんかしてないからね」

 「俺だって・・・・・・でも・・・」

 「どうしたの?」

 (父さんにいつまでも黙ってるわけにはいかないよな)

 「?」

 考え込んでしまった桃矢を不思議そうに、そして幸せそうにさくらは見ていた。

 

 

 その頃、ホテルの屋上・・・・・・

 「エリオル」

 「何です?」

 雪をコントロールする魔法陣の中央でエリオルが振り返る。

 「どういうつもりですか?」

 給水タンクの上からスピネルが尋ねる。その隣には奈久留が腰掛けていた。

 「いいじゃないの、すっぴー。さくらちゃんには色々と迷惑をかけちゃったんだし」

 「そうですね。頑張ったご褒美と言ったところですか」

 「まあ、いいんですけど・・・」

 ひょい、と奈久留がタンクから飛び降りる。

 「それで、コレはどうするの?」

 その手にはクマのぬいぐるみが握られている。

 「もちろん、僕がいただきますよ。小狼君にもご褒美をあげなくちゃいけませんね」

 「イギリスに帰るんじゃなかったんですか?」

 「それよりも・・・・・・さくらさんとそのお兄さんの子供・・・強い魔力を持った子ができそうじゃないですか」

 

 管理者注

  この小説の続きは、料理長様のホームページ

  「料理長の調理室」で見ることができます!

 


解説

 やっと第一歩を踏み出すことができました。最終目的地(sisらぶ様のリクエスト)にはまだまだ長い道のりですが。

 ここで結ばせるかどうかをず〜〜〜〜〜っと悩んでいたんです。それでこんなに長く間が空いてしまったわけですが、「小学生で妊娠&出産」と言うことを考えて、今のうちに初体験をさせておくことにしました。

 

 小狼はあっさり日本を離れて行きました。原作ともアニメともだいぶ違う話になってしまいましたが、しょせん、彼は「桜桃甘」では脇役ですから・・・・・・

 これ以降の小狼がどうなったのかは、Z様よりリクエスト(?)の「小狼とエリオルの甘い生活」にて・・・・・・・・・(ただいま鋭意執筆中)

 


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